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新世紀エヴァンゲリオンの二次創作物、小説「Ihr Identität」を掲載するサイトです。初めての方は「このサイトについて」をご参照下さい。小説をご覧になりたい方はカテゴリーからEpisode#を選んで下さい。この物語はフィクションであり登場する人名、地名、団体名等は特に断りが無い限り全て架空のものです。尚、本ホームページに使用した「新世紀エヴァンゲリオン」の画像は(株)ガイナックスのガイドラインに沿って掲載しています。配布や転載は禁止されています。
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【ジャンガリアンハムスター篇①】

これは管理人がまだ横浜某所に一人ですんでいた頃の話である。当時26歳だった管理人は秋葉原某所のとある技術系会社に勤めていた。社会人3年目、ようやく仕事にも慣れてきたタイミングで、日常生活にもちょっとは目を向けられるほどに余裕が出てきた、そんな時だった。

そう、管理人が“ヤツ”と出会ったのは。
ヤツとは管理人が東京に出てきてはじめての同棲相手の“ハム夫”こと、ジャンガリアンハムスター(♂)である。

なぜ飼い始めたのか、その理由は自分でもいまだによく分からないのだが会社帰りにふらっと寄った近所のペットショップでつい買ってしまったのだ。一言で言えば衝動買いというやつである。

おが屑と短冊切りにした新聞紙が無造作に敷かれたケージ(というか大きな水槽)に、普通のハムスター(とっとこハム太郎みたいなやつ)とゴールデン、そしてジャンガリアンがごちゃ混ぜに入れられていた。内訳は忘れてしまったが色とりどりのハムスターが7,8匹はいたと思う。その日は珍しく定時で上がっていたこともあって、ついショップの店員から声をかけられるまでボーっとケージの中で元気一杯に遊んでいるハムスターたちを眺めていた。

「随分ご執心ですね」

「え?」

正直、この言葉には困惑してしまった。自慢ではないが管理人はこの時までまともにペットや観葉植物の類を飼育したことがなかったからだ。ご執心も何も、ただ悩みも憂いもなく好き勝手をしているハムスター、っていうかネズミたちを目で追っていたに過ぎない。しかし、よく考えればペットショップに置かれているケージの前で2、30分も突っ立ってじいっと見つめていれば購入のきっかけを掴みかねて無駄に長考している“客”にしか傍目には見えないだろう。

ショップの店員は大学生風のお兄ちゃんという感じで、店の名前が入ったエプロンのような前掛けのような、なんとも名状しがたいユニフォームを着ている。茶髪のロンゲを襟足のところで括っており、店が制服を支給していなければペットショップのバイトと言われても俄かには信じられない風貌だ。ただ、偽サーファーというほどに肌は焼けていなかった。

「いまとってもお買い得なんですよね」

畳み掛けるような営業トークである。

「いくらなんですか?」

間髪入れずに質問する管理人。俺はいったい何を口走っているんだ。衝動買いする時はだいたい思考が脊椎反射しているわけだが、この時がまさにそれだ。

「えーっと、いまならどのコでも515円ですね」

「は?ご、ごひゃくじゅうご…!?」

なんという安さだろう。ペットに今まで縁がなかったのだから、当然、管理人が持ち合わせている知識など多寡が知れている。廉価というか相場みたいなものなどまるで分からない。だが、1匹515円(税込み)というのは素人でも「安っ」と思わず口走りそうになるほど圧倒的に安い値段であることは何故かよく分かった。

いつ買うんだ?今でしょう!

