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新世紀エヴァンゲリオンの二次創作物、小説「Ihr Identität」を掲載するサイトです。初めての方は「このサイトについて」をご参照下さい。小説をご覧になりたい方はカテゴリーからEpisode#を選んで下さい。この物語はフィクションであり登場する人名、地名、団体名等は特に断りが無い限り全て架空のものです。尚、本ホームページに使用した「新世紀エヴァンゲリオン」の画像は(株)ガイナックスのガイドラインに沿って掲載しています。配布や転載は禁止されています。
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第34部 Dies irae 怒りの日(Part-4) / 三人の使者(中編)

(あらすじ)
3体の使徒が第三東京市を目指していた。ミサトはジオフロントに使徒を引き込んで逆撃を加えるという当初の作戦を放棄して初号機、弐号機を射出して野戦装備で各個撃破していく作戦に切り替える。

Gregorian Chant - "Dies Irae"

「近頃、婦女子の専横が目に余ります。かの者達は一様に主なる神の前では信徒として男女の差があるのは誤りであり主もそれを望んではおられない等と極めて不敬な言を操っております。私はかような無知にして蒙昧なる言にこれまで出会った事がございません。EveはAdamより生まれ、後にEveはサタンに誘惑されて主なる神より禁じられていた楽園の中央に立つ「知恵の木」より実を手に取ったのです。そして食した後にそれをAdamに与えたため人間は楽園を追われたのです。EveはAdamより生まれた従なる者でありながら罪を犯してAdamをも巻き添えにした、言ってみれば罪深き我らの中でも女という存在は特に罪深き存在であり、男を惑わす忌むべき存在でございます。これを為政、聖職より遠ざけねばならぬのは当然のことと私は謹んで猊下に言上する次第でございます」 
ある大司教の手紙(※ 架空の文書です)

Eveの誕生AdamとEveの結婚

 

2015年12月7日 ジオフロント 地上:晴れ


遅刻の常習犯、というほどではないが葛城ミサトは極めて朝が弱く、いつもギリギリに本部の敷地に駆け込んで来るのが常だった。

この致命的、しかし、逆にその一点を除けば軍人としてのミサトはほぼ完璧だったし、むしろ抜群の統率力と卓越した実戦指揮にネルフの職員の大半が陶酔している様な雰囲気があった。

但し、ミサトがなぜ朝が弱いのか、それはミサトの指揮官の資質の問題とは全く別の意味で人々の興味は引いていた。全く経緯は詳らかではなかったが、昔(日本政府国防省)のミサトを知る者の多くが口を揃えてベルリン赴任を境にして明らかに人が変わったと後に証言した。国防省に奉職していた時代の勤務態度には全く問題はなかった様である。

本人にも自覚がないレベルで精神的疾患があるのかどうか、その真偽はともかくとしてミサトの30歳第一日目の朝はやはり普段と変わらず慌しく始まろうとしていた。この日がネルフにとって最大の試練になるとはさすがのミサトもこの時は全く想像していなかった。



ミサトが作戦本部棟と呼ばれる一角に向かっている時だった。

視力2.0のミサトはすぐに遠目に見える長身の男が特務機関ネルフの司令長官である碇ゲンドウであることを認めた。

司令だ…

一瞬、ミサトの呼吸が止まった。緊張したからではない。ゲンドウが本部内で随員を連れて歩く事は滅多になかった。昔から一人で行動する事でゲンドウは有名だったがこの日もやはり一人だった。

今日も一人か…まだこの前の傷(第13使徒バルディエル戦でミサトは戦自の外人部隊と交戦して肩を負傷していた)が痛むが…

ゲンドウの足はどうやら第一発令所に向いているようだった。ミサトは立ち止まると踵を鳴らしてゲンドウに向かって敬礼した。ゲンドウはその気配でようやくミサトの存在に気づいた。

ゲンドウとの距離が縮まるにつれてミサトは左胸近くにある愛銃コルトガバメント(
M1911A1の重さを意識し始めていた。

ここからなら…いや、どこからでも100%外さない自信がある。一発で十分だ。確実に脳天を打ち抜ける。それで万事終わりだ…

ゲンドウの足音が間近に迫ってくる。鼓動は少しずつ早くなっていく。ミサトは敬礼しながら口元に僅かに笑みを浮かべた。

埒もない事を…ここで討ち果たしてもあいつは喜ばないわ…勝負は…使徒を全て葬った時だ…それまで預けて置いてやる…碇ゲンドウ…

ミサトの目の前に差し掛かった時にゲンドウもゆっくりとミサトに返礼した。ゲンドウの足が止まる。

気取られたか…

ミサトはゲンドウの顔を見た。サングラスの向こう側から鋭い視線がミサトに向けられているのが見える。

「直りたまえ。葛城上級一佐(国連軍階級は大佐だがネルフでは慣例的に国連軍正規階級を一級上位に扱う)」

「はっ」

ミサトは背筋を伸ばしたまま敬礼していた手を下ろす。

「貴官は朝が早いな」

「ははは。ご冗談を」

本部の地下駐車場に続く通用ゲートを潜ったのが朝の8時半だ。今は確実に9時を過ぎている筈だった。早番、遅番等の事情でもない限り定時は原則午前9時から午後5時である。

