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新世紀エヴァンゲリオンの二次創作物、小説「Ihr Identität」を掲載するサイトです。初めての方は「このサイトについて」をご参照下さい。小説をご覧になりたい方はカテゴリーからEpisode#を選んで下さい。この物語はフィクションであり登場する人名、地名、団体名等は特に断りが無い限り全て架空のものです。尚、本ホームページに使用した「新世紀エヴァンゲリオン」の画像は(株)ガイナックスのガイドラインに沿って掲載しています。配布や転載は禁止されています。
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第12部 The eve of the night  / 決戦前夜 (Part-5)


(あらすじ)

戦自第二師団が松代市郊外に展開し始める。緊張が一気に高まる中、シンジの失踪を知ったミサトは愕然とする。しかし、余りにもヒトの心情で判断する次元を超えていた。
「仕方がない…諜報課に連絡して…」
一方、ネルフ本部では戦場に駆り立てられて寄り添う二人の少女の姿があった。


Esther & Abi Ofarim - Dona Dona

※ 「ドナドナ」 / 作詞:シェルドン・セクンダ、作曲:ショロム・セクンダ
1940年にショロム・セクンダの作曲で、アーロン・ゼイトリンがイーディリッシュ語(ユダヤ系ドイツ語)で作った歌。家族がユダヤの強制収容所に送られていく悲しみを詩に込められているという説がある。「ドナ」はユダヤ語の神「アドナイ」を短くしてナチス当局に分からない様に「主よ主よ」と嘆いているとも言われるが真相は定かではない
。だが少なくとも牛などの家畜に対して「ドナ ドナ」という様な掛け声はドイツではまず使用しない。時々、「ドナドナ」をドイツ民謡として紹介するサイトや書籍を見かけるがドイツ人からみると割とトラウマティックである、ということを付け加えておく。

(本文)


加持はプラットフォームの外れにある人気のない公衆トイレに入ると渋るシンジに半ば強引にかつらを被せる。

「いいねえ!とってもよく似合うよ、シンジ君。本物の女の子みたいだな。これだったらノーメークで十分だな」

オカッパではなくシャギの入ったスタイリッシュなかつらなのは加持の個人的な趣味だろうか。

「あの…加持さん…ちょっと…これは…」

色白で体の線が細いシンジはほとんどかつらだけで中学生の女の子に見えた。

「ええっと…次はこれだな…」

加持は手際よく自分の鞄から次々とパットの入ったスポーツブラや女物の下着、そしてタンクトップ、アクセサリーを取り出す。ジロッとシンジは加持に疑いの視線を向ける。

「加持さん…」

「なんだい?」

「これって…いつも持ち歩いてるんですか…?」

「そうだよ?どうしてだい?」

「いえ…何でもないです…」

シンジは加持に促されてランニングシャツを脱ぐとスポーツブラを着け、タンクトップを着た。

「ボトムはそのまま(ジーンズ)でいいだろう…だがそのごついスニーカーはこれに履き替えてもらおうかな」

加持はシンジの前に合皮のミュールを置くと次々にシンジの脱いだ服を綺麗に畳んでビニール袋に入れた。

「じゃあ北口のタクシー乗り場で落ち合おう」

「え?加持さんは変装しないんですか?」

「うん。俺はこのまま外に出るから」

「そ、そんな!な、何で僕だけこんな格好なんですか?」

「俺は鉄道職員のセキュリティーカードのコピーを持ってるからこのまま職員の出入り口から外に出れるけどシンジ君はムリだろ?」

「…」

「じゃあ俺の鞄はよろしく頼んだよ、シン子ちゃん。ははは!」

そう言い残すと加持は手ぶらでトイレを後にした。

「何か…すっごい納得行かない…」

シン子はモジモジしながら警察がたむろしている中央改札口に向かって歩いていった。

 




車内のデジタル時計の表示を見るとちょうど17時半だった。

「おいおい…何よ、この渋滞…超ウザいんだけど…」

阿部
(新東京日日新聞社政治部記者)は長野ICの手前5kmの地点で渋滞に巻き込まれていた。第二東京市(松本)から松代は車ですぐのところにあるが二人は新横田基地を経由して来た為この時間になっていた。

