新世紀エヴァンゲリオンの二次創作物、小説「Ihr Identität」を掲載するサイトです。初めての方は「このサイトについて」をご参照下さい。小説をご覧になりたい方はカテゴリーからEpisode#を選んで下さい。この物語はフィクションであり登場する人名、地名、団体名等は特に断りが無い限り全て架空のものです。尚、本ホームページに使用した「新世紀エヴァンゲリオン」の画像は(株)ガイナックスのガイドラインに沿って掲載しています。配布や転載は禁止されています。
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第21部 Horse-trading 戦いの流儀
(あらすじ)
アタシがアンタを助けてあげるわ…シンジ…
アスカは黒い使徒の海に向かって行った。
(あらすじ)
アタシがアンタを助けてあげるわ…シンジ…
アスカは黒い使徒の海に向かって行った。
(本文)
「なるほど…ミサト。それではN2爆雷992個を至急調達してそれを指定区域に同時に投下というのがそちらのプラン、という理解でいいのかね?」
「その通りです。准将」
「そうか…うーむ…理解に苦しむんだが…それは本当に「救出作戦」という理解でいいのかね?「殲滅作戦」ではなくて…」
「はい。准将。これは「救出作戦」です」
ミサトが淀みなく答える。
「そうか…」
マクダウェル准将側も電話口の向こうで幹部たちと相談しながらミサトと会話しているのだろう。電話だというのにお互いに不自然な間合いが時折空いた。
ミサトも准将に気取られないように日向が差し出しているメモ用紙上で忙しくネルフ側の制服組幹部と筆談を繰り広げていた。内容は戦術面から国際法など多岐に渡っている。足元に幾つもの丸めた紙クズが転がっていた。
ミサトの額には脂汗が滲んでいる。かなり慎重に単語を選んでいた。
「わかった…ミサト・・・君と私の仲だ。余計な詮索は抜きにして全面的な協力をしよう」
「ありがとうございます!准将」
「しかし…ミサト…正直を言ってN2を992個というのは…」
「分かっています、准将。ご無理を申し上げているのは重々承知しておりますが事は一刻を争います。出来るだけ多く拠出して頂ければ助かります」
ミサトはメモ帳にバッと走り書きをして周防に向ける。
日本駐留の国連軍の常備N2の数は?
周防が持っていたペンを走らせる。
せいぜい600。残りはICBM(大陸間弾道ミサイルの略。射程距離6400km以上)で飛ばすしかねーぞ。
日向が周防のメモに驚いて紙を引っ手繰ると周防とミサトに自分の走り書きを見せる。
ICBMは精度的にまずいです!直接投下しか無理です!
日向のメモを見たミサトと周防が同時に舌打ちをする。
「セブンスフリート(米軍太平洋第7艦隊)のみならず近くを航行中の国連軍艦船、及び太平洋の戦爆(戦略爆撃機)基地にも照会を掛けているが…日本駐留部隊の常備N2とあわせても700が限界…ん?ちょっと待ってくれ…711だな…?聞こえたと思うがこちら側(国連軍)は711がやっとだ…」
「そうですか…残りはこちらで用意って事ですね…」
「すまんが時間的にそうなってしまうな…せめてあと半日位あればな…(北米)本土からも拠出可能だったのだが…これだけ指定区域が限られるとICBMでは狙えんからな…」
ミサトはメモ帳に「マックからは711個が限界」と走り書きした。それを見た途端、周防がため息を一つつく。
「ここは…Nv(ネルフコード)301発令しかねえ。ミサちゃん、いいだろ?」
周防はすっかり禿げ上がった頭をピシャッと叩いてミサトに小声で話しかける。ミサトは親指を立ててGoサインを出す。
周防は頷くと筑摩に向き直る。
「おいサトル。お前は中国、ロシア、韓国からN2を強制徴発する手続きを取れ。それで250は上乗せ出来るだろう。それから戦爆も借りるのを忘れるなよ」
「了解しました」
筑摩は立ち上がるとミサトの部屋から飛び出して行った。
「あと30…余分を見て40として…くそ!うち(ネルフ本部)の在庫が32個で本当にカツカツだぜ…全く簡単に言ってくれるじゃねえかよ…あのパツキン(リツコの作戦部内でのあだ名)ねーちゃん」
