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新世紀エヴァンゲリオンの二次創作物、小説「Ihr Identität」を掲載するサイトです。初めての方は「このサイトについて」をご参照下さい。小説をご覧になりたい方はカテゴリーからEpisode#を選んで下さい。この物語はフィクションであり登場する人名、地名、団体名等は特に断りが無い限り全て架空のものです。尚、本ホームページに使用した「新世紀エヴァンゲリオン」の画像は(株)ガイナックスのガイドラインに沿って掲載しています。配布や転載は禁止されています。
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第4部 Ryoji Kaji ゾルゲの肖像


(あらすじ)

人類補完委員会の召喚を受けたゲンドウと冬月は本部を後にする。リツコはゲンドウから極秘裏にダミープラグの計画を前倒しする様に指示される。
ミサトはゲンドウの留守をいいことに 加持リョウジ に連絡を取って二人で旧交を温める。
そんなミサトを見透かした様にリツコは加持に会うなら伝言を伝えるようにとミサトに頼む。
「フランクフルター・ツァイトゥンクもほどほどにと伝えてもらえるかしら?」
「何それ?ソーセージ?」
「くれぐれも頼んだわよ」
 
(本文)


ゲンドウと冬月は保安部が用意した黒塗りの車に乗って本部を後にした。

人類補完委員会の召喚を受けたことは留守を預かるネルフ職員の中で唯一リツコだけが知っていた。リツコがゲンドウと冬月に呼ばれたのはつい昨日の事だった。
 




 
「赤城博士、我々の留守中も予定通りにE計画は進めるように」

「分かりました。次のプラグラムはパイロットとコアの組合せを変えてのシンクロテストになりますが、データを取るべき対象に特にご希望がありますか?」

リツコは聞くまでも無い質問をあえてゲンドウにぶつけた。ゲンドウは一瞬、めがねの向こうでリツコに何故それを聞くという目をしていたがそれを態度に示すことはなかった。

重々しく口を開く。

「・・・博士の認識を聞こう」

リツコは一瞬目を閉じる。

今は感傷に浸っている暇は無いわ・・・

再び目を開けると淀みなくリツコは答える。

「はい・・・パイロットとコアの組合せを踏まえれば当然に有意な組合せは零号機にシンジ君、初号機にレイ、ということになります・・・」

「その通りだ、博士。それで進め給え」

「はい・・・それでは直ちに準備にかかります」

リツコが司令長官室を辞去しようとしたとき、ゲンドウがリツコの後姿に声をかける。

「それからPhase2の試験を前倒ししたい。そのプランを我々が戻ってくるまでに作っておいて貰いたい」

「Phase2・・・ダミープラグをですか?」

リツコは思わず足を止めてゲンドウと冬月の方に再び向き直った。

「そうだ」

「しかし、司令・・・それはあまりに早過ぎます。第一、現在の指向性コアの方式ではあまりにリスクの方が・・・」

ゲンドウは鋭い眼光を放ってリツコを威嚇した。

「博士。状況が変わったのだ。これは相談ではない。命令だ」

「・・・分かりました」

リツコは司令長官室を後にした。
 




 
幹部専用の会議室で開かれた定例の部長会議を最後にゲンドウと冬月は出かける予定になっていた。会議が終わりゲンドウと冬月を送り出した幹部たちは束の間の開放感に浸っていた。

特にミサトの場合は露骨だった。

「へへへ、行った行ったあ。これで少しは羽根が伸ばせるわね。おっしゃー!今日は久しぶりに繰り出すか!リツコ、付き合うでしょ?」

ミサトは伸びをしながらリツコの横顔を窺う。

「遠慮しておくわ」

「えー!何よそれー。つれないわね」

リツコは大げさにため息を一つ付くと横目でミサトを見た。

「あなたと違ってあたしはやることが山積みなのよ。それよりも明日はシンクロテストなんだから、あなたも行くのなら程ほどにしておきないさいよ」

「ちぇっ!分かってるわよ。まるで継子扱いね。そりゃそうとあんた。明日は予定ではパイロットを入れ替えてのシンクロテストって聞いてたけど本当にやるの?」

「あれは延期にするわ・・・明日は普通の起動試験を行うことにする」

「えっ?そうなの?大丈夫なわけ?それで?」

リツコは眉間に皺を寄せる。

「やはりリスクの方が大き過ぎるわ・・・なにせ初めてのケースですものね。焦りはかえって事を仕損ずる、よ」

「そうなんだ。まっ!やる時は言ってよ。あたしんとこはそれで調整するからさ!」

あなたって人は・・・本当に簡単に言うわね・・・今のコアでパイロットを入れ替えるということがどれ程危険なのか、まるでわかって無いわね・・・それに・・・

リツコはため息を付く。

ましてこの状況でダミープラグを急ぐだなんて・・・正直、とても正気の沙汰とは思えない・・・

「どったの?リツコ?あんた、ちょっと今日は変よ」

「別に・・・一寸疲れているだけよ。でもスケジュール的に2週間以内には実施するからその心算でチルドレンの方は頼んだわよ。それはそうとミサト」

リツコはミサトの方に向き直る。

「ん?何?」

「今日の飲みは一人じゃないでしょ?」

「えっ?誰と?」

「加持君よ・・・」

「か、加持ぃ!?な、何であたしが・・・」

ミサトの顔に焦りの色が浮かぶ。ミサトはリツコが行かないなら加持に連絡を取って飲みに誘うことをまさに考えているところだった。そこにいきなりリツコから加持の名前をぶつけられて驚いたのだ。

