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新世紀エヴァンゲリオンの二次創作物、小説「Ihr Identität」を掲載するサイトです。初めての方は「このサイトについて」をご参照下さい。小説をご覧になりたい方はカテゴリーからEpisode#を選んで下さい。この物語はフィクションであり登場する人名、地名、団体名等は特に断りが無い限り全て架空のものです。尚、本ホームページに使用した「新世紀エヴァンゲリオン」の画像は(株)ガイナックスのガイドラインに沿って掲載しています。配布や転載は禁止されています。
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第2部 Meine Göttin ぼくのアスカたん


(あらすじ)

お弁当を別々に持って行く様になって何となく気まずいアスカとシンジ。つまらなかった学校が一層つまらなく感じるアスカに阿武隈が依頼の絵を持ってきた。すっかり絵を気に入ったアスカは阿武隈にお礼をすると言い出す。
「遠慮せずに言っていいわよ。何でもするわ」
「なっ何でもですか!?」
遠巻きに二人の様子を偶然に見ていたシンジには二人がキスしている様に見えた。


※ インスピレーションを与えてもらった 動画 の一部(御礼申し上げます)

(本文)


阿武隈に絵を依頼して3日後。

アスカは登校するといつもの様に自分の机に座って頬杖をついていた。

あーあ…今日もまたつまらない一日が始まるのね…

「アスカ」

ヒカリが教室の扉のところからアスカを呼ぶ。声の方向を見るとヒカリと廊下に阿武隈が立っているのが見えた。

「あっ」

アスカは立ち上がるとヒカリと阿武隈のところに駆け寄った。

「アスカ、阿武隈先輩が呼んでるわよ」

「ありがとう!ヒカリ」

アスカはヒカリから視線を阿武隈に向ける。

「おはよう!」

「おっおはようございます。そっ惣流さん」

阿武隈は年上にも拘らずおどおどとアスカをさん付けで呼んだ。

「アスカでいいわよ、阿武隈」

アスカは年下にも拘らずどうどうと阿武隈を呼び捨てで呼んだ。

「は、はい・・・」

「で?絵が出来たのね?」

阿武隈はもじもじしていたがやがて無言で頷いた。

「本当!どこにあるの?」

アスカの顔がパッと明るくなる。

「え、えっとちょっと大きいので教室におっ置いています。おっお昼休憩に・・・」

阿武隈は途中で声に詰まってしまった。女子生徒と話すことは殆ど無いのか、顔が真っ赤になっている。

「わかったわ。じゃあ、お昼休憩になったらアタシがアンタんとこに行くわ。教室で待ってて」

「は、はい」

声が裏返りかける。

「ありがとう!」

アスカは阿武隈の右手を取って両手で握手した。阿武隈はほっそりとしたアスカの白い手に自分の右手が包み込まれているのを感じて戸惑っているような様子だった。

アスカの手はひんやりしていた。
 




お昼休憩を告げるチャイムがなるとアスカは赤い巾着袋を片手にヒカリの席に走っていく。

「ゴメン、ヒカリ。アタシはこれから阿武隈のところに行って受け取ってくるから先に食べといて!」

ヒカリもにっこり微笑む。

「分かったわ。あたしはいつものところにいるわ」

「OK!」

アスカは勢いよく教室を出ていく。シンジはアスカの後姿を自分の席から見送っていた。

阿武隈って誰のことだろ・・・何を受け取るのかな・・・

3年A組の教室でも昼休憩の喧騒が始まっていた。アスカは3階に駆け上がり廊下をずんずん進んで3年A組の教室を目指した。

教室の前まで来ると丁度教室から出て行こうとする女子生徒を見つけ出口のところで呼び止める。

「あの、阿武隈に会いに来たんだけどいる?」

女子生徒はアスカの姿をジロジロと見ていた。阿武隈を呼べというアスカの言葉に驚いているようだった。

「えっと・・・ホントに阿武隈を呼べばいいの?」

