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新世紀エヴァンゲリオンの二次創作物、小説「Ihr Identität」を掲載するサイトです。初めての方は「このサイトについて」をご参照下さい。小説をご覧になりたい方はカテゴリーからEpisode#を選んで下さい。この物語はフィクションであり登場する人名、地名、団体名等は特に断りが無い限り全て架空のものです。尚、本ホームページに使用した「新世紀エヴァンゲリオン」の画像は(株)ガイナックスのガイドラインに沿って掲載しています。配布や転載は禁止されています。
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第4部 Her impression 心の中の君 / on Shinji side


(あらすじ)

シンクロテストの終了後、レイ、アスカ、シンジは無言のままシミュレーションルームに集まっていた。所在無く隅に座るアスカをシンジは横目で見ていた。
そんなに…落ち込む事ないじゃないか…仕方が無かったんじゃないか…


※ 先行公開(1/23)したストーリです。
(本文)


第一発令所のほど近くに作戦部のシミュレーションルームがあった。

ここでは各種のブリーフィングが行われていた。シンクロテスト後の作戦部と技術部の合同ミーティングも通常はこの場所だった。

シンクロ率の結果発表をミサトかリツコから聞くというのが恒例で、月末はこれに加えて本部待機の「当番」のシフト表が配られる。

シンジたちはL.C.L.を簡単に温水でプラグスーツごと全身をざっと洗い流し、エアシャワーを浴びてこの部屋に来ていた。

普段なら時間に正確なアスカが一番乗りをする筈だが今日はミサトよりも遅くこの部屋にやって来た。そして誰とも目を合わせ様ともせず会議テーブルの一番隅っこに静かに座った。

「アスカちゃん、お疲れ様!」

近くにいた日向が笑顔で話しかける。アスカは空ろな表情をしていたが目だけを日向に向けてぎこちなく笑う。

「マコト…お疲れさま…」

「大丈夫?何か…顔色がすごく悪いけど…」

アスカは弱々しく笑うだけで何も答えようとしない。その様子をシンジは隣に座っているレイの肩越しに見ていた。

何だよアスカ…僕だって好きで伝言頼まれたわけじゃないんだ…仕方が無かったんじゃないか…そんなに…そんなに落ち込むこと無いじゃないか…

アスカだって勝手だよ…何も僕には話してくれないじゃないか…それで分かれっていう方がおかしいんだ…そうだよ!何でも僕のせいにするなよ!

シンジは膝の上でギュッと拳を握り締める。アスカの今朝の態度にも腹を立てていた。今まで気を使っていただけに余計だった。

今日のシンジはアスカに対するこれらの怒りが対抗心に発展し、珍しくシンクロテスト中に闘争心に火がついていた。

普段にはない現象だった。




周囲に流されるままにEvaに乗り、指示に従って淡々とシンジは実験やシンクロテストをこなし、究極には命がけで使徒と戦わされていた。

そこに自分の意思や気持ちというものはなかった。全てに対して受身だった。それはシンジからしてみれば「逃げていない」という理屈になっていた。

だって…きちんと…言われた通りにしてるじゃないか…何処が逃げてるっていうんだよ!そんなの…そんなのおかしいよ!

不意にアスカの甲高い声がシンジの耳で蘇ってくる。

アンタの何処に自分の気持ちがあるって言うのよ!

シンジは思わず首を横に振った。


や、やめろよ!うるさいな!いちいち!

アンタはそうやって逃げてるのよ!

違う!逃げてなんかいない!

逃げてるわ!全てから!だからアンタはいつも一人なのよ!

やめろ!!みんなが僕を捨てるんじゃないか!!僕は!僕は!ちゃんとここに!いるんだ!僕の邪魔をするな!僕をからかうな!僕をバカにするな!


いい加減にしてよ!

シンジはテーブルに両肘を付いて頭を抱える。

そうだよ!僕は悪くない!いつも面倒くさいことが起こるんだ!みんなが面倒なことを僕に押し付けてくるんだ!そうやって僕を利用するだけなんだ!でも…僕は逃げてないじゃないか!ちゃんとやってるじゃないか!

