新世紀エヴァンゲリオンの二次創作物、小説「Ihr Identität」を掲載するサイトです。初めての方は「このサイトについて」をご参照下さい。小説をご覧になりたい方はカテゴリーからEpisode#を選んで下さい。この物語はフィクションであり登場する人名、地名、団体名等は特に断りが無い限り全て架空のものです。尚、本ホームページに使用した「新世紀エヴァンゲリオン」の画像は(株)ガイナックスのガイドラインに沿って掲載しています。配布や転載は禁止されています。
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第9部 Under the Ground ターミナルドグマ(Part-3)
(あらすじ)
「ようやくたどり着いたな…ヘブンズドアに…」
加持…事と次第によっちゃあ、ここがあんたの終着点になるわよ…
ミサトは銃口を加持の後頭部に突きつける。
「動かないで!」
加持はゆっくりと手を上げた…
(あらすじ)
「ようやくたどり着いたな…ヘブンズドアに…」
加持…事と次第によっちゃあ、ここがあんたの終着点になるわよ…
ミサトは銃口を加持の後頭部に突きつける。
「動かないで!」
加持はゆっくりと手を上げた…
(本文)
19:20
第3東京市リニア駅の市内環状線乗り場に第一中学校の制服を着た男女の姿があった。
色白の少年が少女に話しかけようと瞬間だった。スポーツバッグの中から「G線上のアリア」の着信音が鳴る。
少年は一瞬ビクッとさせたがすぐに少女の方を向く。
「…いいの…?碇君…」
横目でチラッとプラットフォームのベンチの隣に座っている少年の様子を伺う。
「えっ?な、何が?」
「電話に出なくて…」
シンジは少し戸惑ったような表情を浮かべたがすぐに微笑む。
「いいんだ…誰からか…分かってるし・・・今は話したくないし…」
「そう…」
会社帰りのサラリーマンやOLでごった返す中を切り裂く様に電車のアプローチを告げる構内アナウンスが流れてきていた。
「…それじゃ…ごきげんよう…」
「・・・またね・・・綾波…」
「碇君…」
「何?」
「送ってくれて…あり…がと…」
電車が勢いよく入って来た。
19:22
「…出ないわね…シンちゃん…」
ミサトはアスカの携帯に残っていた履歴からシンジをコールしていたが、諦めて呼び出しを切ると再び走り始めた。
走りながらミサトは初めてアスカを作戦本部棟に迎えた時の事を思い出していた。
「凄い…個室が与えられるなんて…夢みたい」
個室が与えられるのは通常、役職付の一尉からで特別な意味があった。極めて名誉なことだった。ミサトはにやっと笑う。
「あたしの部屋からはちょっち遠いけどさ。まあ作戦本部の居室にはアクセスいいしさ。だからここにしたんだけどね」
「素敵!ミサト!ありがと!アタシ日本に来てよかった!」
アスカはミサトに飛びついていた。
「ちょっ、ちょっと!アスカ!いきなり何?」
ミサトはアスカをおんぶするような格好になっていた。思わずミサトはひっくり返りそうになる。
お、おも…この子…こんなに重かったかしら…そうか…もう14(歳)だもんね…この子を前におぶったのって11の時だったしな…早え…時の流れは…あたしも…もう30かよ…考えたくねえ…
ミサトは先日、マンションでシンジから見合い写真の入った宅急便を渡されてブルーな気分になったことを思い出していた。
三笠の叔母さま…有難いんですけど…いい加減…あたしの好みのタイプ覚えてよ…でも…今は使徒を倒すことしか考えられない…
ミサトはアスカの腰に手を回すと邪念を振り払うかの様にぐんぐん加速し始めた。
「み、ミサト!あ、危ないよ!」
「ははは!あんたが悪いんじゃん!こうなる事くらい読んだら?」
二人は部屋の真ん中でくるくる回りながら笑い声を上げ始める。
ネルフ本部には有事に備えて国連軍地上部隊3個師団の駐屯が十分可能なほどの居住スペースがあった。
当初、ネルフの発足と共に戦車、自走砲、ロケット砲などと共に国連軍陸上部隊が誇る最精鋭部隊「黄金の鷲」、通称ゴールデンイーグルの半個師団を駐屯させる計画があったが日本政府が難色を示したこともあって実現には至らなかったのだ。