「うん、お願い」

アスカはにっこり微笑む。女子生徒は怪訝そうな顔をしていたが直ぐに教室に向き直って大音声を上げた。

「ブタクマ!2年生の女の子が呼んでるよ!」

アスカはびっくりした。

ぶっ・・・ブタクマ!?ブタクマってあだ名かしら・・・

すると教室にいた全員が出口にいるアスカの方を見る。そして一斉に騒ぎ始めた。アスカは学校でも美人で通っていて特に学年が高い男子生徒の間ではアイドル的な存在だった。

阿武隈は名前を呼ばれてビクッとし、そしてややあってアスカの方を見る。

「阿武隈!ここよ」

アスカは阿武隈に手を振る。その声に弾かれて阿武隈はまごつきながらもいそいそと大きな紙袋を机の横から手に取り更にセカンドバッグを持ってアスカの方にやってきた。

その間、教室内の男子生徒から阿武隈は囃したてられ耳まで真っ赤にしながらぽてぽてと運動があまり出来なさそうな歩き方で近づいてくる。

アスカと阿武隈は始め廊下の端の方で向かい合う様に立っていたが、3年A組の教室の廊下側の窓と扉は黒尽くめの人だかりが出来、廊下にも隣のB組のギャラリーが合流して人でごった返す始末だった。

ちっ!

アスカは心の中で舌打ちをする。

ったく、しょうがないわね。これじゃ目だって仕方が無いわ・・・

アスカは自分の絵を大勢に見られたくなかったため場所を変えることにした。

「阿武隈!行くわよ」

アスカは阿武隈の手を握るとずかずかと階段に向かって歩き始めた。男子生徒の間から悲鳴に近いうめき声が聞こえてくる。阿武隈は半ば引きずられる様にアスカについていく。

「何でブタクマのやつが惣流と!」

「信じられないわ、ブタクマがあんな子と・・・」

「許さん!」

「ぜってー殺す!」

男子生徒に限らず女子生徒たちの中からもぞろぞろと後を着いていく者が出始めた。アスカは阿武隈をつれて体育館とテニスコートの間にある桜並木に向かっていた。この辺り一帯にもベンチが幾つかあることを知っていた。

「よーし。ここまで来ればいいわね」

アスカはようやく阿武隈の手を放す。阿武隈はまだ顔を真っ赤にしていた。アスカはベンチに先に腰掛ける。

「阿武隈、アンタも座れば?」

「は、はい…」

二人は並んでベンチに座る。

「じゃあ、早速見せて頂戴」

阿武隈はこくりと頷くとセカンドバッグからおもむろにスチール製の額縁に入ったイラストをアスカに手渡した。

「すてき!」

アスカは目を輝かせる。

それは赤い色の海が広がる不思議な風景だった・・・

海岸にある岩に腰掛けたアスカが背中を向けて微笑をたたえてこちらを見ているという構図のイラストで、赤い海から白い柱がところどころに立っておりその対比も見事だった。絵の中のアスカはギリシャ神話の女神の様なゆったりとした大きく背中が開いた非常に薄いピンク色の服を着ている。

エアブラシを駆使したその絵は幻想的で荘厳ですらあった。A3サイズのパネルに描かれており、かなりの労作であることが窺える。

そしてタイトルには「Meine Göttin (私の女神)」と書かれてあった。

阿武隈は心配そうにアスカの様子を窺っていた。

「阿武隈!最高だわ!ありがとう!」

アスカは感動していた。

阿武隈もようやく緊張がほぐれてきたのか明るい表情していた。

「びっビッテシェーン」

アスカはびっくりした。

「アンタ、ドイツ語が話せるの?」

「そっそんなに話せませんけど、挨拶とか簡単な事なら少し・・・」

「驚いたわ・・・そういえばタイトルもきちんとドイツ語でカリグラフしてあるし・・・」

「両親と5歳までドイツのデュッセルドルフに住んでいました」

「あっそう。アタシはハンブルグで生まれたの。すぐに親の都合でベルリンに引っ越したけどね。アタシ、ついこの前までベルリンにいたけどゲッティンゲンにもいたことがあるのよ。ハンブルグも日本企業は多いわよ。今でも日本人はたくさん住んでるわ。」

