新世紀エヴァンゲリオンの二次創作物、小説「Ihr Identität」を掲載するサイトです。初めての方は「このサイトについて」をご参照下さい。小説をご覧になりたい方はカテゴリーからEpisode#を選んで下さい。この物語はフィクションであり登場する人名、地名、団体名等は特に断りが無い限り全て架空のものです。尚、本ホームページに使用した「新世紀エヴァンゲリオン」の画像は(株)ガイナックスのガイドラインに沿って掲載しています。配布や転載は禁止されています。
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第2部 A impulse to... レイ、心の扉…
(あらすじ)
アスカとレイはネルフ本部のパイロット更衣室で共に着替えていた。アスカは自分の真価をある意味で問われているシンクロテストに不安な気持ちのまま臨むことに躊躇いを感じていた。勝負と位置づけている筈なのに…力が出ないことにイライラを募らせる。
「こんなもの!」
アスカは身に付けていたピンク色のロケットを引き千切ると床に叩きつけた。
その残骸を通りかかったレイが手に取る。そのロケットの中にレイが見たものは…
(あらすじ)
アスカとレイはネルフ本部のパイロット更衣室で共に着替えていた。アスカは自分の真価をある意味で問われているシンクロテストに不安な気持ちのまま臨むことに躊躇いを感じていた。勝負と位置づけている筈なのに…力が出ないことにイライラを募らせる。
「こんなもの!」
アスカは身に付けていたピンク色のロケットを引き千切ると床に叩きつけた。
その残骸を通りかかったレイが手に取る。そのロケットの中にレイが見たものは…
(本文)
酷い顔…これが…アタシ?
覇気が無くどんよりとした雰囲気を漂わせている。
さすがにクマが出来る様な年齢ではなかったが思いつめた表情をしていた。アスカの表情が険しくなっていく。
しっかりしなさいよ!アスカ!アナタはエリートなの!誰にも負けられないのよ!
アスカは鏡の前の自分に言い聞かせる様にじっと鏡を見ていた。両手で髪をたくし上げるとヘッドセットを付け直す。
その時、アスカの左ひじがロケットに当たって思わずハッとした様な表情をする。
何よ…こんなもの…いつもの習慣でつい…そうか…こんなものをいつまでも付けているから調子が出ないんだ…
このロケットは第8使徒戦が終わった頃にアスカがわざわざ第二東京市の百貨店まで買いに行ったものだった。
アスカはいきなりロケットを右手でぐっと掴む。
「こんなもの!」
ネックレスを荒々しく引き千切ると更衣室の床に叩き付けた。
そして自分の足元に転がってきたロケットを思いっきり足で踏みつける。
何度も何度も…
「バカ!バカ!バカ!バカ…」
乱れた呼吸を整えるとアスカは下着姿のままでガーメントストッカーに向かって行った。プラグスーツをガーメントストッカーに入れておくと全自動でクリーニングして常に清浄な状態を維持することが出来た。
レイやアスカは男子更衣室に入る事がないので比べ様がないが同じ様な配置だと想像していた。Evaのパイロットは基本的にネルフから支給されるプラグスーツを基本的にこのガーメントストッカーの中に入れてそれぞれが管理していた。勿論、このストッカーの運用はMAGIによって制御されている。
プラグスーツをパイロットが外に持ち出す事も勿論可能だが3日を越えても返却しない場合はMAGIから警告が関係者全員に通知されるシステムになっている。
プラグスーツが掛けてあるガーメントストッカーはレイと共用で自分のロッカーから2メートルも離れていない位置にある。
なんかやけに遠くに感じるわ…もう!もうちょっと設備の配置考えたらどうなのよ!イラつく!
