新世紀エヴァンゲリオンの二次創作物、小説「Ihr Identität」を掲載するサイトです。初めての方は「このサイトについて」をご参照下さい。小説をご覧になりたい方はカテゴリーからEpisode#を選んで下さい。この物語はフィクションであり登場する人名、地名、団体名等は特に断りが無い限り全て架空のものです。尚、本ホームページに使用した「新世紀エヴァンゲリオン」の画像は(株)ガイナックスのガイドラインに沿って掲載しています。配布や転載は禁止されています。
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第5部 A commission of chessman 武官の一分
(あらすじ)
ミサトの元に一通の封筒が届く。
Colonel Katsuragi 葛城陸軍大佐
Captain Langley ラングレー陸軍大尉
差出人は国連軍陸軍特殊機甲部隊総司令官のローゼングレン大将だった。国連軍から突然届いた時期外れな辞令と軍団編成の変更…これは一体何を意味するのか…
一方でネルフ本部内の内紛も顕在化する兆しを見せ始めていた。
目まぐるしく変わるチェスの駒の様に運命の机上で揺れ動く武官たちの一分とは…
(あらすじ)
ミサトの元に一通の封筒が届く。
Colonel Katsuragi 葛城陸軍大佐
Captain Langley ラングレー陸軍大尉
差出人は国連軍陸軍特殊機甲部隊総司令官のローゼングレン大将だった。国連軍から突然届いた時期外れな辞令と軍団編成の変更…これは一体何を意味するのか…
一方でネルフ本部内の内紛も顕在化する兆しを見せ始めていた。
目まぐるしく変わるチェスの駒の様に運命の机上で揺れ動く武官たちの一分とは…
(本文)
「どうしたんですか?さっきからため息ばかりついてるじゃないですか…」
日向が躊躇いがちにミサトに声をかける。
「ちょっちね…」
頬杖をついたミサトは封を切った分厚い封筒を前にさっきから何度もため息をついている。
「何ですか?それ…」
日向が覗き込むとA4サイズの立派な白い封筒には国連軍陸軍章と双頭の鷲を象った封印が見えた。
ゴールデン…イーグル…とすると…僕が立ち入る問題じゃなさそうだな…
日向がミサトの決裁した書類を持って執務室を出ようとした時だった。後ろからミサトの声が聞こえて来た。
「ちょっと日向君…時間ある?」
「え?ええ…何でしょう…」
ミサトは日向に椅子を勧めると真剣な面持ちで日向の顔を見詰めてきた。日向の鼓動が早くなる。
「実はこの国連軍からの手紙のことで内密の相談があるのよ」
「は、はあ…」
内心、日向はがっかりしたが急いで顔を左右に振ると邪念を振り払った。
「この書類はね…国連軍統帥本部のメンバーでもあるゴールデンイーグル総司令官のローゼングレン陸軍大将からあたしとアスカ宛に来た辞令なのよ」
「じ、辞令…?!何で…この時期(2015年11月)に・・・」
「あたしもそこが引っ掛かってんのよ…何か…裏がありそうでさ…」
「その辞令はその…差し支えなければ…何と言ってきてるんですか?」
まさか…ミサトさん…ネルフから…そんな…
「簡単な方から言うとまず国連軍特殊機甲部隊(ゴールデンイーグル)は世界に3個師団が展開しているけどこれに加えて人型決戦兵器連隊を新設することが決定されたの」
「え!人型決戦兵器って…それってEvaってことですか?」
日向はほっとする反面、確かにミサトが悩む様に真意を図りかねるその内容に思わず眉をひそめていた。
「その通り…通称Eva連隊…その連隊長にあたしが選ばれたってわけよ…」
「れ、連隊長って…」
「まあ死人みたいだけど2階級特進でカーネル(大佐)に任じるってさ…何かやっつけ仕事みたいで気に食わないけどね…」
「…」
連隊はかつて独立した戦略的軍団単位だったが現代の軍団編成においては規模として中途半端ということもあってほとんどの国で廃止の方向にあり、戦略単位として師団(旅団)、部隊単位として大隊という運用が一般的だった。
