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新世紀エヴァンゲリオンの二次創作物、小説「Ihr Identität」を掲載するサイトです。初めての方は「このサイトについて」をご参照下さい。小説をご覧になりたい方はカテゴリーからEpisode#を選んで下さい。この物語はフィクションであり登場する人名、地名、団体名等は特に断りが無い限り全て架空のものです。尚、本ホームページに使用した「新世紀エヴァンゲリオン」の画像は(株)ガイナックスのガイドラインに沿って掲載しています。配布や転載は禁止されています。
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第10部 The eve of the night 血戦前夜 (Part-3) / Bad Cat, Good Dog


(あらすじ)

長門の電話が突然鳴る。ゲオルグ・ハイティンガーだった。長門は「ドリューの消息」をゲオルグから聞くや直ちに行動を起こす。戦略自衛隊第一師団の特殊部隊と外人部隊の松代投入を指示。
一方、シンジはSGの目を誤魔化して松代を目指し、ミサトたちもまた松代へと向かう準備を進めていた。松代は俄かにきな臭さを増しつつあった。
(本文)


リツコが明日に迫った参号機の起動試験のブリーフィングを発令所近くのシミュレーションルームで技術部、保安部、そして作戦部を対象にして行っていた。

「…以上が松代の第二実験場での試験手順という事になります。質問があればどうぞ」

会議には新横田基地からジオフロントに帰着したゲンドウと冬月の姿もあった。

「無い様なら各担当から進捗報告をお願いします」

リツコはチラッと自分の隣に座っているミサトの横顔を見、ついでゲンドウの方を見た。ゲンドウは両手を組んだまま無言だった。

ミサトの隣に座っていた日向は少し物憂げな表情で会議に参加しているメンバーを見回した。

青葉とマヤが並んで日向の対面に座っているのが見える他、この種の会議としては珍しく技術部の室長クラスも参加していた。周辺警備を警察機関と連携して行うため保安部長の由良の姿もあった。

重苦しい空気が支配していた。

作戦部の各課長と左右に分かれてお互いけん制し合っている雰囲気があることが原因だろう。

参ったな…上同士がこんな状態じゃ…メンバーも遠慮があってどうしようもないよな…

この頃では各種の試験の時ですら双方の部員同士でもよそよそしい空気があるのが気がかりだった。日向はため息を一つつく。

唯一、日向、青葉、マヤの3人が従来の関係を保っていた。この3人はMAGIの主幹オペレーターというネルフの中でも最難関の内部資格を持っており協働が前提になっていたこともあるがお互いに休日には集まって将来を語り合う仲でもあった。

それだけに日向も青葉もリツコの御遣いから帰って来たマヤの顔色が優れない事が気になっていた。

マヤちゃん…どうしちゃったのかな…顔が真っ青じゃないか…何か怖いものでも見た様な感じだな…

隣に座っている青葉もしきりにマヤの様子を横目で伺っていた。

「それでは作戦部から進捗を報告します」

保安部の由良に引き続いてミサトが立ち上がる。

「参号機実戦型ですが国連軍の第4輜重隊と当方の筑摩作戦5課長が同行して昨夜の夜半、極秘裏に松代に向けて出発、ルートA4を北上して到着。松代で周防三佐が受け入れを完了。現在、実験場内の射出カタパルトへの設置作業中で今夜半にも第一ケージ内に搬入完了の予定です。因みにマスコミ等の目を誤魔化すために新横田に設置中の(参号機の)ダミーは試験終了と同時に回収の予定です」

ミサトの後を受けて東雲作戦4課長(戦術兵装研究課)が立ち上がって参号機の実験中の各部隊の配置について説明をする。部隊配置の説明が終わった後、技術部第2研究室長の長良が発言する。

「先日の官房長官発言で松代に参号機を輸送する事がほとんど公知の事実になってしまっているというのは機密保全という観点でちょっと問題じゃないですかね?不逞の輩が松代に現れないとも限りませんし、試験スケジュールに影響が出る恐れもありますな」