「スッさん(周防のニックネーム)!まだ電話中っすよ!」
日向が周防のメタボリック気味のわき腹を肘で突いた。
「残りはコード301で近隣諸国から徴発する事にします。准将のご協力に本当に感謝します」
「そうか…301か…少々手荒いがそれしかないだろうな…ミサトのところも用意出来て30前後だろ?そんなに手持ちは無いだろうしな…」
「恐縮です…」
ミサトは背筋に嫌な汗をかいていた。
これで…うちの常備N2は全部パーだわ…完全に丸裸になってしまう…それにしても…マックのおっさんもうちの弾数…しっかり把握してるとはね…恐れ入ったわ…
「ところで…しつこい様だが本当に救出作戦なんだね…?」
「はい…そうです…」
ここで念押し入れるか…ふつー…相手もさるものね…
「そうか…分かった…さすがはEvaだな…これだけのエネルギー量でもビクともしないとはね…ははは…それじゃ健闘を祈るよ、ミサト…」
「…ありがとうございました…准将…」
ミサトは電話を置くと椅子の背もたれに身体を預けた。一同が緊張から解放される。
「ふー…さすがマックね…あのオヤジ…Evaの装甲が持たないんじゃねえかって薄々感づいてるわ…」
「そうかもな…N2を992個っていやあ北半球全体の配備数の35%だぜ?正気の沙汰じゃねえやな…」
「まあ…ね…」
それしか方法が無いって言い張るなら…それにかけるしかないけど…本当に他に方法はなかったのかしら…残りのEvaで直接使徒の腸を裂くっていう方が素人にはしっくりくるかもね…ブラフで一枚噛ませればよかったかな…
「はぁ…」
「じゃあ…俺たちもそろそろ野営本部に合流するか…よっこらしょっと」
周防が重たそうに腰を上げる。ミサトと日向も席を立つ。
「俺はよ、定年まであと少しなんだからさ…まだ死にたくねえんだけどな…」
「またあ?スッさんはいつもそればっかじゃん…」
ミサトは周防のふくよかな背中をバシッと叩いていた。
本部の無線からN2爆雷を予定の68%確保したという交信が聞こえてきた。
ミサトは思わず腕組をする手に力を込めていた。
Eva零号機と弐号機は使途に至近の第17ゲートからの射出を避けて、敢えて国連軍攻囲網の外にある15番ゲートから逐次射出されていた。
国連軍の地上部隊の兵士たちは間近で見るEvaに見入っていた。
アスカは弐号機の中からその様子を見ていたが、やがて横に並んで立っている零号機の方をちらっと視線を移す。
それは…あなたの心だから…Evaは心を通わせないとあなたに応えてくれないわ…
「アタシの…心…か…」
アスカは自嘲を口元に浮かべる。
アタシのせいで死ぬかもしれない様な目に遭って…あの中に沈んで消えてしまえばよかったのはアタシの方なのにね…残念だったわね、アンタ…消えちゃったのはアンタの方…アタシに対抗して、反発して…睨みつけて来てさ…よっぽどアタシに腹が立ってたのね…
視線を正面に浮かんでいる第12使徒の巨大な球体に向けていた。その下には西日を照り返すことなく静かに佇んでいる黒い海が広がっていた。
でも…もう心配しなくていいわよ…アンタの勝ちよ…アタシ…もう自力で…Evaともシンクロ出来ないし…アタシがここにいる価値は本当はない…ただ…生かされているだけ…ただ言われた事をこなすだけ…生きていても辛いだけ…
だけど…
「セカンド?」
レイの声が聞こえてくる。アスカはふっと我に返る。
「何?」
「大丈夫…?あなた…顔色が…」
アスカはモニターに映るレイの顔を見ようともしなかった。視線の先には黒い海があった。
「何でもないわよ…そんな事よりN2爆雷は83%が確保出来たそうよ・・・90%を超えたら中和地点に向かう許可をミサトから得るから…そのつもりでアンタも準備しときなさいよね…」
「…それはわかったけど…あな…」
アスカはレイとの交信をプツッと一方的に切るとそのまま全ての回線を切った。そしてドイツ語の文字情報転送モードに切り替えるとEvaの思考モードも久しぶりに日本語からドイツ語に切り替えた。
更に外部音声の集音システムもOFFにする。途端に近くでホバリングしていた大型輸送ヘリの音が消える。戦場とは思えないほどの静寂がアスカを包んでいく。