嘘が下手ね・・・あなたは・・・

リツコはミサトの表情の変化を楽しんでいるようだった。

「ふっどうやら図星のようね。加持君に会うならよろしく伝えておいてね。それから・・・」

リツコはやや真剣な眼差しでミサトを真正面から見た。

フランクフルター・ツァイトゥンクも程ほどにした方が身の為よって伝えておいて」

「フランクフルトすいとんぐぅ?何それ?ソーセージの一種?」

ミサトはリツコからいきなり舌を噛みそうな言葉を投げかけられて当惑していた。それだけ言い終わるとリツコは会議資料を両手で整えて席を立った。

「くれぐれも頼んだわよ。フランクフルター・ツァイトゥンクよ」

リツコはミサトを顧みることなく自分の研究室に向かっていった。
 



 
ミサトと加持は第二東京市の新霞ヶ関を一望するエンペラーホテルの最上階にあるラウンジ「Top of Imperial」のバーカウンターで飲んでいた。

加持はさっきからスコッチウィスキーのボウモア12年をストレートで煽っている。ミサトは空のコップをバーテンに突き出してボンベイサファイアのジンライムをオーダーする。

二人の間にはおつまみのチーズの盛り合わせとパルマ産のプロシュートの皿が置いてある。
二人は時折、笑い声を上げて愉快に飲んでいる。

ミサトは背中の開いた水色のタイトなワンピースを着ていた。

「やあね。あんたも。全然昔と変わってないわね。相変わらずのバカね!まさかあたしが第三支部から帰った後でそんな事があったなんて全っ然知らなかったわ」

加持は麻のズボンと白いコットンシャツ、それに水色のジャケットを羽織っている。片手にはボウモアの入った8オンスのタンブラーを持っていた。

「流石にあの時は俺もちょっとばかり焦ったな。なんせパンツ一枚でオートロックの部屋から締め出されたんだからな。まして怪しい東洋人がさ。撃たれても仕方が無い状況だったからな、ははは」

「ひっひっひ。おなかが痛いわ。アー苦しい…」

ミサトは涙を拭いながら加持の背中をばんばん叩く。

「おいおい。葛城。貴重な12年がこぼれるじゃないか」

加持はそういうとタンブラーの縁についたスコッチのしずくを舐める。そしてさっきからミサトに話しているドイツ勤務時代に出張先のホテルでドイツ美人に言い寄られた話を再開する。

「しかしまあ、折角のお申し出ではあったが丁寧にお断りした途端だからな。今考えれば一寸惜しいことをしたような気もするが・・・まあ俺はこう見えてもRitter(騎士)だって言ったら激しく罵られたよ。参った、参った。ふふふ」

加持は笑いながらボウモアを勢いよく煽る。そして一瞬だけ遠い目をした。

そう言えばその時もこいつを飲んでいたな・・・

「全くなーにがRitterよ!60股だったっけ?最高記録は。女好きのあんたがどういう風の吹き回しかしらねぇ・・・あーあ可笑しい」

ミサトはバッグからよくプレスの利いたハンカチを取り出して涙を拭く。加持はミサトの所作を眺めていたが視線をミサトのハンカチに落した。

「おお!葛城。アイロンがけがやけにうまくなったじゃないか」

ミサトは加持の方を見ると少しバツの悪そうな顔をするが目は笑っていた。

「ざーんねんでした。これはシンちゃんがかけてくれたものでした!」

「シンジ君が?・・・そうかそういうことか。シンジ君もそれじゃあ苦労が耐えないだろうな」

「何よ。それ?どういう意味よ」

ミサトが口を尖らす。

「葛城様とお姫様の二人と同居してるんだ。そりゃあアイロンがけに限らず家事全般の切り盛りをさせられてるんだろうなってことさ。ははは」

加持は愉快そうに笑い声を上げる。

「あら?別に一方的に押し付けてなんかいないわよ!言っておくけどちゃんと分担表だって作ってあるんだから。でもシンちゃんってさあ、物凄く神経質じゃない?あたしやアスカがやるよりは格段に仕上がりがいいのよ。何かにつけてね。特にアイロンがけなんて圧巻よ。形状記憶のシャツにまでノリをつけてアイロンするのよ?凄くない?これって!」