折悪く沖縄に駐屯していた国連軍(実質的にアメリカ軍籍の海兵隊)が婦女暴行事件を起こして世論が過敏だった時期に重なったこともあった。
その名残でネルフ本部には無人、未使用のエリアが大量に残される結果になっていた。
アスカもネルフ本部の世間でいう軍事施設、組織とは趣を異にする事情を第三支部時代に女性技術士官のティナ(ベッティーナ)・ピーターセン三尉から聞いていた。
アスカがハンブルク生まれということもあってホルシュタイン州出身のティナは同じ北ドイツ出身ということで気安かったのか、姉の様に何かとアスカの世話を焼いた。そして誰も話さない様な情報も時折アスカにそっと教えてくれていた。
今でも二人は時々メールや電話で連絡を取り合っていたがMAGIによる監視を受けているアスカの立場を慮って通信内容は専らプライベートに徹していた。
ミサトがアスカをゆっくりと下ろした。
「別にあんたを特別扱いするわけじゃないわよ。誰も使っていないエリアがこんだけあるしさ。それに国連軍の正規階級を持ってるのってここ(ネルフ)ではあたしとアンタだけだしね。ま、サービス!サービス!ってとこかな」
「ありがとう…ミサト…」
「ただし!もし本隊が駐屯することになったらあんたは居室に移動になるからね。何持ち込んでも自由だけどさ。ウサギとかカメとか面倒なものは持ってくんじゃないわよ」
薄い黄色のワンピースを翻すとアスカはミサトから一歩離れてビシッと敬礼する。
「了解しました!キャプテン!」
「着任を祝す!惣流准尉!」
ミサトはアスカを見る眼を細めていた。
半分学者の楽園みたいなノリが残っていることがネルフ最大の弱点…軍事行動が時に素人の独断と偏見によって制約を受けることが…軍出身のあたしにとって最高のストレスになる…
Eva以外に通常兵器を持たないというのは使徒撃滅を目的にした特務機関であるとはいえ…仮にテロリストなどの対人武装をした集団から施設の直接攻撃を受けた場合などを想定するとほとんど丸裸と言ってもいい…対人戦闘に陥った場合のリスクが大き過ぎる…例え3体のEvaがあっても特殊部隊が散開して本部施設に侵入すると手の施しようがない…
あのおっさん(ゲンドウ)…どこまで戦術面に精通してんだかしんないけどさ…あの余裕…どこから来るのか…あたしにはまるで理解出来ない…
だから…あんたが来日することが正式に決まった時…あたしがどんだけ嬉しかったか…あんた分かる?待ってたのよ…あんたと組める時をね…二人で使徒を倒すのよ…そして…全てが終わったら…もし…あんたさえよければ…一緒に日本で…
ミサトの感慨を他所にアスカはデスクの椅子に座ってくるくると無邪気に回っていた。
20:45
逃げられないわよ!加持!他の誰でもない、あたしに見つかったのがあんたにとってはささやかな幸運だったわね…
ミサトが飛び出そうとした瞬間、加持がターミナルドグマのゲートを事も無げに開けた。ミサトはその音を聞いて完全に戦意を喪失する。
そ、そんな…ありえないわ…どうして加持が!くそ!よりによってこんな時に!アスカ…大丈夫だとは思うけど…悪いけどこっちを先に片付けるわよ!
加持がターミナルドグマの内部に入っていく。
ミサトは気づかれない様に距離を開けながら第一ゲートが閉まる直前に中に飛び込むとすぐに横の通路の中に身を隠した。
ミサトは自分の鼓動がどんどん早くなっているのを感じていた。
ターミナルドグマに…あたし…初めて入ったわ…
ミサトはターミナルドグマの中にはL.C.L.の製造プラントがあるという説明をリツコから受けただけでそれ以上のことは何一つ知らなかった。
内部は殆ど真っ暗に近く僅かに足元を照らすLEDの照明があるのみだった。にも拘らず加持はまるで以前にも入った事があるかの様に迷うことなく次々とゲートを潜って行く。
ミサトも加持の後について行く。通路は僅かに下っており、ゲートを潜る度に更に地下の底部に向かっているのが分かる。
ミサトは加持の後をつけながら何故加持がターミナルドグマの扉を開くことが出来たのかを考えていた。そして諜報情報部長の志摩が何者かにID情報を盗まれてMAGIへの進入を許すきっかけを与えてしまったという事に思い当たる。
そうか…あの実直でまじめを絵に描いたような志摩さんのIDを盗み、MAGIに進入したのは加持!あんただったってことか!