長良の指摘に東雲はじろっと睨み付ける様な視線を送る。

「日本政府の失言の類は当方の管轄外ですな。広報部か戦略情報部を通してクレームでも入れては如何ですか?」

作戦部や保安部の不手際を指摘する意図は微塵もなかった長良は東雲のつっけんどんな対応に驚いてしどろもどろになる。

「い、いや…僕はそんなつもりで…言ったのでは…」

「以上です」

東雲は一方的に会話を打ち切る。リツコはミサトの隣で腕を組んだまま忌々しそうな表情を浮かべていた。

これじゃ作戦も何もあったものじゃない…イラつくわ…大の大人が感情論で仕事をするなんて…ネルフを何だと思っているの…こんな知性の欠片もない連中と関わるのは時間の無駄だけど…私たち(技術部)では具体的に実行面で何をどうしていいのか…悔しいけれど分からないのも事実…

特務機関ネルフがその強力な権限を発動させる場合はネルフコード(Nv)と呼ばれる超法規的措置命令を発令する必要があった。これは該当国政府への事前通告の義務があるものの人類補完委員会に委員を出しているValentine Council以外の国に拒否権は認められていないというほどの強権発動になる。

直近では初号機の強制サルベージ作戦の時もNv301発令を出して近隣諸国からN2爆雷を調達した実績があった。

ネルフコードはネルフ所属の各部で発動できるものが限られており、軍事や治安維持関係の分野は作戦部や保安部の所掌だった。

例外的に司令長官及び司令室長は包括的に全てのコードを発令する権限を有していたが、5000を超えるコード全てに精通することは実質的に不可能に近かった。リツコがいう「実行面」とは基本的に作戦部や保安部が発動させるコードの事を指していた。

アスカの乱闘事件同様にネルフコードは国家主権の侵害に直接関わるだけに闇雲に使えばいいというものではない。後で外交問題に発展させないために国際法及び各条約の条項、更には当該国法とコードの関係まで視野に入れなければならない。

リツコは隣で黙って座っているミサトの様子を密かに伺う。ミサトは長良と東雲の不毛なやり取りに無反応だった。

ミサト…以前のあなただったら一喝の元に的確な指示を飛ばしたでしょうね…それが今はどうかしら…気が付けばお互いに派閥の長に成り下がるとはね…これも何かの皮肉かしら…

リツコは自嘲を浮かべる。

思えば…今まで私たちはよくケンカもして来たけれど…とてもいいコンビだったわね…こんな未来が待っていたのなら…ミサト…せめてあなたがやりたかった夏祭りくらい好きなようにやらせてあげればよかったかしらね…そうすれば…わたしも一つくらいはいい思い出が出来たかもしれない…

リツコが逡巡する間も技術部と作戦部の課長たちは言葉の応酬を繰り広げていた。

あなたは私の苦手な対外活動を…私はあなたの無茶な作戦の実行のためにアイデアを…お互いがお互いを助け合ってここまで来た…でも…私も引くに引けないところに来ている…もう…あなたとは一緒に飲みにも行けないわね…私がしたこと、いえ…これからしようとしていることを知ればあなた…あなたは…きっと私を殺すでしょうね…あるいはわたしがあなたを手にかける方が早いか…

「葛城作戦課長」

ゲンドウが重々しく口を開く。

ゲンドウの声に全員が一斉に顔を上げる。シミュレーションルームは一瞬で静まり返った。

「はい」

「参号機受け入れプロジェクトの実行責任者として今の指摘に付いて何か対策があれば聞こう…」

ミサトはゲンドウの刺す様な視線に臆することなくスッと立ち上がると淀みなく答える。

「長良2研室長のご指摘は考慮すべき事案と認識します。先日の対レリエル戦時のマスコミによる報道があった事を勘案すればやはりオペレーション区域に言及した官房長官発言は同様の問題を招来しかねないリスクがあります。やむを得ませんがNv89を直ちに発令して松代実験場の半径5km圏内を立ち入り制限区域に指定、更に状況次第では第2種警戒態勢を取る事も視野に入れるべきかと考えます。加えて保安部から内務省警察局に制限区域近辺の警備強化を申し入れて二重の警備体制をとる事を提案します。また、差し出がましいようですが今般のネルフ関連情報統制の不備は広報部ではなく司令長官名で日本政府に対して遺憾の意を表明して釘を刺しておいた方が宜しいかと…」