「確かに凄いな。そこまでやるのか。ふふふ」

加持はタンブラーを置くと横にあるチェイサーに持ち替えて一口飲む。

「そうよ。アスカなんて分担表に関係なく学校に着て行くブラウスは必ずシンちゃんにアイロン掛けしてもらってるのよ。よっぽど気に入ったのね。そりゃそうよね。下手なクリーニング屋より上手だもん」

チェイサーをカウンターに置こうとした加持の手が一瞬止まった。

「お姫様が?自分のブラウスのプレスをか?」

加持は心底驚いた様な顔をして思わずミサトの方に向き直る。

「そうよ。始めの頃は家事を全部自分でしてたんだけどね。そういやこの頃は結構何かにつけてシンちゃん任せねぇ・・・」

ミサトは喋り終わるとプロシュートを一枚指で摘むと口の中にそのまま放り込む。

「そうか・・・」

加持にはその話が信じられなかった。

加持が知るドイツ時代のアスカは自分が身に着けるものを他人任せにすることはただの一度としてなかった。ましてや同性ではなく男性に触られるのを極度に嫌っていたのだ。加持ですらアスカの衣類に一枚たりとも触れたことは無かった。

変われば変わるもんだな・・・それにしてもどういうつもりであの二人を同居させ続ける心算なんだ・・・ファラオは・・・

ユニゾンの特訓の為に共同生活を提案したのは他ならぬ加持だった。もちろん、使徒撃滅の為だがもう一つの狙いがあったのも事実だった。その答えは碇ゲンドウの中にあるもの、だった。

ツェッペリン・・・

加持はキョウコ・ツェッペリンの死の真相を追っていた。

そこに加持の第六感が知れば知るほど人間の生命そのものに食い込んでいく「エヴァ基本理論」の真理があると睨んでいた。

所詮は自分以外の全てはトカゲの尻尾って言うわけですか・・・こいつは恐れ入った・・・

加持は思わず苦笑いを浮かべていた。

ミサトは加持の内省に構わずあらかたおつまみを平らげていた。そして加持に話しかけてきた。

「それはそうとしてさあ。折角の司令の留守なのにさあ、あの石頭、仕事があるって言うのよ。付き合い悪いわ、ホント!この前の夏祭りも全然協力してくんないしさあ!」

ミサトは未だに夏祭りのことを根に持っているようだった。グラスの縁に付いていたライムを片手でぎゅっと搾るとミサトはそのままグラスの中に放り込む。

加持がミサトの肩に手を置く。

「まあまあ、そう言うなって。リッちゃんもさ、司令にこき使われて大変なんだよ」

「そうかしら?結構、楽しんでんじゃないの?」

ミサトは正面を向いたままグラスを煽る。

「あ、そういやリツコからあんたにもう一つ伝言があったんだったわ」

ミサトの隣で同じようにグラスを煽っていた加持がミサトの横顔を見る。

「伝言?俺にか?よろしく伝えろってのはさっき食事のときに聞いたぞ」

「違うわよ。別の伝言があるのよ。あんたに会ったらフランクフルト…なんだったけ、ツイトングかな。何かソーセージの名前みたいなことを言ってたけど…」

ミサトを見ていた加持の目つきが鋭くなる。

「フランクフルター・ツァイトゥンクじゃないのか?」

「ああ、そうそう!それよ!何かさあ、程ほどにしといた方が身の為だって言ってたわよ。なにそのフランク何とかってのは?」

横目でミサトが加持の顔を見る。ミサトの目から笑いは消えている。加持は黙ってボウモアの入ったタンブラーを掌で回していたがやがてミサトに向き直って口を開いた。

「フランクフルター・ツァイトゥンク。今は無いが第二次世界大戦の頃にドイツのフランクフルトを中心に発行されていた新聞の名前だ」

「ふーん。で、ドイツの新聞にどうしてあんたが関係あるわけ?」

「参ったな・・・正直なところ全然心当たりがないが・・・強いて言えば、新聞記者みたいにあまりしつこく嗅ぎ回るなってことかな」

ミサトは空のグラスをテーブルに置き加持の顔を見る。

「どうしてリツコがそんなことをあんたに言うのかしらね」

「いや、これはリッちゃんからの伝言じゃないな」

「リツコじゃなかったら誰だっての?」

「碇司令だろ?」

ゲンドウの名前が出たことでミサトの顔が強張っていく。

やれやれ・・・折角部屋を予約しておいたんだが今日は大人しく帰るかな・・・

加持はミサトに片目でウィンクするとバーテンダーに手を上げて合図した。

「Checkを頼む」




 
Ep#02_(4) 完 / つづく



 

(改定履歴)
29th April, 2009 / 誤字修正
02nd July, 2009 / 改行修正
28th May, 2010 / 「あらすじ」のフォント色を変更
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