志摩のPCには紫色のメモリスティックがささっており、これを技術部が調査したところ、中からかなり巧妙なコンピューターウィルスが検出された。
このウィルスに感染した志摩のPCからID情報が自動的に転送される仕組みになっていた。
転送先は10万を越えるアカウントにも及びそこから更にお互いのアカウントに延々と飛ばしあうことで特定することが出来なかったのだ。
恐らく加持は志摩のIDからMAGIのキーを探り宛ててセキュリティーレベルの高い偽造IDカードを造ったのだろう。
だからあんたは自分のIDが失効しても自由に歩けるってわけね。しかも、アクセス履歴も残らないからあんたが本部をうろうろしてても検知されない…これだけ出入りする職員の数が多いと顔見知りでもない限り顔が割れることもない。考えたわね…大胆不敵というか…何を考えてこんなことをしてるの!あんた!
そして加持が7つ目のゲートを潜ったところでミサトはある特有の臭気と何ともいえない湿り気を感じた。
これって…L.C.L.の臭いだわ…やっぱり製造プラントだったんだ…
やがて加持は20mはあろうかという巨大な回廊に立った。
そしてその回廊を躊躇無く潜るとやがて白い重厚な扉の前に立つ。ミサトは加持から少し離れたところに隠れて様子を伺っていた。
加持は独り言をいう。
「ようやくたどり着いたな…ヘブンズドアに…」
ヘブンズドアですって?L.C.L.製造プラントへの入り口って事?
ミサトは再びピストルをホルスターから引き抜いた。
どうやら終着点に辿り着いた様ね…加持…事と次第によっちゃあ、ここがあんたの終着点になるわよ…
そして加持がセキュリティーカードを扉の隣にあるIDリーダーにかけた瞬間、加持の後頭部に銃口を突きつけた。
「動かないで!」
カチャッ
ミサトは安全装置を静かに外した。暗闇の中で無機質な音が幾重にも反響する。
加持はIDリーダーにカードを挟んだ右手はそのままで左手を静かに上げた。
19:20
第3東京市リニア駅の市内環状線乗り場に第一中学校の制服を着た男女の姿があった。
色白の少年が少女に話しかけようと瞬間だった。スポーツバッグの中から「G線上のアリア」の着信音が鳴る。
少年は一瞬ビクッとさせたがすぐに少女の方を向く。
「…いいの…?碇君…」
横目でチラッとプラットフォームのベンチの隣に座っている少年の様子を伺う。
「えっ?な、何が?」
「電話に出なくて…」
シンジは少し戸惑ったような表情を浮かべたがすぐに微笑む。
「いいんだ…誰からか…分かってるし・・・今は話したくないし…」
「そう…」
会社帰りのサラリーマンやOLでごった返す中を切り裂く様に電車のアプローチを告げる構内アナウンスが流れてきていた。
「…それじゃ…ごきげんよう…」
「・・・またね・・・綾波…」
「碇君…」
「何?」
「送ってくれて…あり…がと…」
電車が勢いよく入って来た。
19:22
「…出ないわね…シンちゃん…」
ミサトはアスカの携帯に残っていた履歴からシンジをコールしていたが、諦めて呼び出しを切ると再び走り始めた。
走りながらミサトは初めてアスカを作戦本部棟に迎えた時の事を思い出していた。
「どう?気に入った?今日からあんたが好きに使っていいわよ」
「凄い…個室が与えられるなんて…夢みたい」
個室が与えられるのは通常、役職付の一尉からで特別な意味があった。極めて名誉なことだった。ミサトはにやっと笑う。
「あたしの部屋からはちょっち遠いけどさ。まあ作戦本部の居室にはアクセスいいしさ。だからここにしたんだけどね」
「素敵!ミサト!ありがと!アタシ日本に来てよかった!」
アスカはミサトに飛びついていた。
「ちょっ、ちょっと!アスカ!いきなり何?」
ミサトはアスカをおんぶするような格好になっていた。思わずミサトはひっくり返りそうになる。
お、おも…この子…こんなに重かったかしら…そうか…もう14(歳)だもんね…この子を前におぶったのって11の時だったしな…早え…時の流れは…あたしも…もう30かよ…考えたくねえ…
ミサトは先日、マンションでシンジから見合い写真の入った宅急便を渡されてブルーな気分になったことを思い出していた。
