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新世紀エヴァンゲリオンの二次創作物、小説「Ihr Identität」を掲載するサイトです。初めての方は「このサイトについて」をご参照下さい。小説をご覧になりたい方はカテゴリーからEpisode#を選んで下さい。この物語はフィクションであり登場する人名、地名、団体名等は特に断りが無い限り全て架空のものです。尚、本ホームページに使用した「新世紀エヴァンゲリオン」の画像は(株)ガイナックスのガイドラインに沿って掲載しています。配布や転載は禁止されています。
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第18部 hail of bullets in the rain 鉄の雨、赤い涙 (Part-3)


(あらすじ)

地上では戦自の外人部隊とミサトたちとの死闘が繰り広げられていた。本部テントから日向を抱えて外に出たミサトは飛び交う銃弾の中を走り、ネルフ防衛線の兵士を叱咤激励しながら退却戦を展開する。国連軍の戦車が次々と携帯擲弾の餌食になり、降り注ぐ迫撃砲の前に次々と味方は倒れていく。松代との連絡が途絶えるとゲンドウは直接指揮を執る。混沌とする戦局を制するのは誰か…


※ 紙片が長くなったためミサトの突撃行、参号機の起動、リツコのピンチは次回に回しました。悪しからずご了承の程。。。

AMAZING GRACE - Hayley Westenra
(本文)


新首都高の諏訪ICを封鎖していた日本警察の制止を無視してレオパルドXX一個中隊は次々と松代方面の高速道路に入って行った。

諏訪湖に張り出す様に新横田基地のメイン滑走路は延びている。飛行場の照明が諏訪湖の水面に写っているのがシュワルツェンベック中将にも見えていた。

諏訪湖を挟んで対岸に戦自の203mm自走榴弾砲、他連装ロケットシステム(MLRS)、装甲兵員輸送車などが展開しているという情報提供をマクダウェル少将から受けていた。支援部隊中心の編成だった。

「M30(誘導型MLRS精密誘導ロケット、射程60~100km。すなわち甲府も松代も射程内)か…射程十分だな…甲府か松代か…何処を狙っているのやら…」

唯一、シュワルツェンベックがマクダウェルの情報の中で反応したのは零号機が甲府に進出していると聞いた時だった。

松代…第二東京市…諏訪…そして第三東京市…このロケーションから考えて甲府を押さえても戦略的に薬にも毒にもならん…ミサト…お前はなぜ諏訪(新横田)を確保しなかったのだ…ロキに先を越されるとはな…この布陣…らしくないではないか…

「急げ!(145mm砲の)射程に入り次第、斉射で一気に粉砕する!」

轟音を上げながらフェンリルは最大戦速で北上していた。

あるいは…甲府までしか進めない理由があったのか…いずれにしてもお前には五体満足で戦えない事情があるらしいな…

シュワルツェンベックは不敵な笑いを浮かべていた。
 






零号機の頭上に浅間山から甲府に進出してきた戦自のAH-80が12機展開し、度々、挑発する様に近くを掠めて行く。

AH-80があからさまにロケット砲のロックオンをかけて来ることもしばしばだったがレイはそれに全く動じることなく泰然自若としていた。

エネルギーパックからネルフ工作車のケーブル電源に切り替えていたが、通信自体は弐号機と同様に無線に頼らざるを得なかったため他所との交信は難を極めていた。

全く機能しない無線機に第一補給隊の隊員達は悪態を付いていた。

「くそ!松代の状況も本部からの指示も分からない!このオンボロめ!どうなってるんだ!」

「仕方がない!携帯で本部に確認しろ!」

S暗号の携帯電話は問題なく機能するため電話にかじりつくという体たらくだった。

如何に難攻不落を誇るMAGIのS暗号が解読される恐れがなくても、携帯の使用による発信源の検出自体は防げないため敵に正確な位置情報を提供するも同然だった。誘導ミサイルを食らえば文字通り全滅という利敵行為の何物でもない。

対する相手が使徒ではなくなった途端にネルフの軍事装備の脆弱性が改めて浮き彫りになっていた。

「不安だ…何が起こってるんだ…ちくしょう…」

隊員は思わず天を仰いでいた。

レイは閉じていた目を静かに開ける。満天の星が輝く夜空がそこにあった。

「離れ離れになっても気高く輝き続ける貴方たち…貴方たちに孤独はないのね…でも…分かち合う喜びもない…リリンは孤高を求める…心とは裏腹に…その実…自分のことすら自分では分からない…なのになぜ…」