この時間に廊下をうろつくのは決して早い出勤とは言えない。

「では…貴官にしては…と修正した方がいいかな?」

「それならば(先ほどのお言葉は)納得です」

何も事情を知らない第三者が聞けば上司と部下の軽快なやり取りの様に思えただろう。しかし、両者の間の奇妙な緊張感が横たわっていた。

ミサトの正面に立っている男は敵(かたき)も同然だった。しかし、別の側面では実質的に扶養家族になっている碇シンジの実父でもあり、様々な事情も作用したとはいえ万障を排してここまでミサトを引き立ててきたのも目の前に立っているこの男であり恩人ともいえた。

ネルフ設立の実質的な共同設立者である冬月、ネルフの頭脳であるリツコ、この二人を別格にすればミサトほどネルフで栄達の速度が早く、抜擢された人間もいなかった。

加持の死は勿論ネルフ内で公に語られる事がない極秘事項だったがゲンドウの方でも完璧な緘口(かんこう)令など期待していないのだろう。早晩、ミサトの耳に入る事は想定の範囲内だったからこそこの両者の奇妙なこの会話になっている、とも言えた。

ゲンドウとミサトは互いに鋭い眼光を放っていた。

恐ろしいほどの偶然が重なってここまで来た…ここで司令を撃ち殺すのは容易い…体格差があるとはいえ真正面から組み合ったとしても絶対にあたしの方が司令よりも長けている…野蛮な殺し方にかけては、ね…だが…いま司令の命を奪う事が果たして正しいかと言えば微妙だ…司令も死ぬがあたしも死ぬだろう…そうなればこのネルフはどうなる…人類は?後に残されたあの子達は…

一発の銃弾が…あるいは一瞬の激情が歴史を変えてきたのも事実…復讐に生きるあたしが後世の評判なんて意識しても仕方がないが…司令を撃つ事でその後世そのものが残らなくなるとすれば…その責任をあたしが負えるのか…

ゲンドウの低い声が響いてきたためミサトの逡巡は忽(たちま)ちかき消されていった。

「高級士官の出勤時間は各自の裁量に委ねられてはいるが…貴官は遅くとも9時には大体いるらしいな」

「はあ…家にいても暇ですしね。それくらいなら…」

「復讐の方法でも思案していた方がマシ…か?」

ミサトは一瞬言葉に詰まるがやがて口元に不敵な笑みを浮かべる。

「さすがは司令…ご明察の通りです。小官はそれを片時も忘れた事はありませんので」

「ふん…貴官からそれを奪ってしまえば何も残らん、というわけか…」

「はい。仰るとおり何も残りません。髪の毛一本、一滴の血に至るまで…小官の全ては復讐で占められております」

「そうか…まあ、せいぜい期待しよう。貴官の仇討、いや活躍にな」

「お任せ下さい。司令のご期待に沿える様に努力致します」

「結構…しかし、貴官が昼までに到着して何よりだ。多分、今日は忙しくなる。じゃあ後ほど…」

「はっ」

ミサトは再びゲンドウの背中に敬礼を送った。見送りながら考えていた。

何だ今のは…今日が忙しくなる、だと?

やがてゲンドウの姿が見えなくなり、ミサトもゆっくりと作戦本部棟に向かって歩き始めた。

まあいい…それにしても司令も意味深だな…ふふふ…

ミサトはゲンドウと同行した南極調査のことを思い出していた。

ゲンドウとミサトの最初の関わりは国連による「セカンドインパクト原因調査団」に同行した事に端を発している。ミサトと同様にセカンドインパクトの発生した南極から生還したジュリア・ホーネットの告発を受けて慌てた国連が急遽正式な調査団の派遣を慌しく決定していた。それがこの調査団の実態だった。

国連は傘下の研究機関の学者を招集して調査団を結成した。その研究機関の中に何故か日本の新技術創造研究所(後の人工進化研究所)も含まれていた。ミサトが父親である葛城ヒデアキが遺した「データ」を松代にあった同研究所に持ち込んだのは丁度その頃だったのである。

所長のゲンドウは日本政府や国連機関との調整に忙しかったが、その時にミサトは碇ユイ、赤木ナオコ、冬月コウゾウと面識を持ったのである(
Ep#05-10)。失声症を患っていたミサトだったが筆談で思いの丈を必死になって綴った。

高校受験を控えた中学3年生の少女が残したメモを碇ユイは少女が帰った後で研究所に戻ってきたゲンドウに見せた。ゲンドウは始め興味なさそうに筆談メモを捲っていたがそれを捨てずにゲンドウに見せたユイの真意を最後の件(くだり)になってようやく理解した。