アスカは静かに目を閉じた。
今までアタシは自分のために戦ってきた…失った自分を取り戻すために…でも…同時に何処かで認められたいって気持ちもあった…ママにね…もう一度…会いたかったから…
西に傾いた日が最後の光を放っていた。既に夜の帳が下り始めている。
それがいつかアタシの中で変わっていた…確かにアンタを自分のものにしようとした…だけど…
N2爆雷が予定の90%を確保出来たというテロップが流れていく。アスカはほっそりした長い指を交互に組むと指の関節を鳴らしてレバーを握りしめた。
アンタは結局…誰でもいいから自分を撫でて欲しかっただけ…だから…
アスカは一般回線を繋ぐ。途端に喧騒がさざ波の様に伝わってくる。
「本部。こちらEva00及び02。これから中和地点に向かう。許可願う」
「アスカ。了解したわ。その…あのさ…」
ミサトの声が聞こえて来た。
「何よ…お説教なら後にしてよね…」
「違うわよ!えっと…Good Luck!」
いつものミサトの声だった。アスカは小さなため息をつくと口元に僅かな笑みを浮かべた。
「分かってるよ…ミサト…そんな事より投下のタイミング外さないでよね!こっちもATフィールド展開が遅れるとやばいんだからさ!」
「任せといて!」
アスカはぐっと使徒を見る目に力を込める。
アタシがアンタを助けてあげるわ…シンジ…でもね…それはちゃんとお別れする為よ…
「行くわよ、レイ!」
「零号機。了解…」
やっぱり一人で戦うのがお似合いってことよ…誰にも期待しないでね…それがアタシの流儀…
零号機と弐号機は使徒の黒い海に向かって行った。
Ep#06_(21) 完 / つづく
ミサトはTV会議システムを使わずに対使徒戦派遣国連軍総司令官であるマクダウェル准将に敢えて自分の執務室から電話を直接入れていた。
ミサトのデスクの周りには副官の日向、作戦部長補佐の周防進三佐、そして同部作戦五課(後方支援担当)課長の筑摩サトル一尉という幹部が揃っていた。
ミサトのデスクの周りには副官の日向、作戦部長補佐の周防進三佐、そして同部作戦五課(後方支援担当)課長の筑摩サトル一尉という幹部が揃っていた。
ミサトの様子を注意深く伺っている。全員が緊張した面持ちをしていた。
受話器から准将の大きな声が時折漏れてくる。
受話器から准将の大きな声が時折漏れてくる。
「なるほど…ミサト。それではN2爆雷992個を至急調達してそれを指定区域に同時に投下というのがそちらのプラン、という理解でいいのかね?」
「その通りです。准将」
「そうか…うーむ…理解に苦しむんだが…それは本当に「救出作戦」という理解でいいのかね?「殲滅作戦」ではなくて…」
「はい。准将。これは「救出作戦」です」
ミサトが淀みなく答える。
「そうか…」
マクダウェル准将側も電話口の向こうで幹部たちと相談しながらミサトと会話しているのだろう。電話だというのにお互いに不自然な間合いが時折空いた。
ミサトも准将に気取られないように日向が差し出しているメモ用紙上で忙しくネルフ側の制服組幹部と筆談を繰り広げていた。内容は戦術面から国際法など多岐に渡っている。足元に幾つもの丸めた紙クズが転がっていた。
ミサトの額には脂汗が滲んでいる。かなり慎重に単語を選んでいた。
「わかった…ミサト・・・君と私の仲だ。余計な詮索は抜きにして全面的な協力をしよう」
「ありがとうございます!准将」
「しかし…ミサト…正直を言ってN2を992個というのは…」
「分かっています、准将。ご無理を申し上げているのは重々承知しておりますが事は一刻を争います。出来るだけ多く拠出して頂ければ助かります」
ミサトはメモ帳にバッと走り書きをして周防に向ける。
日本駐留の国連軍の常備N2の数は?
周防が持っていたペンを走らせる。
せいぜい600。残りはICBM(大陸間弾道ミサイルの略。射程距離6400km以上)で飛ばすしかねーぞ。
日向が周防のメモに驚いて紙を引っ手繰ると周防とミサトに自分の走り書きを見せる。
ICBMは精度的にまずいです!直接投下しか無理です!