北の方角から突然閃光が走る。そして雷の様な地を這う音と共にじわじわと北の空が朱に染まりつつあった。

「あなた達は…傷つけ合うの…」

レイは静かに北の空を凝視していた。
 







ミサトは5人目を撃ち倒すと青白い顔をしてぐったりしている日向を背負って穴だらけになった機材とテーブルの影から飛び出した。

「日向君…あんた重いわね…その歳でこれじゃ…スッさんみたいになるわよ…」
女とは思えない膂力で日向を担いだまま床に倒れているオペレーターの男女の首筋に手を当てる。

「ごめんね…また…ここに帰ってくるから…」

ミサトは兵士が残した自動小銃を手に取るとテントの外に出る。迫撃砲が次から次に南側斜面から実験場に打ち込まれ、辺りをまるで雨しぶきの様に銃弾が飛び交っていた。

「くそ…侵攻部隊以外に後方支援が…こんな短期間にこれだけの兵員を動員してくるとは…」

野営テントの後方にある研究棟には既にあちこちから火の手が上がっているのが見える。研究棟には職員研修センターとして宿泊施設も完備していた。その一室にフォースチルドレンは起動試験のために寄宿していた。

「駄目だ…研究棟は完全に包囲されていると見た方がいい…これまでか…」

ヒューン

右頬を銃弾が掠める。乾いた音にミサトの思考はかき消された。

「くそ…」

ミサトは正面の塹壕群めがけて一気に駆け出した。ミサトの存在に気が付いたのか、足元にいくつも砂煙が上がる。

咄嗟に近くを走っていた国連軍の戦車の物陰に入る。

「はあ!はあ!はあ!くそ…ここまで踏み込まれてしまったら戦車は無力だ…いや…逆に…」


シュルルルルル…


南側に広がる森林から白煙を上げながら対戦車ロケットが向かってくる音が聞こえて来た。

「やっべー!やっぱきやがった!少しは休ませろおおお!!!」

ミサトは叫びながら戦車から離れる。


ぼごおおおおん!