アスカはレイの予備のプラグスーツを端に追いやるとずらっと並んでいる赤いプラグスーツの列に適当に手を伸ばす。
今まで気にしてなかったけど…よく考えたら…何でアタシだけこんなにスーツがあるのかしら…
予備を含めて3着が一人に支給されているがアスカだけには2仕様、都合6着が支給されていた。
アスカは赤いプラグスーツを抱えたままロッカーの前に設置されているベンチに腰掛ける。
アタシは弐号機を誰にも渡さないってずっと思っていた…苦しい選抜試験にも耐えて選ばれたのに…何のためにアタシは拘ってたのかしら…認められたかったのよ…アタシの事だけを見て欲しかったのよ…加持さんや…ママ…
「うぐ…」
いきなり鋭い痛みが頭に走る。アスカは思わず頭を抱えた。
だ、駄目だ…今考えたら…これ以上、今はコンディションを悪くするわけには…行かない…
この頭痛…ただの偏頭痛じゃ…ない…やっぱりアタシの思い出そうとする衝動と連動している…積極的に記憶を探ろうとすると必ず起こる…
アスカは途端に胸が締め付けられる様な息苦しさを感じる。
アタシの頭…誰かに…
「恥かしい…」
痛みと恥辱に体を丸めて必死に耐える。耐えながらふとアスカは足元のプラグスーツのブーツに目を留める。小型ダガーナイフの柄が見えた。
いけない…アタシったら…間違って戦闘用のプラグスーツを持ってきちゃった…
アスカだけ2種類のプラグスーツを持っていた。一つは他のチルドレンと全く同じものでネルフ内ではスタンダードと呼称されていた。
そしてもう一つ…
プロダクションタイプ弐号機の実戦配備に合わせて開発されていたミリタリープラグスーツ(MPS)だった。
このプラグスーツはブーツの部分に小型ダガーナイフが装着され、そしてピストルのホルスターや薬莢入れなど各種の装備がワンタッチで装着できるようにアタッチメントがそこかしこについていた。
アスカはこのMPSをこれまでの使徒戦でも身に着けたことはなかった。このMPSの存在を知っているのは同じガーメントストッカーを使っているレイだけだ。
アスカは頭痛に耐え、孤独に耐え、そして屈辱にも必死に耐えていたが、じっとナイフの柄を凝視している内にふとある衝動が芽生えるのを自覚していた。
何のためにアタシは生きてるんだろう…誰も見てくれない…帰る場所もない…しかも自分が誰かも分からないのに…どうして苦しんで無様にもがいて…どうしてそこまでして…生きなければ…どうせアタシがいなくなったって誰も…一層のことコイツで…
アスカの耳に先日聞いた加持の声が蘇る。
とにかく…生きるんだ…
「加持さん…アタシ…どうすれば…」
アスカがうずくまっているとその前を既に着替え終わったレイが通りかかる。
アスカの呼吸が乱れていた。
只ならぬその雰囲気にさすがのレイも思わず足を止めた。しかし、レイにはアスカを気遣う適当な言葉が思い浮かばなかった。
躊躇いがちに声をかけた。
「セカンド…あなた…着替えないの?」
レイにとっては精一杯の気持ちの表現だった。しかし、時として言葉は不便だった。アスカの体がピクッと動く。
サイテー…この女にだけは…この女にだけは…アタシの弱みを握られて溜まるか…
「…何でもないわよ…体を動かしたくて…うずうずしてるのよ!ちょっと…久し振りだからさ…」
レイは暫くアスカを見下ろしていたがやがて諦めた様にアスカの前を横切って通り過ぎようとした。
こんな時…どうすればいいのか…やっぱりわたしには…何か言ってあげたいけど…
アスカは顔を上げると不意にレイの後ろ姿に鋭く言葉を投げてきた。
「ちょっと!これだけは言っておくけどさ!レイ…あっ!」
レイはハッとなって思わず振り返ってアスカの方を見る。
アスカは自分でも思わず口走った言葉に驚いていた。慌てて両手で自分の口を押さえる。
「あ…い、いや、その…ちょっと…いっつ!」
アスカは思わずこめかみを押さえる。まださっきの頭痛の余波も少し残っていた。正しい名前を呼んでおきながら言い間違いだった、と言うのはあまりにもおかしかった。
アスカは咄嗟に次の言葉が出てこない。レイの視線を避ける様に体をよじった。
アタシ…頭が混乱してる…何よこれ!情けない…情けない…こんなのアタシじゃない!
アスカの顔は真っ青だった。
でも…後悔だけはしたくない…
小さい声で呟き始める。
「昨日のプリントのお礼、アンタに一応言っておくわ…ありがと…それと…」
レイはアスカの横顔をじっと見ていた。レイにしては珍しく驚いた様な顔をしていた。
「この前…アンタに人形みたいって言ったこと…謝る…」
「セカンド…」
アタシは下手をするとこれで最後になるかもしれない…あの時言っとけばよかったと後から後悔するような面倒な生き方だけはしたくない…それだけよ…
アンタにこれ以上、こんな屈辱的なアタシを見られて堪るか!