日向のメモを見たミサトと周防が同時に舌打ちをする。
「セブンスフリート(米軍太平洋第7艦隊)のみならず近くを航行中の国連軍艦船、及び太平洋の戦爆(戦略爆撃機)基地にも照会を掛けているが…日本駐留部隊の常備N2とあわせても700が限界…ん?ちょっと待ってくれ…711だな…?聞こえたと思うがこちら側(国連軍)は711がやっとだ…」
「そうですか…残りはこちらで用意って事ですね…」
「すまんが時間的にそうなってしまうな…せめてあと半日位あればな…(北米)本土からも拠出可能だったのだが…これだけ指定区域が限られるとICBMでは狙えんからな…」
ミサトはメモ帳に「マックからは711個が限界」と走り書きした。それを見た途端、周防がため息を一つつく。
「ここは…Nv(ネルフコード)301発令しかねえ。ミサちゃん、いいだろ?」
周防はすっかり禿げ上がった頭をピシャッと叩いてミサトに小声で話しかける。ミサトは親指を立ててGoサインを出す。
周防は頷くと筑摩に向き直る。
「おいサトル。お前は中国、ロシア、韓国からN2を強制徴発する手続きを取れ。それで250は上乗せ出来るだろう。それから戦爆も借りるのを忘れるなよ」
「了解しました」
筑摩は立ち上がるとミサトの部屋から飛び出して行った。
「あと30…余分を見て40として…くそ!うち(ネルフ本部)の在庫が32個で本当にカツカツだぜ…全く簡単に言ってくれるじゃねえかよ…あのパツキン(リツコの作戦部内でのあだ名)ねーちゃん」
「スッさん(周防のニックネーム)!まだ電話中っすよ!」
日向が周防のメタボリック気味のわき腹を肘で突いた。
「残りはコード301で近隣諸国から徴発する事にします。准将のご協力に本当に感謝します」
「そうか…301か…少々手荒いがそれしかないだろうな…ミサトのところも用意出来て30前後だろ?そんなに手持ちは無いだろうしな…」
「恐縮です…」
ミサトは背筋に嫌な汗をかいていた。
これで…うちの常備N2は全部パーだわ…完全に丸裸になってしまう…それにしても…マックのおっさんもうちの弾数…しっかり把握してるとはね…恐れ入ったわ…
「ところで…しつこい様だが本当に救出作戦なんだね…?」
「はい…そうです…」
ここで念押し入れるか…ふつー…相手もさるものね…
「そうか…分かった…さすがはEvaだな…これだけのエネルギー量でもビクともしないとはね…ははは…それじゃ健闘を祈るよ、ミサト…」
「…ありがとうございました…准将…」
ミサトは電話を置くと椅子の背もたれに身体を預けた。一同が緊張から解放される。
「ふー…さすがマックね…あのオヤジ…Evaの装甲が持たないんじゃねえかって薄々感づいてるわ…」
「そうかもな…N2を992個っていやあ北半球全体の配備数の35%だぜ?正気の沙汰じゃねえやな…」
「まあ…ね…」
それしか方法が無いって言い張るなら…それにかけるしかないけど…本当に他に方法はなかったのかしら…残りのEvaで直接使徒の腸を裂くっていう方が素人にはしっくりくるかもね…ブラフで一枚噛ませればよかったかな…
「はぁ…」
「じゃあ…俺たちもそろそろ野営本部に合流するか…よっこらしょっと」
周防が重たそうに腰を上げる。ミサトと日向も席を立つ。
「俺はよ、定年まであと少しなんだからさ…まだ死にたくねえんだけどな…」
「またあ?スッさんはいつもそればっかじゃん…」
ミサトは周防のふくよかな背中をバシッと叩いていた。
ミサトと日向は野営テントの作戦本部からサーチライトに照らされている使徒の姿を見ていた。
Evaの技術が恐ろしいものだとようやく分かったところでその目的はいまだに謎…使徒を倒した後に残るものはこのEvaということになる…人類を護るために今は必要だけど…目的を達した時、Evaはあたし達にとって何になるの…
とにかく…今はシンジ君を救出することに集中しなければ…あたしは何があってもシンジ君たちを失うわけには行かないのよ!
とにかく…今はシンジ君を救出することに集中しなければ…あたしは何があってもシンジ君たちを失うわけには行かないのよ!