「ラジオつけてみましょうか?」

「ああ…」

カメラマンの
はカーラジオのスイッチを入れて荒々しくチューニングし始めた。雑音と共に突然道路情報が大音量と共に飛び込んできた。

「おい!よっちゃん!うるせーよ!ボリューム落せよ!」

「す、すんません」

ラジオは16時を持って第89発令が出されて第二種警戒態勢が松代市内に敷かれた事を告げていた。

「おい…80番台のコードが出て第二種警戒態勢…まさか…使徒が松代に来てるのか?」

「そんなわけないですよ。もし使徒が来てるなら完全にアウトでしょ?松代に入るには警察の検問をクリアすればOKだって言ってるじゃないですか。それに使徒だったら第三東京市にとりあえず向かうでしょ?松代なわけないっすよ」

「確かにそうだよな…でも…第89発令って何だろうな…」

阿部は鞄からボロボロになった分厚い冊子を取り出すと熱心に調べ始めた。冊子のタイトルは「特務機関ネルフ超法規的措置命令コード総覧(2013年版)」とあった。

このコード総覧は改定の度にネルフと日本政府が調整して官公庁向けに発行するものだった。政治部の記者がこの冊子を持ち歩くのは半ば常識化していた。

「あったあった…えーとNv89は…まじかよ…こりゃやべえな…」

阿部の顔がみるみる険しくなっていく。

「何だったんすか?阿部さん」

「第89発令は軍事作戦実施に伴う指定区域内における制限措置の一種。ネルフ関係者以外の強制退去及び排他行動を可能にし、警戒レベルに伴い必要と判断される実力行使を実施する事が出来る、だとよ」

「あの…すっげー何言ってるか分からないんですけど…」

「つまりだな…単に実験とかで警備強化って事じゃなくてよ、今回の参号機受け入れ後の各種作業は軍事行動として扱うってのが第一」

「はあ?たかが受け入れたブツの起動ってだけで何で軍事行動なんですか?」

「だからおかしいんじゃねえかよ…次にネルフが指定した制限区域に警察はおろか国連軍ですら排除されるってのが89だ…しかも…これは警戒レベルに伴って必要な実力行使が許可されるらしいぜ。かなり物騒な話だな…こりゃ」

「ど、どうなるんすか?」

「通常は第二種警戒(態勢)だと警告、それでも言う事を聞かなかったら公務執行妨害が適応される。ところがどっこい、89が出ると警告を出すのは同じだが場合によっては射殺可能ってわけだ」

「しゃ、射殺ぅ!?うそでしょ?まるで戦争じゃないですか!」

「ああ…文字通り戦争だ…奴さんたち…マジだぜ…」

「まさか…俺らのせいですかね…」

「だとしたら記者冥利尽きるってもんだが…そんなんじゃねえ…ぜってー裏がある…」

二人は先日の第12使徒戦で特ダネをモノにしていたがその代償として公務執行妨害で警察に逮捕され老人を誑かしたケチな詐欺師と共に2日ほど留置所で過ごしていた。この時は同じ80番台のコードでも実力行使を伴わない82発令だったことが幸いしていた。

けたたましいクラクションの音があちこちで鳴り響く中、阿部は背筋に寒いものを感じていた。

何なんだこりゃ…ただの参号機受け入れってだけじゃないぜ…


ごおおおおおおおお


阿部の思考をかき消すように緊急車両用に空けてある高速道路の側道を軍用トラックと装甲車、そして第4世代の百式戦車(90式戦車 の後継機)が轟音と共に次々と通り抜けていく。