アスカはレイを再び睨みつける。
「話はそれだけよ!ちょっと…着替えの邪魔よ、アンタ!そんなとこに突っ立てないでさっさと行けば?」
レイはまだアスカの顔を見つめたままだった。アスカはレイの目を見ると心を覗かれそうな思いに駆られて不快感しかこみ上げてこなかった。
「何よ!何か文句でもあるわけ?早くあっちに行きなさいよ!あーもう!イラつくわ!アンタがどかないんならアタシが向こうに行くわ!」
アスカは戦闘仕様プラグスーツを抱えたままよろめきながらレイから離れていく。そしてガーメントストッカーの中に荒々しくねじ込むとスタンダードスーツを取り出して更衣室の奥に向かって行った。
アスカの姿が見えなくなるまでじっとその様子を見ていたレイは独り言のように呟いた。
「セカンド…弐号機パイロット…惣流・アスカ・ラングレー…」
レイはアスカがさっきまで座っていたベンチの方にふと目をやった。薄いピンクの小さなロケットが落ちているのを見つける。踏み潰した様に形が歪んでいた。
そして引き千切られたシルバーのネックレスの破片も無残にあちこちに散らばっているのが見えた。
レイはロケットをそっと拾い上げると丁寧な手つきでそれを開けた。
レイの目が思わず大きくなる。そこには優しく微笑んだシンジの写真が入っていた。
「碇…くん…」
ロケットは拉げていた。
レイが戸惑っていると手のひらの中でロケットと写真が分離してしまった。写真の裏側には日付が小さく書いてあった。
Der Geliebte / der Berg Asama / 26.Juli, 2015
レイもその日付はよく覚えていた。
第8使徒戦が終わった後でミサトたちと浅間山の温泉に1泊旅行をした日だった。帰り際にミサト、レイ、アスカ、シンジは加持に旅館の前で写真を撮ってもらったのだ。
ロケットの中のシンジはその時の写真の切り抜きだった。
レイも自分の部屋のあちこち錆びた冷蔵庫に同じ写真をマグネットで止めていたからよく覚えていた。
「セカンド…あなた…どうして…こんな事を…」
レイとアスカは二人でパイロット更衣室にいた。
アスカは制服とブラウスを脱いでハンガーにかける。アスカは薄いピンクの下着姿になる。首にシルバーの細いチェーンのネックレスを付けていた。小さなロケット(locket)だった。
昨日の「当番」の時と比べて明らかに着替える動作が緩慢なのが自分でも分かった。
何か…だるいわ…それに…面倒臭い…
「はあ…」
ため息を一つつく。そしてふとロッカーに備え付けられている鏡に映る自分の顔を見る。
アスカは制服とブラウスを脱いでハンガーにかける。アスカは薄いピンクの下着姿になる。首にシルバーの細いチェーンのネックレスを付けていた。小さなロケット(locket)だった。
昨日の「当番」の時と比べて明らかに着替える動作が緩慢なのが自分でも分かった。
何か…だるいわ…それに…面倒臭い…
「はあ…」
ため息を一つつく。そしてふとロッカーに備え付けられている鏡に映る自分の顔を見る。
酷い顔…これが…アタシ?
覇気が無くどんよりとした雰囲気を漂わせている。
さすがにクマが出来る様な年齢ではなかったが思いつめた表情をしていた。アスカの表情が険しくなっていく。
しっかりしなさいよ!アスカ!アナタはエリートなの!誰にも負けられないのよ!
アスカは鏡の前の自分に言い聞かせる様にじっと鏡を見ていた。両手で髪をたくし上げるとヘッドセットを付け直す。
その時、アスカの左ひじがロケットに当たって思わずハッとした様な表情をする。
何よ…こんなもの…いつもの習慣でつい…そうか…こんなものをいつまでも付けているから調子が出ないんだ…
このロケットは第8使徒戦が終わった頃にアスカがわざわざ第二東京市の百貨店まで買いに行ったものだった。
アスカはいきなりロケットを右手でぐっと掴む。
「こんなもの!」
ネックレスを荒々しく引き千切ると更衣室の床に叩き付けた。
そして自分の足元に転がってきたロケットを思いっきり足で踏みつける。
何度も何度も…
「バカ!バカ!バカ!バカ…」
乱れた呼吸を整えるとアスカは下着姿のままでガーメントストッカーに向かって行った。プラグスーツをガーメントストッカーに入れておくと全自動でクリーニングして常に清浄な状態を維持することが出来た。
レイやアスカは男子更衣室に入る事がないので比べ様がないが同じ様な配置だと想像していた。Evaのパイロットは基本的にネルフから支給されるプラグスーツを基本的にこのガーメントストッカーの中に入れてそれぞれが管理していた。勿論、このストッカーの運用はMAGIによって制御されている。
プラグスーツをパイロットが外に持ち出す事も勿論可能だが3日を越えても返却しない場合はMAGIから警告が関係者全員に通知されるシステムになっている。
プラグスーツが掛けてあるガーメントストッカーはレイと共用で自分のロッカーから2メートルも離れていない位置にある。
なんかやけに遠くに感じるわ…もう!もうちょっと設備の配置考えたらどうなのよ!イラつく!