「そうか…父親の敵討ちを葛城の娘がな…今が封建時代なら美談と讃えられるところだろうが…古風なヒューマニズムというやつだな…」

「一度会ってやって下さらないかしら?」

「俺が?葛城の娘にか?それは同情か何かか?」

「いいえ。ただあの子は貴方がこれからなさろうとされている事に必要だと思います。それにあの子なら…私に万が一の事があってもこの子を守ってくれると思いますし…」

ユイはまだ目立たないお腹に手をそっと置いた。

「滅多な事を言うな!万が一の事なんか起こるわけがない!それに俺が絶対にそんな事はさせん!断じてだ!」

「ごめんなさい…」

「いや…わ、悪かった…ともかく…お前が勧めることに今まで間違いはなかったしな…その娘に会う件は了承しよう」

「本当に?ありがとう!あなた!」

「だが一つ条件がある。俺と一緒に国連の南極調査に同行する事に同意するのが条件だ」

「南極に…ミサトちゃんはまだ子供ですよ?それに親御さんを失った場所にもう一度連れて行くなんて…」

「それは分かっている。だが、このデータを持ってきたと言うことは事の重大性にあの娘も気が付いたという事だ。あいつの存在に気が付いた以上、我々の側に付かないなら口を封じねばならん」

「あなた…」

「そんな顔をするな…ユイ…仮に俺が手を下さずともいずれはゲヒルンの誰かが葛城の娘の命を奪おうとするだろうよ。どの道、あの娘に選択の余地はないんだ。ならばいっそ”本部”側の人間になって俺と冬月先生の調査に協力した方がいい目晦ましになるというものだ。特に今回の調査ではゲオルグのヤツが目を光らせているだろうから丁度よかろう。もっとも…その決心が生半可なものであればすぐに父親の後を追うことになるだろう…こればかりは如何なお前の頼みでもダメだ…」

「分かりました…でも私も一つあなたに忠告しておきます…」

「何だ?」

「あの子を生かすとお決めになったのなら決してご自分から遠ざけない事です。自分の娘も同様に慈(いつく)しんで下さい」

「な、何!?そこまでする必要はないだろう…それに俺にそんな事が…そんな事が出来るわけがない…」

「いいえ。それをなさらなければきっと後悔なさいますわ。あの子は名刀です。それだけ強い力を持っていますわ。でも虎の子も生まれてすぐ虎になれる訳ではありません。周囲にいる者が虎だから虎になれるのです。その意味では…あの子は飢えた狼にもなりますわ…」

「朱に交われば赤くなる、か…」

「ええ。あの子をご自分の手元からお放しになる時はよくよく考えて下さいな。特に…狡猾(こうかつ)な人間をお近づけにはならないことです。でなければその刃はいつか…あなたに向けられるかも知れません…」

「分かった…肝に銘じておこう…それにしても随分とお前はあの娘に惚れ込んだものだな…」

ユイはにっこりと微笑むとそれ以上何も言わなかった。

こうした経緯からミサトは3ヶ月に及ぶ南極近海の調査に同行する事になったのである。失声症の少女は3ヶ月の間、ほとんど調査団の誰とも満足にコミュニケーション出来なかったが不思議とゲンドウだけは物を言わないミサトの心理を的確に捉えていた。調査団の副団長を務めていた冬月コウゾウもそれにはさすがに舌を巻いていた。

調査の実際にミサトが関わる事は勿論無かったが赤潮よりも赤い海になった異様な風景が広がる南極の海で沈まない夕日(調査は2001年10月末から2002年1月末まで行われた。すなわち南半球は夏であり、日は局地近辺では沈まない)を見ていたミサトの隣にゲンドウがやって来た。

「すんだのか?父親へのお別れは…」

ミサトは驚いて無骨な印象を受けるゲンドウを見上げたが、やがて小さく首を横に振った。ゲンドウも船上から不気味な赤い海を見つめていた。

「明日はもうここを離れるぞ…そうなればもう…この海に誰も入れなくなる…本当にこれが最後の別れになるぞ…」

返事の代わりにミサトは俯き、そして暫し目を閉じた。頭上で再びゲンドウの声が響く。

「よく決心して松代まで来たな…ユイから聞いた…葛城博士の娘さんが一人でやって来てデータを届けてくれたとね…」

驚いたミサトはハッとしてゲンドウの顔を見た。ゲンドウは目を細めて遥か彼方に見える夕日を見ていた。

「米軍艦隊に保護され…そして日本政府の中枢に縁者を多く持つお前が…そのどちらでもなく…俺のところに…いや、違うな…お前の嫌っていた父親の勤め先…お前たち家族を不幸にした仕事場に…何故届けに来たのか、と実を言うと俺は今日までずっと考えていた…もしかしたらお前の周囲に居る大人たちがお前によからぬ事を吹聴(ふいちょう)して俺に近づけ、といい含められてここに来たのかとも思っていた…」