但し、米国のレンジャー連隊など形式的に連隊の呼称が残るものも一部存在していた。Eva連隊は特殊な兵科の個別戦略部隊というニュアンスで付けられたのだろう。通例として連隊長には中佐から大佐がこの任に当たる。
「それはともかく厄介なのはアスカの辞令の方なのよ…」
「え?アスカちゃんのですか?」
そう言えば…最近、全然アスカちゃんの姿を見ないな…
レリエル殲滅後1週間が経とうとしていたが作戦部でアスカの姿を見たものはいなかった。専ら「当番」はレイだけで回していた。アスカは作戦部でもアイドル的な存在だっただけに日増しにその不在を訝しがる声が高まりつつあった。
アスカの拘留の事実を知るのは作戦部ではミサトだけだった。
「アスカはね…この新設連隊でEva実戦部隊長…すなわちキャプテン(大尉)に任官とあるのよ…」
「た、大尉(一尉)!?いきなりですか!」
ネルフでは大尉(一尉)から少佐(三佐)が課長の任に就く。ほぼ幹部に近い階級のため抜群の業績でもない限り滅多な事では進級しない領域だった。
ミサトは実質的に二佐扱いで部長、保安部長の由良三佐は正確には部長代理だった。それだけ実戦部隊の指揮官欠乏に喘いでいるとも言えた。
「アスカが准尉の国連軍正規階級を持ってるのは知ってるでしょ?」
「ええ、勿論…経歴ファイルにも書いてありますから…」
「第三支部で4年弱に渡る訓練を受けてきたけどあれは同時に国連軍士官養成のカリキュラムも含んでいたのよ。通常は訓練修了と同時に少尉になるべきところをあえて准尉にしてあるの…」
「確かに前から不思議に思っていたんですけど…なんで正規過程を修了しているのに准尉(士官候補生)なんですか?」
「それは15歳未満の少年兵養成を禁じた国際条約が存在しているからよ。国連が率先してそれを破るわけに行かないじゃん」
ミサトはニヤッと口元に悪戯っぽく笑みを浮かべた。
「なるほど…」
「これを12月4日付けで3階級特進させると言って寄越してきてるのよ…」
「12月4日というと…ざっと3週間後ですか?何かすごい中途半端な日付ですね」
日向はミサトの執務室に掛けてある残りが少なくなった2015年のカレンダーに目を向けていた。
「その日はアスカの誕生日なのよ…15歳のね…」
「あ、そういう事ですか…」
「まあ解禁日ってとこかしらね。何か…渓流釣りの鑑札みたいだけどさ」
ミサトは椅子の上で大きく伸びをする。それを見ながら日向はやや思案顔になると右手を顎に当てる。
「それにしても…普通ならめでたい話なんですけど…確かに解せない事が多いですね…第一にEvaの独占運用は特務機関ネルフがバレンタイン条約によって担保されている筈ですよね?いかな国連軍と雖も(いえども)これは明確な条約違反でしょう」
「さすが日向君ね…それから?」
「第二にEvaは全てここにある筈です。参号機も明日には新横田基地に司令と一緒に到着してすぐ松代の実験場に運ばれる予定です。つまり世界中のEvaが日本にある筈なんです。それらを強制的に接収するつもりでしょうか?一体何をもってEva連隊を編成するつもりなんでしょうね?」
ミサトはゆっくりと日向の言葉に頷いた。そして両肘をデスクに付くと両手を目の前で組む。視線は日向に注がれていた。
「最後にミサトさんとアスカちゃんをネルフから…その…引き抜こうとしている様に見えるんですが…気のせいでしょうか?」
日向は思わず眉間に皺を寄せる。
この前のシンジ君のファーストアプローチのやり方を見てるとやっぱり危なっかしい…好不調の波があるとはいえやっぱりアスカちゃんはさすが訓練を受けているだけの事はある…それにミサトさんの実行力と決断力、そして何にも増して統率力は掛け値無く抜群だ…ネルフが特務機関足りえるのはこの人の力があってこそだ…二人が抜けたネルフなんて考えられないよ…
「いい線行ってるじゃん!あたしとほぼ同じ考えね。でもそれに一つだけ加えたいことがあるわ」
「何ですか?」
ミサトは不敵な笑みを口元に浮かべると日向を手招いた。日向がミサトのデスクの方に首を伸ばすといきなりミサトは日向の耳元に口を寄せた。
日向の身体が一瞬のうちに凝固する。
「連隊編成っつうことはね…パイロットも兵器の配備数だけ必要になる筈…なのに…お呼びがかかっているのはアスカだけなのよ…逆を言うとさ…」