「ば、バカな…最新鋭の百式戦車じゃねえか!!」

「ホントだ!!すげー!超かっけー!!パレードくらいでしか見れねえのに!!ラッキー!!」

ミリタリーおたくの淀川は首から下げていたデジタル一眼レフで横を通り抜ける百式戦車を次々にシャッターに収める。

「い、一体…どうなってんだ…戦自の第二師団が動いてるってことか…なんで戦自が…国連軍がネルフといるじゃねーか…」

今まで戦自がネルフコードの発令で動いた事はただの一度としてない…明確に旧自(国連軍日本支部)と縄張りを分けてきた筈じゃねえか…どうして今日に限ってこんなに…

阿部は咄嗟に淀川の腕を掴む。

「おい!よっちゃん!かまわねえ!!側道通って一気に渋滞を駆け抜けるぞ!」

「ええ!!うそでしょ?ぶっ殺されますよ!!」

「戦争だぜ!!これは間違いなく戦争が始まるぜ!!いいか!!これは俺たちの戦争でもあるんだ!!」

東京日日新聞とロゴの入った白いワゴン車はホイルスピンさせながら側道を走り始めた。阿部は高揚する自分を感じていた。

新横田で木偶の坊みたいに張ってるやつらがバカ見てえだ!!ガセどころか本命はこっちじゃねえかよ!!見届けてやろうじゃないの!!歴史の瞬間ってやつをよ!!所詮は待っていたって運命の扉は開かねえ…テメーで手繰り寄せるしかないんだ!!
 





国防省ビルの幕僚会議。長門の正面に座っていた海江田統合作戦本部長が語気を強めて問い詰めて来た。

「長門君!今し方、ネルフの第二試験場から退避してきた国連軍から連絡を受けたんだが、戦自の第二師団の2個戦車大隊が茶臼山と屋代に展開しているらしいじゃないか!国連軍(日米混成)の半個師団が松代に存在しているというのに一体何のつもりだね!」

長門は平然と答える。

「テロリストがネルフの第二試験場を狙うという情報がある以上、首都防衛を主務とする第二師団としてこれを座視するわけには行きません。最悪の事態を想定して行動するのは当然です。ちなみに申し上げると上田と安曇野にも既に部隊を配置して筑北防衛線を設定しました」

「し、しかし!君ね!単なるEvaの起動試験だろ?確かにテロリストが狙っているというのは不安要素だが確定的ではあるまい。まだ警察組織で対応すべき次元だろ?戦自の介入は少しオーバーじゃないかね?それに部隊出動の閣議決定だって…」

「私が許可したんだ」

海江田の発言を遮るように山本国防相が重々しく口を開いていた。

「え…山本閣下自らですか?」

「いや…これは能登さんから総理の指示という事で伺っている」

海江田が今にも卒倒しそうなほど驚きの表情を見せる。

「そ、総理が?戦自の投入をご決断されたのですか?!」

「そうだ…」

長門がほくそ笑む。

これでいい…全員の目が第二師団の動きに目を取られている隙にBad CatとGood Dogで第二試験場を強襲する。人質をとればノコノコ現れた弐号機からパイロットを投降させることも出来る。その為にはまず実験場を制圧せねばならん…そして次の一手…これには世間が驚愕するだろう…生駒さん…後は頼みましたよ…
 





「何ですって!見失ったってどういうことよ!」

ネルフ所属の大型輸送ヘリ内でミサトは保安部のSG部員たちからの急報に接していた。

「も、申し訳ありません…サードチルドレンの位置をモニターしていたのですが自室のベッドから動かないものですから…その…てっきり昼寝でもしているのかと思って…」

レシーバーの向こう側でSG部員たちが意気消沈している様子が伝わってくる。

チルドレンに緊急呼集をかけたミサトだったがアスカとレイの身柄は確保出来たものの、いつまで経ってもシンジの所在が掴めず不審に思って調べさせたところシンジの携帯がマットレスの下から見つかってあとはもぬけの殻だった。

「くそ!こんな時に行方知れずになるとは!」

第三東京市と第二東京市の間(諏訪湖湖畔)に零号機と弐号機を配して一先ず防衛線を張って日本政府へのけん制と本部強襲の戦意を削ぐつもりだったミサトは思わず右手親指の爪を噛む。