ゲンドウは不敵な笑いを浮かべるとミサトを見下ろす。

「だが…それは杞憂(きゆう)だったようだ…お前はもう一度…親父に会いに来ただけだったんだな…」

「…」

「俺は今…何となく分かってるつもりだ…お前は知りたかったんだ…父である葛城ヒデアキという人をな…一体、どんな男だったのか…そしてどんな父親だったのか…ということをな…」

ミサトはゲンドウから目を逸らすと再び視線を赤い海に向けていた。夕日を受けてそれはますます妖しい色を放っていた。

「残念だが…何も違いはしない…立場を完全に使い分けるのは女にしか出来ない芸当だ…男というのは実に単純な生き物でな…何処まで行っても男は父でもまして仕事中毒者でもなく、やはり男でしかないのだ…男以外に立場を持ち得ない実に単純な存在…それが男の本質だ…それを女と同じ様にそれぞれの立場から男を分析しようとするから女は男が理解出来ないのだ…そして…」

ミサトの頭にゲンドウの手が載せられた。

「その逆も然りだ…男には鬩(せめ)ぎ合いがないから女という存在が複雑すぎて理解出来ないし、そもそも立場上の鬩ぎ合いが存在しないから理解する必要性をも感じないのだ…命は残せても知恵の本質は継承できない…土と血に呪われたものの哀しい宿命だな…」

何を話している…俺とした事が…少ししゃべりすぎたか…

「これは冬月から聞いた事なんだが…お前はあのデータを見たと筆談したそうだな…」

ゲンドウはミサトの顔を見る。ミサトは黙って頷いていた。

「お前の父を殺し…南極をこんな状態にして…人類全体を不幸のどん底に突き落としたヤツをお前は殺すと…必ず見つけ出して殺す…そう言ったそうだな…」

ミサトはまた頷いた。

「ふん、15になったばかりの娘の台詞じゃないな…お前に本当にその覚悟があるのか?どうなんだ?口だけなら誰にでも言えるぞ?」

ゲンドウは今までに見たことがないほど鋭い視線を向けてきた。一瞬気圧されたミサトだったがすぐに睨み返すと力強くゆっくりとゲンドウに頷き返していた。

ほう…挑んでくるのか…この俺に…確執していた筈の父親の仇を討つというにはあまりにも過剰ではないのか…何がお前をそこまで駆り立て…そして猛らせるのか…あのデータを見たからといって何かを理解しているとも汲み取っているとも思えんが…見てしまった以上殺すしかないと思ってここに連れてきた俺だ…事故を装って小娘一人殺すのは容易いことだ…だが…この執念と憎悪…これはやはりユイが言うように使い様かもしれん…俺がやろうとしていることと比べれば…この程度のものを飼い慣らせずしてSeeleと拮抗、いや打倒することが出来るだろうか…

「いいだろう…ならばお前に仇を討たせてやろう。お前の敵討ちには一切俺は干渉せん。だが…俺の計画の邪魔をするときは例え女子供であっても容赦はせん。それが承知なら俺について来い」

ミサトはゲンドウを睨み付けていた。大きな瞳に涙をいっぱいに湛えていた。やがて静かに頷いていた。

「話は終わりだ…親父に最後の別れを告げておけ…もうここに人類が来る事はあるまい…」

そういい残すとゲンドウは踵を返して足早にその場を去っていった。

帰国後、ミサトはすぐに高校を受験して県下有数の進学校へ進み並行して失声症の治療を受けた。高校を卒業する頃にはほとんどそれは完治した。そして当然の様に日本の最高学府へと駒を進め、後に国家公務員試験をパスして国防省に入省することになる。

ミサトの学費と治療費は全て箱根湯元に拠点を置く人工進化研究所(同研究所はバレンタイン条約の発効と同時に国連から接収されて国連機関となった)賄われ、セカンドインパクトの後遺症治療と称して16歳以来ずっと定期的に研究所に出入りしていた。

ミサトが加持リョウジとの関わりをもったのは新東京大学の入学式の時だった。同じ学部で同じ学科だった二人は学生番号が前後(同じカ行)だった事もあって接する機会は多く、自然の成り行きとして互いに惹かれ合っていった。

もう一つの偶然は同じ大学の理Ⅰに籍を置いていた赤木リツコとの出会いだった。三人は共に行動するようになりやがて加持も人工進化研究所に関わる様になっていた。

ミサトやリツコからの影響がどの程度加持にあったかは不明である。あるいは加持自身が生来の好奇心の虫を刺激され抑える事が出来なくなったのかもしれない。大学卒業後は3人がそれぞれの道を歩む事になり、ミサトは国防省、加持は日本有数の総合商社(実はそれは建前で内務省に奉職していた)、そしてリツコだけが大学院を経て人工進化研究所(この時は既に国連機関)に勤務したのである。