三笠の叔母さま…有難いんですけど…いい加減…あたしの好みのタイプ覚えてよ…でも…今は使徒を倒すことしか考えられない…
ミサトはアスカの腰に手を回すと邪念を振り払うかの様にぐんぐん加速し始めた。
「み、ミサト!あ、危ないよ!」
「ははは!あんたが悪いんじゃん!こうなる事くらい読んだら?」
二人は部屋の真ん中でくるくる回りながら笑い声を上げ始める。
ネルフ本部には有事に備えて国連軍地上部隊3個師団の駐屯が十分可能なほどの居住スペースがあった。
当初、ネルフの発足と共に戦車、自走砲、ロケット砲などと共に国連軍陸上部隊が誇る最精鋭部隊「黄金の鷲」、通称ゴールデンイーグルの半個師団を駐屯させる計画があったが日本政府が難色を示したこともあって実現には至らなかったのだ。
折悪く沖縄に駐屯していた国連軍(実質的にアメリカ軍籍の海兵隊)が婦女暴行事件を起こして世論が過敏だった時期に重なったこともあった。
その名残でネルフ本部には無人、未使用のエリアが大量に残される結果になっていた。
アスカもネルフ本部の世間でいう軍事施設、組織とは趣を異にする事情を第三支部時代に女性技術士官のティナ(ベッティーナ)・ピーターセン三尉から聞いていた。
アスカがハンブルク生まれということもあってホルシュタイン州出身のティナは同じ北ドイツ出身ということで気安かったのか、姉の様に何かとアスカの世話を焼いた。そして誰も話さない様な情報も時折アスカにそっと教えてくれていた。
今でも二人は時々メールや電話で連絡を取り合っていたがMAGIによる監視を受けているアスカの立場を慮って通信内容は専らプライベートに徹していた。
ミサトがアスカをゆっくりと下ろした。
「別にあんたを特別扱いするわけじゃないわよ。誰も使っていないエリアがこんだけあるしさ。それに国連軍の正規階級を持ってるのってここ(ネルフ)ではあたしとアンタだけだしね。ま、サービス!サービス!ってとこかな」
「ありがとう…ミサト…」
「ただし!もし本隊が駐屯することになったらあんたは居室に移動になるからね。何持ち込んでも自由だけどさ。ウサギとかカメとか面倒なものは持ってくんじゃないわよ」
薄い黄色のワンピースを翻すとアスカはミサトから一歩離れてビシッと敬礼する。
「了解しました!キャプテン!」
「着任を祝す!惣流准尉!」
ミサトはアスカを見る眼を細めていた。
半分学者の楽園みたいなノリが残っていることがネルフ最大の弱点…軍事行動が時に素人の独断と偏見によって制約を受けることが…軍出身のあたしにとって最高のストレスになる…
Eva以外に通常兵器を持たないというのは使徒撃滅を目的にした特務機関であるとはいえ…仮にテロリストなどの対人武装をした集団から施設の直接攻撃を受けた場合などを想定するとほとんど丸裸と言ってもいい…対人戦闘に陥った場合のリスクが大き過ぎる…例え3体のEvaがあっても特殊部隊が散開して本部施設に侵入すると手の施しようがない…
あのおっさん(ゲンドウ)…どこまで戦術面に精通してんだかしんないけどさ…あの余裕…どこから来るのか…あたしにはまるで理解出来ない…
だから…あんたが来日することが正式に決まった時…あたしがどんだけ嬉しかったか…あんた分かる?待ってたのよ…あんたと組める時をね…二人で使徒を倒すのよ…そして…全てが終わったら…もし…あんたさえよければ…一緒に日本で…
ミサトの感慨を他所にアスカはデスクの椅子に座ってくるくると無邪気に回っていた。
20:45
加持は飄々とした様子でまっすぐにターミナルドグマに通じる第一のゲートの前に立つ。
完全な袋小路だ。
ミサトは静かにピストルをホルスターから抜いた。射撃には絶対の自信を持つミサトだった。
完全な袋小路だ。
ミサトは静かにピストルをホルスターから抜いた。射撃には絶対の自信を持つミサトだった。
逃げられないわよ!加持!他の誰でもない、あたしに見つかったのがあんたにとってはささやかな幸運だったわね…
ミサトが飛び出そうとした瞬間、加持がターミナルドグマのゲートを事も無げに開けた。ミサトはその音を聞いて完全に戦意を喪失する。
そ、そんな…ありえないわ…どうして加持が!くそ!よりによってこんな時に!アスカ…大丈夫だとは思うけど…悪いけどこっちを先に片付けるわよ!