戦車から火の手が上がり辺り構わず鉄の破片を撒き散らす。間一髪のところでミサトは至近の塹壕の中に日向を担いだまま飛び込んでいた。

「部長(ミサトの現在の職位は課長だが作戦部では依然この呼称が使われていた)!」

「みんな!無事か?」

「残念ながらフロント(最前戦)は…完全にアウトです…」

「そうか…まさか…日本でこんな目に遭うとはね…さすがにここまで露骨に攻撃してくるとは正直考えていなかったよ…」

「日向は?こいつ…まだ生きてるんですか?」

「ああ、残念ながらね。気を失ってるけどさ」

「ま、まさか…ベースキャンプからここまでコイツを背負ってここまで来たんですか?」

「そうだよ?置いとく訳にいかないじゃん」

ミサトは双眼鏡で攻撃を仕掛けてくる前方の様子を見ながら平然と答える。

「マジかよ…」

誰かが呟いていた。

日向を担いで50メートル先の塹壕に飛び込んだにも拘らずかすり傷すら負わなかったのは殆ど奇跡と言ってよかった。

「国連軍の戦車隊が前面の林に向かって砲撃をかけていますが敵が何処に潜んでいるかもハッキリせず殆どこちら側が一方的に的になっています」

「そのようね…既に拠点征圧部隊が侵入しているって言うのに容赦ないこの攻撃…やつら…あたし達を皆殺しにするつもりだよ」

「皆殺し…」

「白旗揚げて通じるような連中じゃねえ…しかも…こいつらテロ戦の訓練を受けてやがる…そこらの野良犬じゃない…」


ばごおおおおん


「くそ!部長!最後の戦車がやられました!」

「これ以上ここ(塹壕)に篭っていても意味がない!なぶり殺しに遭うだけだ!全員退避!」

ミサトたちの頭上を銃弾が飛び交っていた。

「技術部の連中はどうします?!」

「スッさんに既に退避の指示を出してる!正門の国連軍のところまで一気に駆け抜けるぞ!」

「了解!!」

「1!2!3!いまだ!!」

ミサトが先頭を切って塹壕から飛び出す。

その後に続いて塹壕にいた作戦部員達が駆け出した。あちこちから悲鳴、うめき声が上がる。

「怯むな!走れ!走れ!走れ!倒れたヤツの分まで走れええ!」


ドドーン


ミサトたちのすぐ近くで迫撃砲が炸裂する。コンクリートや土塊が飛礫(つぶて)の様に降り注いでくる。

「ぶ、部長!」

「バカヤロー!!振り返るな!走れ!とにかく生き延びろ!」

ミサトは叫びながら小銃を乱射する。腕に覚えのある部員がミサトと並んで射撃を始めた。

「部長!自分は右を!」

「よし!援護する!その間にこいつを!」

「分かりました!!」

日向は半ば引きずられる様な状態で運ばれていった。突然その脇を通って国連軍の歩兵部隊がミサトに合流してきた。

「カーネル!ご無事で!」

屈強な体の持ち主であるギルバート軍曹がAK-47を連射するミサトの隣に立つ。

「挨拶は後だ!軍曹!右前方の林の火力が強いぞ!右を狙え!ついでにナパームでもぶち込め!」

「へへへ!公式には空軍も所持していない事になってますんでね!こいつ(バズーカ)で勘弁して下さい」

「何でもいい!吹き飛ばせ!その間に連中(ネルフ職員)を松代に退避させる!」

「了解!」

国連軍の戦車隊もさすがに退却を始め、入れ替わる様に歩兵中隊が救援に敷地内に入って来ていた。

あちこちでM1戦車がもうもうと黒煙を上げながら白色に近い火柱を上げていた。
 







第二実験場の火柱は上空からも見えていた。

「ピクシー1からEva02へ」

「こちらEva02。どうぞ」

赤外線カメラの測定したデータを解析にかけていたアスカは手を休めることなく答える。弐号機と空輸ヘリの間はアンビリカルケーブルで繋がっているため妨害される事なくクリアな交信が出来ていた。

「後3分で目標(第二実験場内へリポート)に到着する。着陸準備を願う」

ヘリパイロットの声を聞いてアスカは一瞬、怪訝な表情をする。

なに悠長な事を言ってるの…

「こちらEva02。ピクシー1に要請する。高度1000を保って前方の高遠を右に旋回して山の尾根の前面に出ろ。Evaによる攻撃の後、直ちに切り離しを行い、強制揚陸をかける。ヘリポートは使用しない。以上」

「し、しかし…予定では…」

「ピクシー1…既に戦闘が始まっている。高度を落せば携帯地対空ロケットの餌食になる。アタシは問題ないが貴殿の安全の保証は出来ない。それに敵の歩兵部隊を焙り出さなければわが方の犠牲が増えるだけだ。高度1000を保って右旋回!」

「り、了解…」

アスカは小さくため息をつくと再び戦自のAH-64と交戦する前に取得したデータを眺めていた。

使徒に対抗するために作られたEvaは通常兵器では考えられないほど高精度かつ高感度な索敵能力を誇っていた。弐号機の生命反応モニターは手に取る様に歩兵部隊が松代の第二実験場に向かって散開している姿を捉えていたのである。