ミサトの言葉にゲンドウは小さく頷くと冬月とリツコに視線を送る。

「葛城作戦課長の提案を承認する。冬月、部長の替わりに作戦本部長名で直ちに日本政府に通告しろ。それから赤木博士は北上総務部長と協議して先の官房長官発言に対して遺憾の意を伝えろ。案文は一任する」

「分かりました…」

「君からは以上か?」

「はい」

会議の雰囲気は一気に引き締まる。

ミサトは席に着くと腕を組んで瞑目する。
さすがは司令…このサーカス集団(個性派の集まり)をここまで統制して尚且つスケジュール通りに(人類補完)計画を進める手腕は見事なものだわ…この冷酷さ、酷薄さがあってこそともいえる…それにしても予てから準備を進めてきた参号機の受け入れだけど…当初はセントラルドグマへの搬入だったはず…それが急遽、松代実験場を司令が指定してきたのは…なぜ…?何か…意図があるはず…

ミサトは薄目を開けると気配を殺してリツコの様子を見、そして正面に座っている冬月、ゲンドウを見た。

それに…あの能登さん(内閣官房長官/自由党衆議院議員)は若いけど次期総裁の呼び声も高い切れ者で通っている…うっかり失言する様なその辺のボンクラ議員じゃないわ…意図的に反対デモ後のうちとの会議内容をリークしたと見ていい…日本政府は何か企んでるに違いないわ…まさに内患外憂とはこのことね…

リツコは着席したミサトの横顔をチラッと一瞬だけ見ると入れ替わる様に立ち上がる。

「それではこれから参号機のパーソナルデータ入力作業等の立ち上げ状況の報告に移ります」

リツコの声を遠くで聞きながらミサトはため息をつく。

あれは何かのサインかしら…いずれにしても松代は虚々実々の駆け引きが飛び交う戦場になったことは間違いない…今までの作戦の中で一番タフになる…ということは…そこに行けばあんたに会えるわね…加持…女の勘だけど…

「…続いて第4及び第5の適格者ですが…」

ミサトはリツコの言葉にハッとする。

このタイミングでフィフスの発表…?まだ6日はある筈…

「明日の起動試験のパイロットになるフォースチルドレンに鈴原トウジを選出しました。後ほど彼の経歴ファイルを関係者に送りますが、他のチルドレン同様に第3東京市立第一中学校の生徒です」

よりによってシンちゃんの友達じゃないの…しかも…ろくに訓練も受けていないのに動かせるのかしら…シンジ君みたいにいきなりそれなりのシンクロ率を出すとは思えないけど…解せないわ…起動係数をクリアしさえすればいいってくらいの勢いじゃない…この選出…気に食わない…何となくだけど正規パイロットって扱いじゃない様な気がする…

ミサトの思考はリツコの声でかき消される。

「次にフィフスチルドレンとして渚カヲル。人類補完委員会より受け入れました。ドイツ国籍で日本人が四分の一混ざっているクォーターということです。こちらも経歴ファイルを後で送ります」

ミサトは二重の驚きで思わず立ち上がりかけた。辛うじて動揺を抑えているような状態だった。女トール(北欧神話の雷神)をしてこの反応だけにシミュレーションルームは蜂の巣を突いたような騒ぎになっていた。

ば、バカな…委員会から受け入れたチルドレンですって!?何?これは…一体どういうこと…それにドイツ国籍のクォーターって…アスカそっくりじゃない…その彼がアスカに取って代わるかもしれなんて…

会議は終わりに近づいていた。ミサトはネルフ入省以来これほど組織的、思考的、また感情的にも噛み合わない会議は始めてだった。

嫌な予感がする…アスカがいなくなった時みたいに…いや…それ以上かもしれない…何なの…この参号機は…あたし達に何をもたらすと言うのか…少なくとも…

ミサトは隣に座っているリツコの方を見た。するとリツコもミサトを見ていたのか、いきなり目が合う。

少なくともあたしにとっては福音ではなさそうね…リツコ…あんたにとってこれは福音になるわけ…?