アスカはレイの予備のプラグスーツを端に追いやるとずらっと並んでいる赤いプラグスーツの列に適当に手を伸ばす。
今まで気にしてなかったけど…よく考えたら…何でアタシだけこんなにスーツがあるのかしら…
予備を含めて3着が一人に支給されているがアスカだけには2仕様、都合6着が支給されていた。
アスカは赤いプラグスーツを抱えたままロッカーの前に設置されているベンチに腰掛ける。
アタシは弐号機を誰にも渡さないってずっと思っていた…苦しい選抜試験にも耐えて選ばれたのに…何のためにアタシは拘ってたのかしら…認められたかったのよ…アタシの事だけを見て欲しかったのよ…加持さんや…ママ…
「うぐ…」
いきなり鋭い痛みが頭に走る。アスカは思わず頭を抱えた。
だ、駄目だ…今考えたら…これ以上、今はコンディションを悪くするわけには…行かない…
この頭痛…ただの偏頭痛じゃ…ない…やっぱりアタシの思い出そうとする衝動と連動している…積極的に記憶を探ろうとすると必ず起こる…
アスカは途端に胸が締め付けられる様な息苦しさを感じる。
アタシの頭…誰かに…
「恥かしい…」
痛みと恥辱に体を丸めて必死に耐える。耐えながらふとアスカは足元のプラグスーツのブーツに目を留める。小型ダガーナイフの柄が見えた。
いけない…アタシったら…間違って戦闘用のプラグスーツを持ってきちゃった…
アスカだけ2種類のプラグスーツを持っていた。一つは他のチルドレンと全く同じものでネルフ内ではスタンダードと呼称されていた。
そしてもう一つ…
プロダクションタイプ弐号機の実戦配備に合わせて開発されていたミリタリープラグスーツ(MPS)だった。
このプラグスーツはブーツの部分に小型ダガーナイフが装着され、そしてピストルのホルスターや薬莢入れなど各種の装備がワンタッチで装着できるようにアタッチメントがそこかしこについていた。
アスカはこのMPSをこれまでの使徒戦でも身に着けたことはなかった。このMPSの存在を知っているのは同じガーメントストッカーを使っているレイだけだ。
アスカは頭痛に耐え、孤独に耐え、そして屈辱にも必死に耐えていたが、じっとナイフの柄を凝視している内にふとある衝動が芽生えるのを自覚していた。
何のためにアタシは生きてるんだろう…誰も見てくれない…帰る場所もない…しかも自分が誰かも分からないのに…どうして苦しんで無様にもがいて…どうしてそこまでして…生きなければ…どうせアタシがいなくなったって誰も…一層のことコイツで…
アスカの耳に先日聞いた加持の声が蘇る。
とにかく…生きるんだ…
「加持さん…アタシ…どうすれば…」
アスカがうずくまっているとその前を既に着替え終わったレイが通りかかる。
アスカの呼吸が乱れていた。
只ならぬその雰囲気にさすがのレイも思わず足を止めた。しかし、レイにはアスカを気遣う適当な言葉が思い浮かばなかった。
躊躇いがちに声をかけた。
「セカンド…あなた…着替えないの?」
レイにとっては精一杯の気持ちの表現だった。しかし、時として言葉は不便だった。アスカの体がピクッと動く。
サイテー…この女にだけは…この女にだけは…アタシの弱みを握られて溜まるか…
「…何でもないわよ…体を動かしたくて…うずうずしてるのよ!ちょっと…久し振りだからさ…」
レイは暫くアスカを見下ろしていたがやがて諦めた様にアスカの前を横切って通り過ぎようとした。
こんな時…どうすればいいのか…やっぱりわたしには…何か言ってあげたいけど…
アスカは顔を上げると不意にレイの後ろ姿に鋭く言葉を投げてきた。
「ちょっと!これだけは言っておくけどさ!レイ…あっ!」
レイはハッとなって思わず振り返ってアスカの方を見る。
アスカは自分でも思わず口走った言葉に驚いていた。慌てて両手で自分の口を押さえる。
「あ…い、いや、その…ちょっと…いっつ!」
アスカは思わずこめかみを押さえる。まださっきの頭痛の余波も少し残っていた。正しい名前を呼んでおきながら言い間違いだった、と言うのはあまりにもおかしかった。
アスカは咄嗟に次の言葉が出てこない。レイの視線を避ける様に体をよじった。
アタシ…頭が混乱してる…何よこれ!情けない…情けない…こんなのアタシじゃない!