そしてネルフの発足と同時に三人はこのジオフロントで再会した。それぞれの野望を内に秘めて。

加持とミサトのそれはある意味で分かり易かったがリツコ本人の目的は分かり難かった。少なくともゲンドウに協力している事だけは確かだったが、協力という行動が本人の本心と同一のものという保障は必ずしもない。

利害が一致しなくなれば容易に霧の様に消える場合もあるし、リツコのそれは協力というにはあまりに献身が過ぎていた。

結局…最後に残るのは理屈でもご大層な大儀でもない…絆しかない…あたしがここに来たのは結局復讐のため…女になるためじゃない…あいつが死んで目的がよりハッキリした…だから敵は殺す…殺さねばならない…司令…例えあんたでも…それはあんたもよく分かってる筈だ…問題はその時期…それだけだ…

ミサトが作戦本部に姿を見せると次々と部員達が立ち上がってミサトに敬礼する。昨日、ミサトが酔い潰れたのを知っているだけに部員達の顔には一様に心配そうな表情が浮かんでいた。

そう心配そうな顔をしなさんな…今日は忙しくなるそうだよ…あんた達…

「くっくっく…」

ミサトは敬礼を返しながらこみ上げてくる笑いをかみ殺していた。

事前に運命が分かったとしてもやる事が変わるわけじゃない…人生とは皮肉の塊だ…これが笑わずにいられるか…
 


ネルフの早期警戒衛星が第三東京市(本部)に向かって侵攻中の未確認物体の姿を捉えていた。誰もあえてそれを口にする者はいなかった。使徒であることは疑いようが無かったが職員たちの表情はこれまでになく一段と険しかった。

「サキエル」と公称される第三使徒が6月9日に襲来して以来、これで12回目の使徒の迎撃が始まろうとしていた。

これまで数々の修羅場を潜り抜けてきたミサトですら第14使徒(公称未定)襲来の報を聞いて色を失っていた。ミサトはただの高
級幹部ではない。「雷神」の二つ名を帯びるネルフの精神的支柱とも言える存在だ。百発百中のミョルニル(トールハンマー)を縦横無尽に振るう智勇兼備の神トールに准(なぞら)えられるミサトをして心胆寒からしめたのは第14使徒の襲来パターンがこれまでとはあまりにも異質だったからである。
 
「こいつは…とんだ誕生日プレゼントだね…」
 
昨日が30歳の誕生日だったミサトは珍しく右親指の爪を噛んでいた。何かしていないと不安だったのだ。その勇者の周りにある微妙な空気は波紋の様に瞬く間に第一発令所全体に伝播していき、多くのネルフ職員に極度の緊張を強(し)いていた。

ミサトの視線の先には主モニターがあり、そこには第三東京市を中心にして使徒の進撃予想ルートが広域地図の上に示されていた。ATフィールドの存在を示す赤いマーカーがゆっくりと本部を目指していた。

ほとんど普段と同じ風景だった。唯一、普段と異なるのはほぼ使徒と考えて間違いがないその印が2つ存在しているという点だった。

第二東京市の北200kmの地点をゆっくりと移動している使徒は二足歩行でどこか女性を想像させる丸みを帯びたフォルムだった。一方、かつて東北地方と呼称されていた地域にある郡山に現れた使徒はまるで巨大な山を連想させた。かつて襲来してきたラミエルやレリエルに比較すると半分程度の大きさのごつごつした飛行物体だったがこれも同様にゆっくりと本部に向かっていた。

既にマクダウェル少将(国連軍日本派遣軍司令官)の号令の下で迎撃機と地上部隊が出撃して進路を阻もうとしていたが一方的な殺戮劇が展開されただけだった。両方面共に通常兵力の防衛線は崩壊寸前だった。

モニターを眺めていたミサトはため息を付くと大音声を上げる。

「現時刻を持って第三東京市哨戒圏に第二種警戒態勢を指示する!使徒の予想進攻ルート上の地域全てを対象としてNv90を発令せよ!」

「了解!」

「それからオペレーションルームにEva隊を召集!Evaによる迎撃作戦に移る!」

「了解!」

オペレーター達の返事を聞きながらミサトは第一発令所を後にした。ミサトがバルディエル戦で受けた戦傷はまだ完全には癒えていなかったが腕を吊らなくてもよいところまでは回復していた。時々痛む肩を押さえながら孤独の女司令官はオペレーションルームに入っていった。

三体目の使徒が姿を現したのはまさに国連軍日本派遣軍団の最前線が崩壊した直後だった。常に沈着冷静で今までどんな追い込まれた事態であっても取り乱した事のなかった青葉が血相を変えてオペレーションルームに飛び込んできた。

「さ、三体目の使徒を確認!大阪湾から突然出現してまっすぐこちらに向かってきています!第二大阪市近辺に壊滅的打撃が出ています!も、もはや…都市としての呈を成していません…」