早くもミサトの防衛作戦に綻びが生じ始めていた。

Evaの頭数が足りない…本部から距離を空けると間隙を突かれる可能性が出てくる…仕方がない…諏訪は放棄して甲府を抑えるか…もし…シンジ君の失踪が敵の作戦に関係があるなら…かなり厄介だわ…

「あの…葛城課長」

「何よ!!」

「恐らくサードチルドレンは自分の意思で脱出を試みたものと思います」

「え?ど、どうして?」

「先ほど保安部からサードの携帯動作の履歴をMAGIで追ったところ、14時半頃にわざわざ電源を切ったことが分かっています。葛城課長のご自宅の状況を確認しましたがまるで掃除をしたばかりの様にきれいで争ったような跡はありませんでした。これらの状況を踏まえて自分で電源を落してマットレスの奥に隠したものと思われます」

「そ、そうなんだ…」

汚したい放題汚して放置していた自分のマンションにSG部員達が入るとは想像していなかったミサトは「部屋がきれい」という言葉で内心ホッとしていた。

シンちゃんが…片づけてくれたんだ…だったら感情が暴発して家出したってわけじゃなさそうね…何か意図があるのかしら…

ミサトの思考はすぐに日向の声にかき消される。

「戦自の百式戦車大隊が茶臼山と屋代地区に展開。その他に上田と安曇野にも部隊が展開した事を確認。更に対地攻撃ヘリが甲府上空から浅間山方面に移動中」

「おいでなすったわね…第4部隊に対戦車装備を指示。実験場の西に展開させろ。それから弐号機をBからFへ兵装換載」

「え、F兵装ですか?ですが、あれはまだ十分にテストが…」

ヘリの操縦席の後方にある通信士デスクに座っていた日向は驚いてミサトの方に向き直った。

「見た目がごっつい方が示威行動には丁度いいわ。張りぼてで構わない。急いで!」

「そういうことですか、了解!」

日向の隣にいた通信士が声を張り上げる。

「諏訪湖付近に戦自地上部隊が集結中。部隊規模は現在確認中ですが半個師団程度の規模かと思われます。自走砲とロケット砲を確認しました」

「早い…全部隊に作戦変更を指示!Eva零号機のP301(諏訪湖)投入を中止。バズーカによる長距離兵装の上、レイのエントリーが完了次第、20番ゲートから緊急射出する。第一戦闘速度でポイントG456(甲府市の南に指定した作戦地域)に進出。ポイント確保後、直ちに戦闘体制を取らせる」