「じゃあ一匹下さい」

「あざっす!」

自分でも分かっている。俺みたいなタイプはバイトの控え室とかで後から絶対に「チョロい客」と言われるに違いない。しかし、ほとんどコンビニ弁当と変わらない価格で今日からペットのオーナーである。

「えっとどのコにしますか?」

「そうですね…」

どれでも選り取り515円とはいえ、さすがに飼うとなればそれなりに長い付き合いになると管理人は思っているため、絶対に“カス”は掴むわけにはいかない。思わず水槽の中に顔を突っ込んで物色を開始する。

それにしてもハムスターという生き物は何て自由なんだろう。えさ入れの中のひまわりの種を無心に頬張るヤツもいれば、何が楽しいのか分からないがカラカラと回り続けているヤツもいる。正直言って違いなんてまったく分からない。
どうしようかなあ…と考えているとふと水槽の隅っこでおが屑に包まれて一人で爆睡している一匹がいた。グレーの毛並みが可愛らしいジャンガリアンハムスターだ。寝ていることをいいことに指先でツンツンと突いてみる。全然起きる気配がない。突くだけではなく、今度は背中を指で押してひっくり返してみる。やはり起きない。

「こ、こいつ…もしかして…」

「死んでるわけじゃないですよ?それ」

ちなみに今は残暑の厳しい9月半ばだ。冬眠ということもありえない。

「なんていうか…これだけ触ってるのに起きないっていうのはよっぽどの大物か、すっごい物臭なヤツなのか…」

「間違いなく超大物っすよ!」

将来大物のハムスターというのもあまりしっくりこない。しかし、見たところどこか具合が悪いというわけでもなさそうだ。仮に無気力なハムスターだったとしても触れるというのは可愛くていいじゃない。

「じゃあ、こいつで」

「分かりました!」

と言い残してショップの店員は店の奥に引っ込むと、とっとこハム○郎がプリントされた紙の箱を組み立てながら再び姿を見せた。まるで子供の買い物だ。いや、もしかしたらハムスターの飼育というのはペット飼養における登竜門的な位置付けなのだろうか。ちょっと複雑な気持ちになる。

ハムスターなら2、3匹入りそうな小さな箱を組み立て終わると、店員のお兄ちゃんは適当にケージからおが屑をすくって中に入れ、そして絶賛爆睡中のジャンガリアンをそのまま手際よく箱の中に放り込む。普通はもっと抵抗にあってもよさそうなものだが、多分、管理人のような素人が深く考えないほうがいい。

「はい、じゃあこれで!」

取っ手がついたハム○郎の箱を手渡される。

「あ、ども!515円でしたっけ?」

「はい一匹で515円です。あとケージとか餌とか水のみ器とかありますか?」

「え?なんか備品的なものがいるんですか?」

スーツの内ポケットから財布を取り出そうとしていた管理人の手は店員の言葉に思わずピタッと止まってしまう。

「あ、いや、絶対ってわけじゃないですけど…でも、ハムスターって家の中で放し飼いにするわけにはいかないじゃないですか?」

「どうして?」

「どうしてって…基本、げっ歯類なんでけっこうあちこち齧ったりするし・・・PCのコードとか齧られたらヤバくないですか?」

昔、どこかの地方自治体のデータセンターでサーバーの一つがいきなりダウンして問題になったという話を情報系に就職した同じ大学の友人から聞いたことがあったが、その原因がまさに野ネズミが電源コードを齧って感電したせいだったのだ。管理人は全く別の業界で別の仕事をしているので、これまでネズミのトラブルに巻き込まれた経験はなかったが、一日の大半を留守にしている自宅で漏電事故とかぜんぜんシャレにならない。

「けっこう齧るんですか?」

「ぶっちゃけネズミなんで」

こう言い切られてしまうとすごい説得力だ。ぐうの音も出ない。

「あ、ああ…じゃあウサギとかも」

「昔、ウサギはげっ歯類って言われてましたけど今は違いますよ」

「へええ!」

さすがペットショップのお兄さんだった。人を外見で判断するのはよくない。

「ケージはやっぱあった方がいいですよ。それから水飲み器とかいちいち水を換える必要ないんで楽ですし…」

「ほうほう」

けっきょく管理人は店員に促されるまま515円の他にケージ、えさ、ハムスターカラカラ、水飲み器など一式を購入して万札を失うハメになった。お買い得どころかとんだ大出費である。
 
なぜ人はこんなに苦労してまでペットを飼うのだろう…
 
この自問自答はこの後も更に続くことになる。
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