Eva隊を集めて迎撃作戦を与えたミサトはちょうどパイロットたちに訓示していたが、青葉の報告内容以上にその珍しい光景が全員を等しく緊張させた。

「三体目だと?バカな!幾らなんでも誤報じゃないのか?」

さすがのミサトも眉間に深い皺を寄せた。その顔は苦り切っている。

「本当です…さきほどネルフの第二大阪市支所との連絡が途絶しましたが…直前まで送られてきていたデータでは僅か…僅か10分たらずの間に…高エネルギー砲にして5発…5発で大阪はほぼ消失した計算になります…」

「5射でか!!」

ミサトは大きく目を見開いた。人類最後の切り札であるEvaのパイロットやオペレーションルームに詰めていた作戦部員たちからざわめきがもれる。唯一の例外はレイが静かに目を瞑り、アスカが聞こえる様な大きな舌打ちをした事だった。

「そんな…高エネルギー砲たったの5射で…セカンドインパクト後でも人口100万人以上の大都市なのに…」

青葉はシンジの言葉を聞いてゆっくりと首を横に振った。さすが青葉だった。ミサトに報告している間に徐々に動揺が鎮まっていったらしい。

「正確に言うと第二神戸市や新堺市などの周辺地域を含めてなんだ…犠牲者は100万人じゃ収まらない…それに国連軍の第8艦隊(インド洋艦隊)の半個艦隊が補給のために至近にあったが艦載機を載せた空母を含むそれなりの規模の部隊が当然に応戦したが一瞬にして壊滅した…」

「つまり…相手は弾を5発撃ったちゅうても第二大阪だけにぶち込んだわけやない…ちゅうことやな…」

オペレーションルームにトウジの声が響く。その声を聞いてその場にいた全員がハッとする。鈴原トウジが関西出身だったからだ。全員の視線が自分に集まったのに気が付いたトウジは逆に驚いたような顔をしたが頭を掻きはじめた。

「い、いや…そういうつもりで言ったんやない…故郷っちゅうても実感ないしな…まあ…やられた人は気の毒やけど…俺も妹のヤツももうココ(第三東京市)以外に住むとこあらへんから…俺個人としは勝手やけど何が何でもココを守らなアカンな思てな…ははは…」

アスカはトウジの言葉に大きく頷いていた。

このバカの言う通りよ…感傷に浸ってる時間はアタシたちにない…もう選択の余地はないわ…アタシたちは行くしかない…

隊列から一歩前に出たアスカはずかずかとミサトの前に進み出た。ミサトもその気配を察してアスカの方を見る。アスカのみに支給されているミリタリー仕様のプラグスーツだった。腰には小銃が吊ってあり、左胸には特務機関ネルフの一尉を示す階級章が光っている(実際は特務一尉だが急造の階級であるため階級章は一尉と同じ)。

「ミサト、もやは一刻の猶予もないわ。三体目が出てきた以上、さっき説明を受けたアンタのジオフロントに使徒を引き込む“フルボッコ作戦”は使えない。アタシたちこのままだと包囲殲滅を食らってしまう」

ミサトは自分の目の前に立つアスカをジロッと見た。

確かにこのまま手を拱(こまね)いていたらあんたの言う通り使徒にやられるだろう…二体でも戦力差は如何ともし難いのに三体となると状況はもはや絶望的だわ…まともにぶつかればあたし達に勝機はない…

「こんなところでグズグズしている暇はないわ。直ちにシンジとアタシで出る。許可して!」

立て続けにアスカの口から出てくる歯に着せない物言いに思わずその場にいた作戦部員は全員が凍りついていた。日向に変わって作戦部からMAGIの主幹オペレーターになった山城ユカリ三尉に至っては今にも卒倒しそうだった。

特務機関ネルフ発足以来、使徒殲滅作戦の計画立案、そして実行という総指揮をずっと採ってきた独裁的司令官にここまで作戦上の事で言い放った人間はいなかった。それがよく言えば作戦部の秩序であり、悪く言えばミサト個人に対する「盲目的追従」というネルフの軍事組織上の脆弱さでもあった。

かえってミサトの沈黙が周りにいた人間に緊張を強いる。ミサトは寛大な指揮官ではあったがその寛大さはあくまで部下の意見具申が「戦術の範囲内」にある場合に限って発揮された。

「あ、アスカ…早く謝った方が…」

シンジはミサトの「作戦」という不可侵領域に「作戦無視」という形で初めて土足で踏み込んだ、ある意味でアスかよりもこの分野では先駆者だった。

それだけにこの場合のミサトの怒りが尋常ではない事を知っていた。しかも、アスカは自分の名前を(勝手に)使って出撃するから一緒に許可しろと上司に迫っているのだ。示し合わせていなくても同罪フラグがシンジの中に立っていた。