二人はドイツの話で盛り上がっていた。

その様子を付いてきた野次馬が遠巻きにちらちら窺っている。

そして同じ頃、シンジは浮かない顔で教室から何気なく校庭を眺めていた。そしてテニスコート、体育館と視線を移しているとベンチに座ったアスカと一人の男子生徒が親しそうに話しているのが見に留まる。

あれ?アスカ?誰と話しているんだろう・・・






「そうだわ!阿武隈。こんな素敵な絵を貰ったんだもの。何かお礼するわ」

「えっ!おっお礼なんて・・・別に・・・そんな・・・」

「遠慮せずに言っていいわよ。何でもするわ」

「なっ何でもですか!?」

「ちょ、ちょっと!何でそこだけやけに反応するのよ?何でもって言ってもあくまでジョーシキの範囲内よ。だからヌードモデルとか、そんなのは嫌よ!」

やっぱり男の子ってバカでスケベね・・・迂闊なこと言えないんだから・・・

「ぎくっ」

「それからコスプレみたいなのも絶対嫌!」

「がーん」

どんどんお願いしたいものがなくなっちゃいます、アスカたん・・・
OTL

阿武隈はぶつぶつ小さい声で独り言を言っていた。

「えっ?アンタ今なんていったの?」

「いっ、いや・・・その・・・」

アスカは独り言と思わず阿武隈が何かリクエストしていると誤解した。

「何?」

「あっあの・・・」

女の子との会話に慣れていない阿武隈は問い詰められてプレッシャーを感じる。余計にうまく喋れなくなっていく。

「ごにょごにょ言ってたら聞こえないじゃないの!人に聞かれたくない話なの?」

アスカは要領を得ない阿武隈に少しイライラして来た。そのイライラせいでアスカはどんどん阿武隈の方に近づいていく。シンジの場所からはアスカが阿武隈の方にじわじわと接近しているように見えた。

何やってんだろう・・・アスカ・・・

「聞かれたくない話なら耳打ちして!アタシ人を待たしてるんだから!早く!」

アスカは阿武隈に顔を近づけた。顔を阿武隈の口もとに持っていく。単に耳を近づけているだけだが角度によっては二人の顔が重なっているようにも見えた。

遠巻きに見ていた野次馬連中もこの光景にびっくりしていた。

そして窓から見ていたシンジからも二人の顔が重なっているように見えていた。

「あれって・・・まさか・・・キス・・・」

シンジは思わず身を乗り出していた。





シンジはアスカに対してこれまで苦手意識しか持っていなかった。

いつも怒られてバカにされるし・・・

ただ思春期の少年としてアスカのことが全く気にならないことはない。何と言ってもあの容姿だ。意識しない方がおかしい。

アスカに出会って間もない頃、特にユニゾン特訓の時にはアスカの一挙手一投足になぜが必要以上にどきどきした。隣で寝ているアスカに思わずキスをしそうにもなった。引っ込み思案のシンジにしてみればあんな衝動に駆られるは全く初めてのことだった。

だが、それは恋愛感情というよりどちらかというと「憧れ」という感じに近かった。シンジにとってアスカはどこか遠い存在に思えた。
それが少しずつ共同生活を通してお互いの距離が狭まってきているのも事実だった。

当初は荒っぽいアスカの言動に晒されるとシンジはどう接していいのか頭が真っ白になって分からなくなるのが常で、気が付けばひたすら腫れ物に触れるように接するようになっていた。それが自己防衛にも繋がっていたからだが、同時に卑屈な自分に嫌気が差してもいた。

まだ取りとめが無くて神秘的ですらあるレイの方がシンジはプレッシャーが無い分だけ自然に接することが出来た。

綾波の胸を触ったのは不可抗力だし・・・

ところが第8使徒戦あたりを境にしてアスカのシンジに対する態度は徐々に変わってきていた。それまでのアスカはシンジに対してガードが極めて高く、敵愾心すら感じさせることが多かった。それが最近ではシンジに気安くなってきていた。