「このデータが届いていればいいけど…」

空路を封鎖するAH-64編隊に警告を発する一方で測定データを本部とミサトのベースキャンプに特殊バンド使って送っていた。

しかし、不幸にしてこれらのデータは全て長門の妨害にあって届いていなかった。

包括的軍事組織の呈をなしていないネルフは随所でその脆弱性を示していた。国連軍との共同歩調が皮肉にも極めて有効であった事を示す何よりの証左ともいえた。

「ピクシー1よりEva-02へ。高遠の前面に出た」

「了解。確認している」

その時、眼下で立て続けに火柱が立つ。

「M1(米軍第三世代戦車)が…ほとんど的にしかなってない…駄目か…やっぱりミサトに(データが)届いてない…」

「…バカな…研究棟から火が出てるぞ…くそ!部長は無事か!」

ヘリパイロットの悲痛な声が聞こえて来ていた。

「総員、射撃のショックに備えろ。これから高遠前面を攻撃して敵火戦の沈静化を狙う。射撃後、合図と共に弐号機を切り離せ」

「りょ、了解した!」

アスカはスコープを引き出すと狙いを定める。

「アスカ…行くわよ…Feuer(フォイア)!!」


ズガガガガガ


弐号機がトリガーを引いた途端、オレンジ色の光が暗闇を切り裂いていく。次々と轟音を上げて地上にまるで間欠泉の様に土塊(つちくれ)が吹き上がった。

「今だ!切り離せ!」

弐号機はそのまま山の中腹に向かってみるみる小さくなっていく。その様子を操縦席の窓から見ていたパイロット達が敬礼する。

「頼んだぞ…セカンド…よし!旋回!本部に帰還する!」

ネルフの大型輸送ヘリは弐号機の着地を見送ることなく旋回を始めていた。
 







殿(しんがり)を努めていたミサトたち国連軍の歩兵部隊の目の前で次々と断続的な爆発が起こる。まるで霧が立ち込めた様に辺りに靄がかかる。

「な、何だ…今のは…空爆か…」

ギルバート軍曹はミサトの隣で呻くように呟いた。

「いや…弐号機だ!弐号機が到着したんだ!」

「弐号機が?」

「さすがね…言わなくても分かってるわ…実験場の手前に降りて敵をこっち側に焙り出すつもりだ…」

「そいつはいい!こっちは丸裸なのに山の中に篭られていたんじゃ堪りませんからね」

「よし!流れが変わった!敵の攻撃が怯んだこの隙に職員全員を退避させる!軍曹!ここは任せたぞ!」

「了解!」

ミサトは作戦部員たちを叱咤激励しながら負傷者の救助を始めた。国連軍の兵士たちが入れ替わる様に防衛線を構築していく。

ネルフ職員は国連軍の護衛によって次々と実験場を退避していた。

正門前には既に国連軍が前線基地を構築していた。ミサトが駆け込んでくると全員が直立不動で敬礼する。ミサトは返礼しながら負傷したネルフ職員を乗せた輸送トラックの前に駆け寄る。

「あれ?スッさんの姿が見えないけど?」

「そ、それが…まだ研究棟に…」

額から血を流しながら若い作戦部員が呻く様に答える。

「な、なんだと!退避の指示を出したはずだぞ!まだ中にいるのか!(MAGIを)爆破も出来ないじゃないか!!」

「さ、三佐(周防)は技術部長とフォースチルドレンが取り残されたのを知って…部長に合わす顔がないと…小隊を引き連れて…」

「スッさん…」

ミサトは一瞬目を閉じる。

「カーネル(陸軍大佐)!」

ミサトが振り返ると36戦車大隊長のスティーブンス少佐がすぐ後ろに立っていた。

「ご無事でしたか!それにしてもあの乱戦の中で…」

「話は後だ、メジャー(陸軍少佐)。済まないが貴下の中に拠点制圧に向く小隊はあるか?」

「え?拠点制圧?!一体何をなさるおつもりですか?」

「これから研究棟の奪還及び取り残された人員の救出に向かう。ネルフの頭脳と良心を失うわけにはいかない」

「ならば11武装小隊と07部隊(擲弾兵団)の一部をこちらに直ちに回しましょう」

「そうか07部隊が随伴していたのか。それはありがたい」


現代の地上戦において戦車等の機甲部隊と歩兵部隊は連携して行動することが常識になっている。戦車の火力と機動力は戦場において突出するが市街戦などの遮蔽物が多い環境や拠点防衛には不向きであり、重装備のゲリラを相手にした場合はほとんど無力化するためである。

自陣深くに踏み込まれた場合はもはや歩兵同士の戦いになり装備とスキルによって勝敗が決することになる。

因みに擲弾兵とはグレネード等の長距離兵装した歩兵精鋭部隊のことでその歴史はナポレオン戦争、プロイセン時代にまで遡ることが出来る。現代では歩兵部隊による強襲作戦の前に進入路を開くための役割を担う他、各重装により膠着した戦局を打開する切り札としてその活躍の場は広がりを見せている。