しかし、シンジの予想に反してミサトはアスカを見る目に力を込めると無言のまま大きく頷いた。

「よし!許可してやる!だがその前にあたしの新しい作戦を聞いてからにしろ!一旦下がれ、惣流大尉(ネルフ内では特務一尉)」

「了解(ラジャー)」

アスカはニヤッと笑うとミサトに向かって敬礼した。再びアスカがチルドレンの隊列に戻るのを見届けたミサトは青葉に向き直るとこの日最初の雷鳴を轟かせた。

「青葉君!」

「は、はい!」

「ボヤッとしてないで三体の使徒の進撃速度と三番目の使徒の特長を報告して!」

「り、了解しました!」

青葉は最寄の端末の前に座ると操作しながら全員に聞こえる様に大声を上げ始めた。

「三体目の使徒はまるでライオンの様な姿をしています。飛行はしておらず四足歩行で野生の動物の様に猛烈な勢いでこちらに向かって来ています。進行ルートは旧東海道をそのまま駆け上がって来ると思われます」

「ライオンか…なるほど…まさに”力(Strenght)“だな」

カヲルは独り言の様に呟いた。敏感にその声に反応したミサトがカヲルを見る。

「どういうこと、フィフス?あんたは何か知ってるみたいね」

ミサトは鋭い視線をカヲルに送っていた。アスカに向けた強い視線とは全く異質だった。カヲルは微笑んだまま口を開いた。

「いえ…今までに現れている使徒が“女”と“手”とそしてこの“ライオン”…これはタロットカードでいうところの力(Strenght)の図柄です。タロット(独 Tarock)はただの占いの道具じゃないし、まして適当に作られたものでもない。元はトランプ遊びの発達を受けて誕生したものですが図柄は古代ユダヤのカバラーの思想に拠っている。つまり…その起源はセフィロトの樹(生命の樹)という訳です」

「せ、セフィロトの…樹…」

カヲルの発した言葉は大人たちにとって衝撃的だった。カヲルはわざとおどけて見せた。

「まあ…今そんな話をしても時間の無駄ですね…ともかく…”力“のカードは勇気・寛大・名誉を象徴していて本来はセフィロトの樹(生命の樹)におけるケセドとゲプラのセフィラを結ぶ位置を司る。ここでいう力とは制裁の意味。とある文書における”力を司る使徒ゼルエル“とはその制裁者の襲来を予言した文言。この三体は怒りの日から続く人類の試練の日に清算を促すための三人の使者、セノイ、サンセノイ、セマンゲロフの三天使のことを言っています」

「つまり…四体目は出てこない…そう解釈していいかしら?フィフス」

「ええ。その通りです。葛城上級一佐。だから僕達はこれ以上の敵戦力の襲来を警戒する必要はないということです」

カヲルは目を瞑るとそのまま口を閉ざした。

もっとも主なる方から遣わされたこの三天使の意味をここで言っても仕方が無い…それを説明したからと言ってシンジ君やアスカの戦いが楽になるわけでもない…むしろ問題は…何故、この時期に三人の使者が黒き月を目指す必要があるのか、という事だ…何故だ…

「なるほど…それは非常にありがたい話ね…敵の予備兵力の存在は非常に重要だからね…礼を言うわ、フィフス」

「どうも…」

短いやり取りだったがカヲルは努めて気が付かない振りをしていた。

ミサトはカヲルのシンクロテスト以来、普段はごく平静を装ってはいるが警戒心、いや時に恐ろしいほどの敵意を深奥に芽生えさせていたのである。しかし、それと同じほど自分の考えが邪推であって欲しいと願うミサトの人情の存在にもカヲルは気が付いていた。

僕の存在は…葛城ミサトのそんな気持ちを踏みにじる事になるのだろうか…いずれにしても仇である事は否定しない…あなたが僕の運命の刃と言うなら僕はそれを受けるしかないが…

青葉の声が続く。

「便宜上、現れた順番で使徒に14-a、14-b、14-cとコードをつけますが進行速度から勘案して最後に現れた14-a、すなわちこのライオンみたいな使徒が一番早く第三東京市の絶対防衛圏に殺到します。続いて14-bの女、最後に14-cの…カヲル君の表現を借りれば手という順番になります。この3体の進行速度は全くばらばらで有機的な行動、つまりある一定の作戦行動があるとは全く思われません。14-aと14-bとの間にはおよそ2時間、bとcとの間にもやはり2時間、都合4時間の時間差が存在します。今のところは、ですが…」

「今のところは、ね。やはりそこは使徒のやる事だ。やつらの進攻は人間とは異なり連動してないらしいな。よし!」

ミサトはチルドレンたちを振り返ると一人ひとりの顔を見る。そして最後に視線をアスカで止めた。

「我が隊の作戦は決した!敵は三体三方面から進攻中!これが人間同士の戦いならばこの三体は互いに連絡連携を試みつつ包囲殲滅を画図しているとアスカの様に考えるのが普通だが、幸か不幸か我々のゲストは使徒。一見して協調している様に見えてやはりこの三体の行動には一貫性が見られないばかりか、たまたま目的地が同じだけで一斉攻撃をかける意思も薄いと考えてほぼ間違いない。つまり我々が取るべき作戦は…」