「し、しかし!G456にはコードを発令していませんが?」

「レイの到着と同時に89発令をかければ問題ない!」

「り、了解…」

「それから…仕方がないけど諜報課に緊急連絡。サードの所在を突き止めさせて」

日向の顔が一瞬曇る。

「仕方がないですね…了解しました…」

「シンジ君…どうして…こんな時ってのもあるけど…」

ミサトは腕を組むと小さな窓から眼下に広がる街の明かりを見る。

もうあたし達には6日しかないのよ…あなたはどこに行くつもり…

ミサト達の忙しさを尻目に傍らでリツコたち技術部は赤色灯の下、ラップトップを叩いていた。
 






諜報課員二人に両側を抱えられてパイロット更衣室に連れて来られたアスカは扉が開くと同時に床に放り投げられる様にして部屋に入って来た。

プラグスーツをガーメントストッカーから取り出していたレイは驚いて扉の方を見る。タンクトップとショートパンツを穿いたアスカが床に倒れこんでいるのが見える。

「アスカ…」

レイは思わずプラグスーツをその場に放り出すとアスカの元に駆け寄って抱え起こす。アスカはぐったりとしていた。

「大丈夫?しっかりして…」

「うう…申し訳ありません…申し訳ありません…」

目を閉じたままうわ言の様にレイの腕の中でしきりにアスカは呟いている。アスカの表情を見るレイの眉間に皺が深く刻まれる。

「アスカ…あなた…心を犯されているの…?酷い…」

レイが介抱していると二人の少女を見下ろす様に諜報課員が部屋に入ってきてレイとアスカの傍らに立った。

「くそ…忌々しい…さっさと着替えろ!セカンド!お前は…全くとんだガラクタだな…」

吐き捨てるような言葉にレイはキッと諜報課員たちに視線を送る。

「あなた達には…人の心がないの…?」

「人の心?ははは。ただの人形のお前に言われたくないな、ファースト」

「全くだ」

侮蔑の混ざった嘲笑をレイに叩きつける。

「わたしは…人形じゃ…ないわ…セカンドだって…自分の尊厳のために…しっかりと真っ直ぐに生きているわ…どんなに踏みつけられても…どんな酷い扱いを受けても…自分を裏切るようなことはしていない…」

「こ、こいつ…いつからそんな生意気を…お前たちは黙って言われた事だけをすればいいんだ!分かったか!」

バシ

レイは近くにいた諜報課員から右の頬を平手打ちされる。それに怯むことなくレイは諜報課員たちを更に睨みつける。

「この宇宙で最も儚く…か弱い…存在…リリン…それ故にあなた達には知恵が与えられた…知恵は心を育み、やがて科学を生み出した…科学は心を超えず…心は希望を与え…群れの哀れを癒す…」

「お、お前…何を言っているんだ…」

レイの視線と言葉にレイを殴った諜報課員は怯む。

「ヒトの唯一の遺産…希望…希望こそが魂の還る道標…心を忘れたものに希望はなく…希望なきリリンに安穏はない…永遠に彷徨える愚かなるもの…あなた達に還る場所はない…」

「こ、こいつ!」

レイはいきなり立ち上がると諜報課員二人の前に立ちはだかった。レイの赤い瞳が燃えている。その瞳に吸い込まれそうになる錯覚を覚えた諜報課員たちは恐怖を感じて後ずさる。

「き、気味が悪い…」

「く、くそ!舐めてるのか!」

ボゴッ

鈍い音が部屋に響く。レイの近くにいた一人が離れざまにレイの顔を力いっぱい拳で殴りつけていた。

「ぐ…!」

レイはたまらず床に両手を付いて突っ伏した。諜報課員の一人がズカズカとレイの前まで来るといきなり髪をつかんで強引に顔を上げさせる。

「うっ…」

「く、下らない事をいう暇があるならさっさと出撃の用意をしろ!お前たちはただ目の前に現れる敵を倒しさえすればいいんだ!分かったか!」

「減らず口を叩きやがって!まったく…」

捨て台詞を吐いて二人は部屋を出て行った。束の間の静寂が訪れて二人の少女を包みこむ。

「アスカ…」

レイは再びアスカを抱え起こす。アスカがようやく目を覚ます。

「ア…アンタ…」

「私が分かる?アスカ…」

アスカはゆっくりと頷いた。視線はまだ虚ろだった。

「よかったわ…」

「どうしたの…?その顔…まさか…アイツ等に殴られたの?」

「大丈夫…大したこと…ないわ…あなたのせいじゃ…ない…」

アスカは眉間にしわを寄せるとレイから顔を背けた。

「ゴメン…泣いてあげたいけど…アタシ…駄目なんだ…」

「アスカ…」

「アタシには…何もない…Evaに乗ることしか…それだけが唯一の価値…アイツ等が言ったことは本当よ…アタシはポンコツなの…」

レイは制服のポケットから拉げたロケットを取り出すとアスカの掌に載せてそっと握らせた。

「こ、これは…」

「そう…これはあなたの心…あなたの心はまだここにある…例え…何もかも奪われても…これがきっと…あなたを導いてくれる…」

「アンタ…どうして…これを…」

「分からない…ただ…これがわたしに…心を与えてくれたのかも…だから…きっと…あなたにも心を与えてくれるわ…」

「レイ…」

本部内に鳴り響く警報と放送は暇も与えず少女たちを戦場に駆り立てていた。二人は何も言わず互いを抱きしめ合っていた。




Ep#07_(12) 完 / つづく




(改定履歴)
20th April, 2009 / 誤字及び表現修正
23rd April, 2009 / ミス修正
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