シンジは不意に昔アスカに言われたことを思い出す。更に血圧が上がっていく。





他人のために頑張ってるんだって考えること自体、楽な生き方してるっていうのよ。それじゃ中身の無いロボットと同じね…
 
それは二人がユニゾンの特訓を始めたばかりの頃まで遡る。
 





チルドレンのシフト表は上司であるミサトの職掌だった。当番は基本的に一人だったが技術部の実験や他の業務が入る場合は2人、時に3人全員という日もあった。

しかし、3人の中でレイの出勤が何故か一番多い傾向があり、当番ではなくても夕方に突然出勤してくるレイの姿をアスカやシンジは結構な頻度で見ていた。

その月もレイの出勤日はやはりシンジやアスカよりも多かった。

それはアスカがレイに対して来日当初から対抗心を燃やす理由の一つになっていた。アスカはEvaのパイロットであることに拘りをそれだけ持っていた。

「気に入らないわ!」

「な、何がさ」

「ファーストよ!どうしてアタシ達よりも出勤日が多いわけ?おかしくない?」

「べ、別にいいじゃないか…Evaに乗らなくてもいいし…本部に行くのも面倒だし」

アスカはシンジを睨みつける。

「Was(独語。英語のWhatに相当する言葉)?アンタばかぁ?それじゃ何のためにパイロットやってんのかわかんないじゃないのよ!アンタには誇りってものがないの?それでも男?情けないわね」

シンジはアスカの言葉にカチンと来る。

「そりゃ僕だって!みんなから認められたいし…Evaに乗れば…みんなが敵っていうやつをやっつければ褒めてもらえるんだ…」

アスカは軽蔑したような眼差しをシンジに向けた。

「はぁ?マジでそう思ってるわけ?アンタ!何よそれ?呆れるわね!他人がどう思うかってことで自分を作り上げるのは止めたら?アンタ自身がどう思うかが重要なんじゃない。他人のために頑張ってるんだって考えること自体、楽な生き方してるっていうのよ。それじゃ中身の無いロボットと同じね!」

自分に浴びせられる鋭い言葉にシンジは思わずアスカの方を睨む。

「な、何だよ!そんな言い方って…じゃあ!そういうアスカは何のためにEvaに乗るんだよ!」

アスカはじろっとシンジを見る。その鋭い眼光にシンジは怯む。

「何のためかって?決まってるじゃないの、自分のために!アンタ!甘ったれたこというんじゃないわよ!アタシはね、絶対に誰にも負けられないの!アタシは命を懸けているんだから!自分で自分を褒めてあげれるようにね」

シンジはアスカの火が出る様な勢いにたじろいだ。

「命がけって…そんな…僕らはまだ14歳じゃないか…」

それだけ言うのがやっとだった。自分とはあまりにも違う…その空気にただ驚くしかなかった。

「それが甘えてるっていうのよ!それが何になるのよ?アタシ達まだ子供だからって言えば誰かが助けてくれるって思ってるわけ?現実はそんなに甘くは無いわよ、アンタ。負ければその時点でおしまい。The Endなの。誰かに負けたらアタシ死ぬしかないんだから」

「し、死ぬ!?アスカ、何言ってるんだよ!考えすぎじゃ…」

シンジの頭は混乱していた。思わず泣き出したくなる…そんな心境に近かった。しかし、シンジは必死にそんな衝動に耐えていた。

自分と同じ歳じゃないか…しかも女の子じゃないか…背はちょっと向こうの方が高いけど…僕よりも細い腕で…力もなさそうな…

ていうか…何で僕がこんな事を言われないといけないんだ…

「アタシは本気よ!アタシには帰る場所なんて…いや、今のは無し。とにかく!勝つしかないの!前に進むしかないのよ!だからアンタ!今度、アタシの足を引っ張ったらただじゃ置かないわよ!」

シンジはアスカの鬼気迫る勢いに完全に圧倒されてしまった。沈黙するしかなかった。

アスカは頬が僅かに痩せこけた顔を向けて敵意むき出しの尖った視線をシンジにぶつけて来ていた。

何なんだろう…アスカを…何が…一体…アスカをこんなに駆り立てるんだ…




二人が共同生活を始めたばかりでユニゾン特訓の休憩時間に夕日に照らされながらベランダで交わした会話はあまりにも辛辣な雰囲気だった。





「時間も押してるし…リツコたちがまだ来てないけど始めちゃおっか?日向君、シンジ君たちに新しいセキュリティーカード配ってくれる?」

「了解しました」

ミサトの声でシンジはハッとする。

「はい。新しいカードだよ、シンジ君」

「あ、ありがとうございます」

カードを渡しても日向が自分の側を離れないことに気が付いたシンジは首を傾げる。

「シンジ君、何か忘れてないかい?」

「あ!前のカード!」

シンジが慌ててプラグスーツのポケットから取り出す。

「はい、どうも」

日向は隣のレイの方に歩いていく。シンジは新しいカードを少しの間、弄んでいたがチラッとアスカの方を横目で見た。

アスカは所在無く俯いたまま座っている。視線が何処にあるのか、分からなかった。



僕は好きでEvaに乗ってるわけじゃない…でも…
Evaに乗ればみんなが優しくしてくれるんだ…
みんなが僕を受け入れてくれる時が来るんだ…
そうだよ…だから僕はここにいるんだ…

なのに…

シンジはアスカを見る目に力を込めていた。

 
 



Ep#06_(4) 完 / つづく
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