ミサトは声を潜ませる。
「アスカ一人がいれば事が足りる様なEva連隊って…一体何?ってことよ…」
「あるいは…他に適格者を確保してるって事ですかね?」
日向は愛用の眼鏡をわざとらしく持ち上げる。
「いや…うち(ネルフ)じゃあるまいし…ゴールデンイーグルが軍属以外で部隊編成をするとは到底考えられない…適格者ってだけでは何の意味もないわ…骨の髄まで戦いを知り尽くしている必要がある…それがゴールデンイーグルよ…」
「その辺が僕の次の仕事…ってことですね…」
「頼んだわよ…」
ミサトは離れざまに右手でペチペチと日向の左頬を撫でる様に叩くと軽くウィンクする。
ネルフ本部の地上階にある大会議室に各部から課長級の幹部が集められていた。
司令長官室長のリツコが改定されたネルフ職員規定と改組(組織変更)の説明を決裁権を持つ課長に実施するために招集した会議だった。
定刻になって颯爽と現れたリツコは壇上に立って眉間に皺を寄せた。
演壇から向かって右側にポッカリと大きな空席が見える。リツコの傍らにいた北上総務部長にリツコは思わず向き直る。
「北上さん、あの辺り一帯の空席はなんですか?」
「あれは…作戦部所属の部長補佐と1課から5課の課長及び課長補佐の席ですな…」
北上は大袈裟にため息をつくと腰に両手をあてた。
「作戦部ですって…どういうことですの?」
作戦部と聞いたリツコの脳裏に一瞬、先日の部長会議で睨み合ったミサトの顔が浮かぶ。
「その…彼らは作戦部長が空位になって葛城作戦課長がトップになったからと言ってですな…自ら一級職責降格を申し出ておりましてな…」
「自分から職責(階級とは異なって部長、課長などの役職のこと)の一級降格?」
「はあ…勿論…総務部も人事課もそんな勝手は認めてはおりませんが…つまり…作戦部には葛城課長以外の課長はいません…とまあ…こう言いたいのでしょうな…」
「な、何ですって!?そんな勝手な理屈が…これは明らかな命令不服従ですよ!すぐに呼んで来て下さい!何を考えているの!ミサトのところは!」
リツコの手はワナワナと怒りで震えていた。
「呼びに行って来る様な連中だったら…司令室長招集の会議を公然と欠席しませんよ…何と言っても一筋縄ではいかない連中ですからな…」
「なっ…」
北上の顔もリツコと同様に苦りきっていた。
「これでも苦労したんですよ…保安部も似たような雰囲気があったんです…まあどうにか由良君のところに手を回してやっとの思いで出席させましたけどね、保安部の方は…」
「分かりました…このまま始めます…」
リツコは気持ちを落ち着けるためにまだ一言も発しないうちから水差しの水を荒々しくコップに注いで一気に飲み干した。
許さないわよ…ミサト…こんな勝手がいつまでも許されると思っているなら大間違いよ…
「ふー」
「どうしたんですか?さっきからため息ばかりついてるじゃないですか…」
日向が躊躇いがちにミサトに声をかける。
「ちょっちね…」
頬杖をついたミサトは封を切った分厚い封筒を前にさっきから何度もため息をついている。
「何ですか?それ…」
日向が覗き込むとA4サイズの立派な白い封筒には国連軍陸軍章と双頭の鷲を象った封印が見えた。
ゴールデン…イーグル…とすると…僕が立ち入る問題じゃなさそうだな…
日向がミサトの決裁した書類を持って執務室を出ようとした時だった。後ろからミサトの声が聞こえて来た。
「ちょっと日向君…時間ある?」
「え?ええ…何でしょう…」
ミサトは日向に椅子を勧めると真剣な面持ちで日向の顔を見詰めてきた。日向の鼓動が早くなる。
「実はこの国連軍からの手紙のことで内密の相談があるのよ」
「は、はあ…」
内心、日向はがっかりしたが急いで顔を左右に振ると邪念を振り払った。
「この書類はね…国連軍統帥本部のメンバーでもあるゴールデンイーグル総司令官のローゼングレン陸軍大将からあたしとアスカ宛に来た辞令なのよ」
「じ、辞令…?!何で…この時期(2015年11月)に・・・」
「あたしもそこが引っ掛かってんのよ…何か…裏がありそうでさ…」
「その辞令はその…差し支えなければ…何と言ってきてるんですか?」