アスカの顔は真っ青だった。
でも…後悔だけはしたくない…
小さい声で呟き始める。
「昨日のプリントのお礼、アンタに一応言っておくわ…ありがと…それと…」
レイはアスカの横顔をじっと見ていた。レイにしては珍しく驚いた様な顔をしていた。
「この前…アンタに人形みたいって言ったこと…謝る…」
「セカンド…」
アタシは下手をするとこれで最後になるかもしれない…あの時言っとけばよかったと後から後悔するような面倒な生き方だけはしたくない…それだけよ…
アンタにこれ以上、こんな屈辱的なアタシを見られて堪るか!
アスカはレイを再び睨みつける。
「話はそれだけよ!ちょっと…着替えの邪魔よ、アンタ!そんなとこに突っ立てないでさっさと行けば?」
レイはまだアスカの顔を見つめたままだった。アスカはレイの目を見ると心を覗かれそうな思いに駆られて不快感しかこみ上げてこなかった。
「何よ!何か文句でもあるわけ?早くあっちに行きなさいよ!あーもう!イラつくわ!アンタがどかないんならアタシが向こうに行くわ!」
アスカは戦闘仕様プラグスーツを抱えたままよろめきながらレイから離れていく。そしてガーメントストッカーの中に荒々しくねじ込むとスタンダードスーツを取り出して更衣室の奥に向かって行った。
アスカの姿が見えなくなるまでじっとその様子を見ていたレイは独り言のように呟いた。
「セカンド…弐号機パイロット…惣流・アスカ・ラングレー…」
レイはアスカがさっきまで座っていたベンチの方にふと目をやった。薄いピンクの小さなロケットが落ちているのを見つける。踏み潰した様に形が歪んでいた。
そして引き千切られたシルバーのネックレスの破片も無残にあちこちに散らばっているのが見えた。
レイはロケットをそっと拾い上げると丁寧な手つきでそれを開けた。
レイの目が思わず大きくなる。そこには優しく微笑んだシンジの写真が入っていた。
「碇…くん…」
ロケットは拉げていた。
レイが戸惑っていると手のひらの中でロケットと写真が分離してしまった。写真の裏側には日付が小さく書いてあった。
Der Geliebte / der Berg Asama / 26.Juli, 2015
レイもその日付はよく覚えていた。
第8使徒戦が終わった後でミサトたちと浅間山の温泉に1泊旅行をした日だった。帰り際にミサト、レイ、アスカ、シンジは加持に旅館の前で写真を撮ってもらったのだ。
ロケットの中のシンジはその時の写真の切り抜きだった。
レイも自分の部屋のあちこち錆びた冷蔵庫に同じ写真をマグネットで止めていたからよく覚えていた。
「セカンド…あなた…どうして…こんな事を…」
レイはその場に膝を着くと一つ一つ確かめる様にネックレスの破片を集める。
すると着替え終わったのか、アスカのブーツの靴音が近づいてくるのが聞こえた。
レイはハッとすると咄嗟にプラグスーツのポケットにそれらの品々を静かに仕舞うと足早に更衣室から去って行った。
すると着替え終わったのか、アスカのブーツの靴音が近づいてくるのが聞こえた。
レイはハッとすると咄嗟にプラグスーツのポケットにそれらの品々を静かに仕舞うと足早に更衣室から去って行った。
セカンド…あなた…碇君が…す…き…
Ep#06_(2) 完 / つづく
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