二人はお互いに全く視線を逸らさなかった。
 






シンジはポケットからネルフ支給の携帯を取り出すと電源を切り、自分の部屋のベッドのマットレスを少し持ち上げると携帯を奥の方に入れた。

チルドレンはこの携帯を肌身離さず所持しなければならないことがマニュアルで規定されている。GPSによる所在のモニターのためでもあったがある意味で監視とも言えた。

制服からジーパンに着替えるとリュックサックを背負ってミサトのマンションの部屋を後にする。正面玄関にはSGの車が止まっているため、裏手の自転車置き場に向かった。

シンジはマンションの住人に割り当てられる駐輪スペースから自分の自転車を引き出して驚愕する。

「な、なんじゃこりゃ…これ…本当に…」

自転車の前輪に書いてある名前を急いで確認する。信じたくはなかったが自分の字で「碇 & 惣流」と書いてあった。

うそだろ…やっぱり僕のチャリだ…

シンジとアスカが共同出資でこのママチャリを入手したのはミサトが結婚式の二次会に出席する前になる。出資比率が高かったシンジが代表してマンションにこの自転車を葛城家の住人として保管登録していたのだ。二人とも購入以来、当番や台風の通過などで乗る機会に恵まれていなかった。

新品同然の筈の白いママチャリは血の様な液体で全体が茶褐色に汚れて泥や砂がこびりついて悲惨な状態になっていた。しかも大きな蛾の死骸までへばりついている。

「何なんだ…これ…もしかして…L.C.L.…?」

シンジは恐る恐る指の先で慎重に蛾の死骸を剥がす。

一体…このチャリに何が起こったんだ…ん?

ふと自転車の前に着いている籠の中にコンビニのレシートが残っているのが見えた。それを摘み上げたシンジの目が大きく見開かれる。

「缶ビールとおつまみばっかり…ミサトさんだ…ミサトさんが僕らのチャリを使ったんだ…そうか…このチャリで使徒の残骸の上を走ったんだな…酷い…酷いよ!買ったばかりなのに!メチャクチャじゃないか!」

シンジは自転車を元の保管場所に投げる様に戻すとミサトのズボラを呪いつつ勝手口から外に駆け出していった。途端に日差しが肌を焦がしていく。

「9800円もしたのに!絶対弁償してもらうぞ!変速機つきじゃないと納得できないよ!」

茹だる様な暑さの中、シンジは人通りの少ない裏通りを通ってリニア駅に向かっていった。
 





同刻。第二東京市新市ヶ谷の国防省ビル。

長門は会議の小休止中だった。コーヒーを片手に談笑していると急に胸ポケットに入れていた携帯が鳴る。長門がディスプレーを確認すると眉間に皺を寄せた。

目の前にいる海江田に軽く会釈する。

「ちょっと失敬…」

人気の無いところまで行くと通話ボタンを押す。

「もしもし…」

「長門か?私だ…」

抑制の取れた落ち着いた声の英語が聞こえて来た。

「久し振りですね、ゲオルグ。あなたから私に連絡してくるとは珍しい…どういう風の吹き回しですか?」

「ふふふ。相変わらず愛想のない男だね、君は…友人がわざわざ電話をかけてきたというのに…」

「これは失礼…それにしてもそちらはまだ朝の5時でしょう?冬のベルリンをジョギングでもしているのですか?」

「まだ外は真っ暗だよ…さすがにジョギングという気分ではないな…」

「なるほど…ところでご用件は何ですか?」

電話の向こうでゲオルグが一呼吸置く。

「君の昇進に一言おめでとうが言いたくてね。友人として」

「それはそれはご丁寧なことで…」

長門が興味なさそうに視線を国防省ビルから見下ろす街の喧騒に向ける。

「昇進祝いと言っては何だが一つ君にいい事を教えよう」

「何ですか?」

「ドリューの居場所が分かったんだ…」

ゲオルグの言葉に長門は思わず携帯を落としそうになる。

「まさか…ドリューの…本当ですか…?」

「ああ…突然我々の元から消えたドリューだったが灯台下暗しだったよ…ピラミッド(ネルフ本部)の中にいた…」

「ピラミッドに…」

「本当だよ…ファラオ(ゲンドウ)がセカンド(チルドレン)として飼っていた…後でセカンドに関する資料の全てを君に送るがSeeleから強引にドリューを奪ったのはネルフだったんだ…よもや身内がそんな事をする筈はないと多寡を括っていたのは失敗だった…」