まさか…ミサトさん…ネルフから…そんな…
「簡単な方から言うとまず国連軍特殊機甲部隊(ゴールデンイーグル)は世界に3個師団が展開しているけどこれに加えて人型決戦兵器連隊を新設することが決定されたの」
「え!人型決戦兵器って…それってEvaってことですか?」
日向はほっとする反面、確かにミサトが悩む様に真意を図りかねるその内容に思わず眉をひそめていた。
「その通り…通称Eva連隊…その連隊長にあたしが選ばれたってわけよ…」
「れ、連隊長って…」
「まあ死人みたいだけど2階級特進でカーネル(大佐)に任じるってさ…何かやっつけ仕事みたいで気に食わないけどね…」
「…」
連隊はかつて独立した戦略的軍団単位だったが現代の軍団編成においては規模として中途半端ということもあってほとんどの国で廃止の方向にあり、戦略単位として師団(旅団)、部隊単位として大隊という運用が一般的だった。
但し、米国のレンジャー連隊など形式的に連隊の呼称が残るものも一部存在していた。Eva連隊は特殊な兵科の個別戦略部隊というニュアンスで付けられたのだろう。通例として連隊長には中佐から大佐がこの任に当たる。
「それはともかく厄介なのはアスカの辞令の方なのよ…」
「え?アスカちゃんのですか?」
そう言えば…最近、全然アスカちゃんの姿を見ないな…
レリエル殲滅後1週間が経とうとしていたが作戦部でアスカの姿を見たものはいなかった。専ら「当番」はレイだけで回していた。アスカは作戦部でもアイドル的な存在だっただけに日増しにその不在を訝しがる声が高まりつつあった。
アスカの拘留の事実を知るのは作戦部ではミサトだけだった。
「アスカはね…この新設連隊でEva実戦部隊長…すなわちキャプテン(大尉)に任官とあるのよ…」
「た、大尉(一尉)!?いきなりですか!」
ネルフでは大尉(一尉)から少佐(三佐)が課長の任に就く。ほぼ幹部に近い階級のため抜群の業績でもない限り滅多な事では進級しない領域だった。
ミサトは実質的に二佐扱いで部長、保安部長の由良三佐は正確には部長代理だった。それだけ実戦部隊の指揮官欠乏に喘いでいるとも言えた。
「アスカが准尉の国連軍正規階級を持ってるのは知ってるでしょ?」
「ええ、勿論…経歴ファイルにも書いてありますから…」
「第三支部で4年弱に渡る訓練を受けてきたけどあれは同時に国連軍士官養成のカリキュラムも含んでいたのよ。通常は訓練修了と同時に少尉になるべきところをあえて准尉にしてあるの…」
「確かに前から不思議に思っていたんですけど…なんで正規過程を修了しているのに准尉(士官候補生)なんですか?」
「それは15歳未満の少年兵養成を禁じた国際条約が存在しているからよ。国連が率先してそれを破るわけに行かないじゃん」
ミサトはニヤッと口元に悪戯っぽく笑みを浮かべた。
「なるほど…」
「これを12月4日付けで3階級特進させると言って寄越してきてるのよ…」
「12月4日というと…ざっと3週間後ですか?何かすごい中途半端な日付ですね」
日向はミサトの執務室に掛けてある残りが少なくなった2015年のカレンダーに目を向けていた。
「その日はアスカの誕生日なのよ…15歳のね…」
「あ、そういう事ですか…」
「まあ解禁日ってとこかしらね。何か…渓流釣りの鑑札みたいだけどさ」
ミサトは椅子の上で大きく伸びをする。それを見ながら日向はやや思案顔になると右手を顎に当てる。
「それにしても…普通ならめでたい話なんですけど…確かに解せない事が多いですね…第一にEvaの独占運用は特務機関ネルフがバレンタイン条約によって担保されている筈ですよね?いかな国連軍と雖も(いえども)これは明確な条約違反でしょう」
「さすが日向君ね…それから?」
「第二にEvaは全てここにある筈です。参号機も明日には新横田基地に司令と一緒に到着してすぐ松代の実験場に運ばれる予定です。つまり世界中のEvaが日本にある筈なんです。それらを強制的に接収するつもりでしょうか?一体何をもってEva連隊を編成するつもりなんでしょうね?」
ミサトはゆっくりと日向の言葉に頷いた。そして両肘をデスクに付くと両手を目の前で組む。視線は日向に注がれていた。