「各個撃破しかないってわけね」

ミサトがニヤッと笑って大きく頷くとアスカはミサトに会釈気味に軽く敬礼する。

「その通り!我々の活路はそれしかない!いかに連中に共同作戦の意思がなくとも目的地を一にする以上、こちらに引き込んで一気に逆撃を加える作戦では相手の戦力集中を待つ様なものだ。使徒三体とEva二体いう総合戦闘能力指数で圧倒的に不利な我が隊にはこれしかない!“フルボッコ作戦”の破棄!日本政府に対して関連発令を直ちに発動してネルフの作戦行動を開始する!総員第1種戦闘配置!Eva初号機、弐号機をD地区に射出!それぞれ野戦(電源)パックを携行してライオン君の鼻面に降りてその出鼻をくじけ!」

「了解!」

「シンジ君の初号機はバズーカを含む重火器武装で距離をとってアスカを援護!アスカの弐号機はスマッシュホークを携行して接近戦を仕掛けろ!短期即決が基本だ!ライオン君を仕留めたら直ちに14-bへ転戦してこれを襲撃!理想としては延山付近を防衛線として想定したいが拘泥はしないわ」

「二機目も仕留めればいいんですね…」

「いやシンジ君。あたしはそこまでは期待しない。第七使徒の時と同様に敵の進撃が停止するほどの深手を与えられればそれでいいと思ってる。戦果に依存はするけど第二戦は敵の戦意を挫くのがまず主目的よ」

「そうなんですか…分かりました…」

「アンタばかぁ?仕留める事に固執してあの岩みたいなヤツに背後を取られたら一巻の終わりじゃん」

アスカが髪を右手で弄びながら言った。

「あ、そ、そうか…」

「アスカの言う通りよ。それにEvaを無視して本部をダイレクトに突いてくる可能性も考えられるわ。だからやっぱり痛打を与えたら本部に戦力を集中して一旦戦線を縮小した方がいいわね。あんた達が出払ったままだったらここ(本部)の対使徒の防衛手段がない。局地的に勝っても僅か一回の負けで一敗地にまみれる可能性もあるわ。私達にとっての一敗は「終わり」だって事は各員忘れない様に」

「了解!!」

「あと…手負いの零号機は出来るだけ使いたくなかったがこうなってしまっては相当予備兵力として期待せざるをない。レイ…悪いけど最悪の場合はあんただけで本部は守ってもらう事になるから…そのつもりでね…」

「はい…葛城上級一佐…」

「よし!アスカとシンジ君は直ちにエントリー!直ちに射出する!ピクシー隊(大型輸送ヘリ)に連絡してピックアップの用意を急がせろ!」

「了解!」

ミサトの号令でオペレーションルームにいた全員が次々と散っていく。

「ほな、カヲル…気楽な予備役同士、ワシら発令所でセンセらの応援でもするとするか…」

トウジが頭の後ろに手を組んで部屋を出ていく。カヲルは自分の隣に人の気配を感じて閉じた目をゆっくりと開けた。いつの間にか隣にレイがやって来ていた。

「じゃあ、僕らも応援に行こうか、リリス」

レイはカヲルの手を握ってきた。

「リリス…」

カヲルは怪訝そうにレイの手を見、レイの顔を見た。表情が優れない。カヲルはハッとした表情をした。

そうか…君の金曜日(2015年12月4日)の残業の中身はそういう事だったのか…シンジ君のお父さんが呼んだんだね?三人の使者を…リリスが逃亡の地に再び足を付ける時、3日の内にアダムの血統はリリスと雌雄を決すべしという怒りの日以来の主との契約がある…つまり…

「僕は再び主との約束を反故にしたというわけか…なるほどな…」

レイは無言のままうなずいた。

「聖槍(ロンギヌスの槍)は既に引き抜かれたか…こいつは…半端じゃないね…」

カヲルはレイの肩に手を回すと静かに促した。

「そんな悲しそうな目で僕を見ないでくれ…まるで君が楽園を飛び出した時のようだ…所詮…僕達は主なる存在には抗えないってことさ…」

カヲルはレイを見る目を細めていた。

リリス…いや…綾波レイ…僕は天に誓おう…君は何があってもこの僕が…渚カヲルが守ってやる…もうこの世に僕らが知るアダムもリリスもいない…そんなものに拘るのはもう意味がない…

やがてオペレーションルームに人影はなくなった。
 


 
Ep#08_(34) 完 / つづく

(改定履歴)
23rd Jun, 2010 / 表現修正
22nd, July, 2010 / 表現修正
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