一歩のシンジもそれに呼応する形でアスカに例え責められても繋がりを持とうとする様になってきていた。シンジは未だにアスカの微笑とコップに付いたリップグロスのことを時折思い出していた。

しかし・・・

それだけの事だった。

二人の間には特に何かがあるわけではない。使徒を倒す戦友、ルームシェアの同居人、ネルフ嘱託職員の同僚、2年A組のクラスメート・・・色々と二人の関係を形容することは出来るが、絆と呼べるものは淡いものでしかない。

だから・・・
アスカが何をしようと僕には・・・僕には関係の無い話なのに・・・

シンジ自身、自分の想いというものがよく分からなかった。人には決して言えない様な恥ずかしい想像をする以上の事をアスカに対してシンジは今まで考えたことがなかった。
 
この気持ちは一体何だろう・・・何か・・・腹が立つ・・・





阿武隈はアスカの顔が近くにあることで余計に緊張する。アスカの髪からシャンプーのいい香りがしてきた。今までに触れたことの無い女の子の匂いだった。

思わず鼻息が荒くなる。阿武隈の鼻息がアスカの耳にかかった。

「・・・やん・・・」

アスカが思わず首を振って阿武隈から離れる。

阿武隈は自分が鼻血を出していないかと思わず手を鼻に当てた。

アスカたん、刺激が強すぎます・・・

アスカは右の耳を手で押さえて阿武隈をキッと睨みつける。

「ちょっと!なにすんのよ!耳に息をかけるのはやめてよ!アタシ耳はすっごく弱いんだから!」

アスカは阿武隈のわき腹に稲妻の様な鋭いエルボを入れる。

「ぶほっ!」

アスカたん、鋭すぎます・・・

「もう!アンタはっきりしないわね!イライラするわ!じゃあ、アタシが勝手にお礼の内容を決めてあげる!」

アスカはベンチからすくっと立ち上がると阿武隈をビシッと指差す。

「今度の日曜日、アンタとデートしてあげるっていうのはどう?」

「・・・でっデートですか!?」

阿武隈はびっくりした様な顔をした。

「そうよ。それとも何?アンタ、なんか他に予定でもあるわけ?」

アスカは意地悪そうな笑みを浮かべて阿武隈の様子を伺う。

「なっ何にも無いです・・・」

「そうよね。そうに決まってるわよね。じゃあ決まりね!」

アスカは軽くウィンクした。

「アンタ書くもの持ってる?」

「はっはい」

阿武隈は胸ポケットからメモ帳とシャーペンを取り出す。

・・・このシャーペン、押しにくいわね・・・

シャーペンのノックする部分にソフトビニール製の細身の青いロボットが付いている。しかも頭の部分が親指の腹に刺さって痛い。

何よこれ!ファーストの零号機に似てるじゃないの!何かムカついてきたわ・・・

アスカはメモ帳にさらさらと書いて阿武隈にメモを渡す。

「はい。こっちがアタシの携帯番号(0x0-xxxx-xxxx)でこっちがメールアドレス(asuka1204@easymobile.ne.jp)よ。あんたのもこれに書いてよ」

アスカはメモ帳とシャーペンを阿武隈に返しつつ顔をわざと睨む。

「いいこと?決して悪用すんじゃないわよ、アンタ。これを学校の男子で教えたのはアンタだけなんだからね!すぐ足は付くわよ!」

「ひっ!はい!決して致しません!」

「Gut(独 英語のGoodと同意)。それじゃ場所とか時間とか決まったらどっちでも良いから連絡してね。じゃあアタシそろそろ行くわ。絵、ありがとね。Tschüss!」

アスカはベンチに阿武隈を置いて巾着袋と絵の入った紙袋をもってすたすたと歩いていく。テニスコートを横切ってポプラ並木の方に向かうとき、もう一度アスカは阿武隈の方を見てにっこり笑うと手を振ってきた。

「アスカたんとデート・・・」

阿武隈は自分の背中に油蝉が止まって鳴き始めたことにも気が付かなかった。





Ep#03_(2) 完 / つづく

 
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