「最後にミサトさんとアスカちゃんをネルフから…その…引き抜こうとしている様に見えるんですが…気のせいでしょうか?」
日向は思わず眉間に皺を寄せる。
この前のシンジ君のファーストアプローチのやり方を見てるとやっぱり危なっかしい…好不調の波があるとはいえやっぱりアスカちゃんはさすが訓練を受けているだけの事はある…それにミサトさんの実行力と決断力、そして何にも増して統率力は掛け値無く抜群だ…ネルフが特務機関足りえるのはこの人の力があってこそだ…二人が抜けたネルフなんて考えられないよ…
「いい線行ってるじゃん!あたしとほぼ同じ考えね。でもそれに一つだけ加えたいことがあるわ」
「何ですか?」
ミサトは不敵な笑みを口元に浮かべると日向を手招いた。日向がミサトのデスクの方に首を伸ばすといきなりミサトは日向の耳元に口を寄せた。
日向の身体が一瞬のうちに凝固する。
「連隊編成っつうことはね…パイロットも兵器の配備数だけ必要になる筈…なのに…お呼びがかかっているのはアスカだけなのよ…逆を言うとさ…」
ミサトは声を潜ませる。
「アスカ一人がいれば事が足りる様なEva連隊って…一体何?ってことよ…」
「あるいは…他に適格者を確保してるって事ですかね?」
日向は愛用の眼鏡をわざとらしく持ち上げる。
「いや…うち(ネルフ)じゃあるまいし…ゴールデンイーグルが軍属以外で部隊編成をするとは到底考えられない…適格者ってだけでは何の意味もないわ…骨の髄まで戦いを知り尽くしている必要がある…それがゴールデンイーグルよ…」
「その辺が僕の次の仕事…ってことですね…」
「頼んだわよ…」
ミサトは離れざまに右手でペチペチと日向の左頬を撫でる様に叩くと軽くウィンクする。
ネルフ本部の地上階にある大会議室に各部から課長級の幹部が集められていた。
司令長官室長のリツコが改定されたネルフ職員規定と改組(組織変更)の説明を決裁権を持つ課長に実施するために招集した会議だった。
定刻になって颯爽と現れたリツコは壇上に立って眉間に皺を寄せた。
演壇から向かって右側にポッカリと大きな空席が見える。リツコの傍らにいた北上総務部長にリツコは思わず向き直る。
「北上さん、あの辺り一帯の空席はなんですか?」
「あれは…作戦部所属の部長補佐と1課から5課の課長及び課長補佐の席ですな…」
北上は大袈裟にため息をつくと腰に両手をあてた。
「作戦部ですって…どういうことですの?」
作戦部と聞いたリツコの脳裏に一瞬、先日の部長会議で睨み合ったミサトの顔が浮かぶ。
「その…彼らは作戦部長が空位になって葛城作戦課長がトップになったからと言ってですな…自ら一級職責降格を申し出ておりましてな…」
「自分から職責(階級とは異なって部長、課長などの役職のこと)の一級降格?」
「はあ…勿論…総務部も人事課もそんな勝手は認めてはおりませんが…つまり…作戦部には葛城課長以外の課長はいません…とまあ…こう言いたいのでしょうな…」
「な、何ですって!?そんな勝手な理屈が…これは明らかな命令不服従ですよ!すぐに呼んで来て下さい!何を考えているの!ミサトのところは!」
リツコの手はワナワナと怒りで震えていた。
「呼びに行って来る様な連中だったら…司令室長招集の会議を公然と欠席しませんよ…何と言っても一筋縄ではいかない連中ですからな…」
「なっ…」
北上の顔もリツコと同様に苦りきっていた。
「これでも苦労したんですよ…保安部も似たような雰囲気があったんです…まあどうにか由良君のところに手を回してやっとの思いで出席させましたけどね、保安部の方は…」
「分かりました…このまま始めます…」
リツコは気持ちを落ち着けるためにまだ一言も発しないうちから水差しの水を荒々しくコップに注いで一気に飲み干した。
許さないわよ…ミサト…こんな勝手がいつまでも許されると思っているなら大間違いよ…
Ep#07_(5) 完 / つづく
(改定履歴)
23rd Mar, 2009 / 表現修正
23rd Mar, 2009 / 表現修正
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