本部の無線からN2爆雷を予定の68%確保したという交信が聞こえてきた。
ミサトは思わず腕組をする手に力を込めていた。
Eva零号機と弐号機は使途に至近の第17ゲートからの射出を避けて、敢えて国連軍攻囲網の外にある15番ゲートから逐次射出されていた。
国連軍の地上部隊の兵士たちは間近で見るEvaに見入っていた。
アスカは弐号機の中からその様子を見ていたが、やがて横に並んで立っている零号機の方をちらっと視線を移す。
それは…あなたの心だから…Evaは心を通わせないとあなたに応えてくれないわ…
「アタシの…心…か…」
アスカは自嘲を口元に浮かべる。
アタシのせいで死ぬかもしれない様な目に遭って…あの中に沈んで消えてしまえばよかったのはアタシの方なのにね…残念だったわね、アンタ…消えちゃったのはアンタの方…アタシに対抗して、反発して…睨みつけて来てさ…よっぽどアタシに腹が立ってたのね…
視線を正面に浮かんでいる第12使徒の巨大な球体に向けていた。その下には西日を照り返すことなく静かに佇んでいる黒い海が広がっていた。
でも…もう心配しなくていいわよ…アンタの勝ちよ…アタシ…もう自力で…Evaともシンクロ出来ないし…アタシがここにいる価値は本当はない…ただ…生かされているだけ…ただ言われた事をこなすだけ…生きていても辛いだけ…
だけど…
「セカンド?」
レイの声が聞こえてくる。アスカはふっと我に返る。
「何?」
「大丈夫…?あなた…顔色が…」
アスカはモニターに映るレイの顔を見ようともしなかった。視線の先には黒い海があった。
「何でもないわよ…そんな事よりN2爆雷は83%が確保出来たそうよ・・・90%を超えたら中和地点に向かう許可をミサトから得るから…そのつもりでアンタも準備しときなさいよね…」
「…それはわかったけど…あな…」
アスカはレイとの交信をプツッと一方的に切るとそのまま全ての回線を切った。そしてドイツ語の文字情報転送モードに切り替えるとEvaの思考モードも久しぶりに日本語からドイツ語に切り替えた。
更に外部音声の集音システムもOFFにする。途端に近くでホバリングしていた大型輸送ヘリの音が消える。戦場とは思えないほどの静寂がアスカを包んでいく。
アスカは静かに目を閉じた。
今までアタシは自分のために戦ってきた…失った自分を取り戻すために…でも…同時に何処かで認められたいって気持ちもあった…ママにね…もう一度…会いたかったから…
西に傾いた日が最後の光を放っていた。既に夜の帳が下り始めている。
それがいつかアタシの中で変わっていた…確かにアンタを自分のものにしようとした…だけど…
N2爆雷が予定の90%を確保出来たというテロップが流れていく。アスカはほっそりした長い指を交互に組むと指の関節を鳴らしてレバーを握りしめた。
アンタは結局…誰でもいいから自分を撫でて欲しかっただけ…だから…
アスカは一般回線を繋ぐ。途端に喧騒がさざ波の様に伝わってくる。
「本部。こちらEva00及び02。これから中和地点に向かう。許可願う」
「アスカ。了解したわ。その…あのさ…」
ミサトの声が聞こえて来た。
「何よ…お説教なら後にしてよね…」
「違うわよ!えっと…Good Luck!」
いつものミサトの声だった。アスカは小さなため息をつくと口元に僅かな笑みを浮かべた。
「分かってるよ…ミサト…そんな事より投下のタイミング外さないでよね!こっちもATフィールド展開が遅れるとやばいんだからさ!」
「任せといて!」
アスカはぐっと使徒を見る目に力を込める。
アタシがアンタを助けてあげるわ…シンジ…でもね…それはちゃんとお別れする為よ…
「行くわよ、レイ!」
「零号機。了解…」
やっぱり一人で戦うのがお似合いってことよ…誰にも期待しないでね…それがアタシの流儀…
零号機と弐号機は使徒の黒い海に向かって行った。
Ep#06_(21) 完 / つづく
(改定履歴)
19th Mar, 2009 / 表現修正
11th May, 2010 / 表現修正
19th Mar, 2009 / 表現修正
11th May, 2010 / 表現修正
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