加持がターミナルドグマの内部に入っていく。
ミサトは気づかれない様に距離を開けながら第一ゲートが閉まる直前に中に飛び込むとすぐに横の通路の中に身を隠した。
ミサトは自分の鼓動がどんどん早くなっているのを感じていた。
ターミナルドグマに…あたし…初めて入ったわ…
ミサトはターミナルドグマの中にはL.C.L.の製造プラントがあるという説明をリツコから受けただけでそれ以上のことは何一つ知らなかった。
内部は殆ど真っ暗に近く僅かに足元を照らすLEDの照明があるのみだった。にも拘らず加持はまるで以前にも入った事があるかの様に迷うことなく次々とゲートを潜って行く。
ミサトも加持の後について行く。通路は僅かに下っており、ゲートを潜る度に更に地下の底部に向かっているのが分かる。
ミサトは加持の後をつけながら何故加持がターミナルドグマの扉を開くことが出来たのかを考えていた。そして諜報情報部長の志摩が何者かにID情報を盗まれてMAGIへの進入を許すきっかけを与えてしまったという事に思い当たる。
そうか…あの実直でまじめを絵に描いたような志摩さんのIDを盗み、MAGIに進入したのは加持!あんただったってことか!
志摩のPCには紫色のメモリスティックがささっており、これを技術部が調査したところ、中からかなり巧妙なコンピューターウィルスが検出された。
このウィルスに感染した志摩のPCからID情報が自動的に転送される仕組みになっていた。
転送先は10万を越えるアカウントにも及びそこから更にお互いのアカウントに延々と飛ばしあうことで特定することが出来なかったのだ。
恐らく加持は志摩のIDからMAGIのキーを探り宛ててセキュリティーレベルの高い偽造IDカードを造ったのだろう。
だからあんたは自分のIDが失効しても自由に歩けるってわけね。しかも、アクセス履歴も残らないからあんたが本部をうろうろしてても検知されない…これだけ出入りする職員の数が多いと顔見知りでもない限り顔が割れることもない。考えたわね…大胆不敵というか…何を考えてこんなことをしてるの!あんた!
そして加持が7つ目のゲートを潜ったところでミサトはある特有の臭気と何ともいえない湿り気を感じた。
これって…L.C.L.の臭いだわ…やっぱり製造プラントだったんだ…
やがて加持は20mはあろうかという巨大な回廊に立った。
そしてその回廊を躊躇無く潜るとやがて白い重厚な扉の前に立つ。ミサトは加持から少し離れたところに隠れて様子を伺っていた。
加持は独り言をいう。
「ようやくたどり着いたな…ヘブンズドアに…」
ヘブンズドアですって?L.C.L.製造プラントへの入り口って事?
ミサトは再びピストルをホルスターから引き抜いた。
どうやら終着点に辿り着いた様ね…加持…事と次第によっちゃあ、ここがあんたの終着点になるわよ…
そして加持がセキュリティーカードを扉の隣にあるIDリーダーにかけた瞬間、加持の後頭部に銃口を突きつけた。
「動かないで!」
カチャッ
ミサトは安全装置を静かに外した。暗闇の中で無機質な音が幾重にも反響する。
加持はIDリーダーにカードを挟んだ右手はそのままで左手を静かに上げた。
Ep#06_(9) 完 / つづく
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