「ば、バカな!ファラオが…」

電話の向こうでゲオルグがため息をつくのが聞こえて来た。長門は言葉を失う。

足掛け4年…4年もの間…俺たちは必死になって探していた…それがネルフだと…?とんだ面の皮じゃないか、ゲオルグ…意味が分からん…これはブラフか…?日本政府を利用しようとしているのか…

「ドリューは現在、惣流・アスカ・ラングレーというアメリカ国籍の少女という事になっているがこれも我々の盲点だった…アメリカはつい最近までSeeleへの協力を過去の経緯もあって渋っていたしね…最近のS計画への参加でようやく各種資料を入手する事が出来てそれで裏が取れたというわけさ…」

「しかし…セカンドチルドレンに選出されたのであれば…」

「いちいちマルドゥックが拾ってくるチルドレンなど目を通さんよ…雑魚ばかり集めたNv707に委員会はおろか誰も興味はない…まあ…大胆不敵というか…私も自分の目が節穴だった事は認めるしかないがね…はは」

ゲオルグが自嘲気味に笑う。

ふざけるな…この4年の間に一体どれだけの命が失われたと思っているんだ…そうか…それでアメリカ国籍をわざわざ…

長門が携帯を握る手に力を込める。

「状況はだいたい分かりました。ならばなおのこと(Eva)連隊創設のためにもドリューを取り戻すまでです。手段は選ばずに…」

「実はその事だが…少し慎重に事をすすめる必要がある…」

「と言うと…?」

ゲオルグは一層声を潜ませる。

「ヤツはあろう事か…ドリューにローレライを施した…それも私の目の前でな…」

「ロ…冗談でしょ?まさかそんな…」

「いや…こんな事は冗談では言えないよ…分かったかね…?単に連れ帰ると言うわけに行かないんだ…ドリューに仕掛けられたローレライの設定値をこちら(ネルフ第三支部)で確認しようとしたがプロテクトされていて確認不能だった…その代りにピラミッド内の情報提供者から入手したデータによるとMAGI-1(ネルフ本部に設置されているMAGIシステム)が管轄するエリアを離れると動作するプログラムのようだ」

「つまり日本から離れられない…」

「そういうことだ…まだ情報の裏が取れていないので確実とは言えんが…だが、現状において言えることはサルベージは日本で実施するしかないかもしれん…もちろんブラフの可能性も考慮すべきではあるがな…」

「そうですか…」

「聡明な君のことだ。これが何を意味するか分かるね…」

「ドリューの確保が第一優先、ピラミッドの攻略及びMAGI-1の保全…」

長門は言いながら顔を忌々しそうに顰(しか)めていた。

能登長官の「松代発言」は大方、この男が仕向けた事だろう…ハナから松代を戦場に設定していたに違いない…くそ…いけ好かないヤツだ…

「時期は任せる…だがファラオの造反を諦めさせるには出来るだけ早いうちに我々の方が戦力で圧倒する必要があるだろう…最悪でも反旗を翻した場合の制裁手段にする必要がある」

「ファラオ(ゲンドウ)め…」

「実行面は君に一任する…容易ではないがよろしく頼む…援助が必要であれば遠慮なく言ってくれ…国連の全ての機関は君に協力するだろう…」

ゲオルグが電話を切ると長門はすぐに電話をかけ始めた。

「もしもし私だ…Bad Cat(戦略自衛隊第1師団対テロ戦特殊部隊)とGood Dog(戦略自衛隊所属の対人特殊訓練を施した外人部隊)の動員準備を急げ…場所は松代…極秘裏にネルフの実験場の制圧作戦を準備しろ…」






Ep#07_(10) 完 / つづく





(改定履歴)
16th April, 2009 / 表現修正
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