閑話休題。



「よし!これから研究棟の奪還を図る!指揮はあたしが取る!」

「ぶ、部長!」

「カーネル!」

「定年を楽しみしてるおっさんを見殺しにできねえだろが!あんた達は松代市内でとりあえず手当てを受けて!人との戦いはネルフの本務ではない!かえって邪魔になるだけだ!メジャー来い!」

「はっ!」

ミサトは手に持っていたAK-47を近くにいた国連軍兵士に向かって放り投げると輸送トラックから降ろされたばかりのMP5を荒々しく輸送ボックスから取り出していた。

ミサトの後姿を呆然と見送っていた若い兵士はミサトがベースキャンプで拾い上げて今まで使っていた小銃を見て首を傾げる。

「これ…AKじゃないか…カーネルはどこでこれを…」

国連軍の正規小銃はM16でありAK-47を使う部隊は皆無だった。
 






松代の第二実験場の惨状はネルフの早期警戒衛星による観測でキャッチされていた。

発令所にいたマヤは顔を覆って出て行ったきり姿が見えなかった。ネルフの中枢を担うPrincipal Operation Floorには青葉シゲルと冬月しかいない。

「ミサト君とリツコ君は?今どうなってるんだ?」

「駄目です。作戦部のベースキャンプも研究棟の中央実験室とも連絡が付きません」

「何ということだ…」

冬月は青葉の席から離れると視線を主モニターに向けた。実験場内に国連軍のM1戦車が次々と乱入しているのが見え、それを合図にしたかの様に塹壕に篭っていた作戦部員たちが次々と撤収する姿が見えていた。

「もはや89発令の意味がないな…かといって…とても自力では防げん…」

撤収する作戦部員と国連軍の兵士たちが迫撃砲の直撃を受けてまるで紙吹雪のように呆気無く飛び散っていくのが見えた。

戦闘が始まって以来、次々と体調の不調を訴えるオペレーターが表れていたため音声は切ってあったが殆ど気休め程度にしかならなかった。

「酷い…悪夢としか言いようがない…」

「日本政府国防省から連絡です!テロリストが松代の実験場を攻撃しているため支援を申し出ています!」

「何がテロリストだ…白々しい…弐号機の実力行使の意趣返しではないのか」

冬月は不快そうに顔を顰めていた。

「戦自の介入は無用と伝えろ」

不意に後ろから声をかけられて冬月と青葉は思わず振り返った。碇ゲンドウが立っていた。

「碇…」

ネルフ発足以来、碇ゲンドウが発令所の司令長官席以外の場所に現れるのはおそらく初めてのことだった。

ゲンドウは鋭い眼光を放っている。目が合いそうになった青葉は思わず目を逸(そ)らす。

「松代のオペレーション体制が機能不全と現時点を持って判断する。私が直接指揮を執る」

「は、はい!」

青葉は半ば叫び声に近い返事をすると再びモニターに向き直る。

「碇、どうするつもりだ…」

「ネルフ総司令権限の非常事態宣言Nv-1010を直ちに日本全土に発令。松代市内全域をネルフ直轄の管理区域に指定しろ」

「り、了解!」

青葉が引きつりながらも手際よく作業を進める。

「な、なんだと!ひ、非常事態宣言だと!正気か!」

冬月は思わずゲンドウの顔を見た。ゲンドウはまるで氷の様に冷め切った表情をしていた。

「そうだ。他に選択の余地はない。それから初号機をダミープラグで起動していつでも射出出来る様に準備しておけ」

「だ、ダミープラグで…ですか…」

青葉が驚いて手を止める。辛うじて振り返りたい衝動を抑える事が出来たのは沈着冷静な青葉だからこそだった。

「い、碇!」

冬月は今にも卒倒しそうなほど驚愕していた。

「松代の第二実験場の破棄を指示する。1時間以内に処置を完了しろ。早くやれ」

「…了解…MAGI-01との有機ブロードバンド及び物理接続を遮断…MAGI-00の破棄を…強制発議F-306を提示…」 

「…お前…全員を…」

冬月は呻き声の様に呟く。ゲンドウはそれに構うことなく踵を返した。

「以上だ…」

主モニターにはF兵装の弐号機が砲撃を加えながら第二実験場に向かっている姿が映し出されていた。弐号機のすぐ先には参号機の姿も見えていた。









Ep#07_(18) 完 / つづく


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