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新世紀エヴァンゲリオンの二次創作物、小説「Ihr Identität」を掲載するサイトです。初めての方は「このサイトについて」をご参照下さい。小説をご覧になりたい方はカテゴリーからEpisode#を選んで下さい。この物語はフィクションであり登場する人名、地名、団体名等は特に断りが無い限り全て架空のものです。尚、本ホームページに使用した「新世紀エヴァンゲリオン」の画像は(株)ガイナックスのガイドラインに沿って掲載しています。配布や転載は禁止されています。
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第5部 der Sonntag すれ違い


(あらすじ)
デート当日。アスカは後ろめたさからシンジに黙って出かけ様としていたがペンペンが暴れだした音で寝ていた筈のシンジが起き出してばったりキッチンで出くわしてしまう。シンジの責めるような視線にいたたまれなくなったアスカはマンションを駆け出していく。
バカシンジ…責めるような目で見るくせに…何も言ってくれない…

一方、新アキバに到着したアスカと阿武隈はオタクデートをスタートさせるが…


(本文)


シンジとミサトの共通点は朝寝坊で寝起きが悪いことだった。

平日の朝はアスカがこの二人を起こす事で一日が始まる。アスカは特にシンジを真っ先に起こす。

その理由はシンジにはアスカと自分の二人分のお弁当を作り、そしてその残りを使って3人分の朝食を作るという義務があるからだ。シンジがしゃきっとする事に実質的に葛城家の日常は率速していた。
 
日曜日の場合、アスカは特に用事が無い限り基本的にこの二人を起こさない。

それ故に下手をすると昼過ぎまでこの二人は寝ていることがあり、葛城家の日曜日は極めて怠惰な雰囲気が支配する。
 
アスカはとにかく早起きだった。それはドイツと日本との間の文化、気候風土の違いに大きく依存していた。

色々要因はあるが例えばその一つとしてパン事情の違いが挙げられる。ドイツのパンはBrötchen、Mischbrot等、定番のパンがあるがいずれもその日のうちに食べなければ空気が乾燥している為カチカチになってしまう。

ビニール袋に入れて保存するという方法も勿論あるが、基本的にドイツではその日に食べるパンはその日に買うというのが結構主流だ。ドイツのパン屋は5時過ぎくらいから店を開けていてそこにぞろぞろと人々が集まってくる光景がそこかしこに見られる。

アスカにとっては早起きは特別なことではなかった。日曜日の朝は一人で過ごすことが多く手持ち無沙汰になるのが常だった。

その習慣が時として仇になることもあった…
 
 


 
阿武隈とデートをする日曜日…

アスカは一人いつも通り起きて7時半には既にトーストとコーヒーで朝食を終えていた。ミサトとシンジはまだ完全に布団と一体化している。アスカは新聞を引き抜いてテーブルの上に置く。

ちょっと暇ね・・・

9時の待ち合わせまでずいぶんと時間があった。歩いて10分のため8時半からゆっくり出れば丁度いいくらいだ。

アスカは手持ち無沙汰を解消する為にペンペンの巣を開けて弄び始めた。始めペンペンはアスカにされるがままにキッチンの床で転がされていたが、だんだん目が覚めてくると餌をアスカにねだり始めた。

やっばー!どうしよう・・・暴れだした…

ペンペンの餌はもっぱらシンジが管理している。アスカは冷蔵庫を開けるがペンペンに何を上げていいのか見当が付かなかった。

パンとか食べるのかしら・・・ペンギンって確か鳥類よね・・・消化器官的にパンだと異常発酵を起こして下痢とかしそうだし・・・もし、それが元でお腹壊して死んだりしたら・・・
 
アスカの脳裏には夏祭りから帰ってきた時にミサトから生き物の飼育に向いていないと言われて散々バカにされたあの忌まわしい記憶が蘇っていた。
 
へ、下手なことは出来ないわね・・・あのずぼら女に何言われるか、分かったもんじゃないわ…

しかし、だからといってシンジをこの為だけに起こすわけにも行かない。日曜日はそっと同居人たちを起きるまで寝かせておくというのがアスカの中の一応のルールだった。

仕方ない!こうなったら実力行使あるのみ!

アスカはペンペンを抱えると巣の中に放り込んで扉を閉めた。しかし、ペンペンは巣の中で暴れて音を立てる。

「ちょっと!アンタ!静かにしてよ!シー!シー!」

アスカは居た堪れなくなり思わずその場を離れて仕方が無く自分の部屋に戻った。そして少し早いが服を着替えることにした。

アスカは先日、ヒカリと一緒にモールに行った時に買った服を今日の阿武隈とのデートで着ていく心算だった。ジーンズの短パンとキャミソールを合わせてその上からTシャツを重ね着する。

髪型はいつも通りヘッドセットを付けて整えるとこれもヒカリと一緒に買った髪留めでアップスタイルにした。それから愛用しているフローラルのコロンを付けて淡い色のルージュを引いた。

そしてコサージュの付いたサンダルをクローゼットから取り出すと玄関にそれを置く。

あれ…静かになったわね…

ペンペンの様子が気になってキッチンを覘くとシンジとばったり出くわしてアスカはビックリする。

「きゃっ!」

シンジはTシャツとトランクスという姿で半分寝ぼけた状態で麦茶を入れた瓶を片手に持っていた。シンジの頭には大きな寝癖が付いていた。

「・・・あ、アスカ。おはよう・・・」

「Moin(独語 おはよう の意)・・・シンジ・・・今日は早いのね・・・」

シンジはぼうっとしていたが麦茶をコップに注いで一杯飲むとおもむろにペンペンの餌を冷蔵庫から取り出して与える。ペンペンは餌皿をがつがつと突く。シンジはそのまま食卓の椅子を引き出すと腰を下ろした。

「何か、ペンペンが暴れてたから・・・お腹がすいたのかなあと思って・・・」

アスカは自分がペンペンをつついた事でシンジを起こしてしまった事だけではなく、何か後ろめたい様な複雑な思いがしていた。こんな感情は初めてだった。

「ごめんね・・・アタシがペンペンを起こしてしまったの・・・まさかアンタが起きるとは思わなかったから・・・」

アスカはこの時、来日して初めてシンジに「ごめんね」という言葉を使っていたが、二人ともそのことには気が付かなかった。

シンジは寝ぼけつつもアスカの服装とコロンの香りでいつもの雰囲気ではないことを察知した。

「・・・どこか出かけるの?」

アスカは始め返事に窮するがはっきりと答えた。

「ええ。今日はデートだから・・・」

シンジは寝ぼけ顔だったがデートという言葉に反応する。

「・・・誰かとデートするの?」

「そうよ。一人で出来る訳無いでしょ!デートは何も特別なことじゃないわ・・・日本にきてこれで3回目だし・・・まあ付き合いみたいなもんじゃない?」

アスカはわざと明るく振舞うが自分でも何か虚しさを感じていた。いつものことだが心のどこかでは引き止めて欲しいという想いがあった。

アンタが行くなといえばしょうがないけど一緒にここにいてあげてもいいわよ…

「・・・そうだね・・・気をつけてね」

シンジはじとっとアスカの顔を見る。冷めた目をしていたが予想通りの台詞だった。

バカシンジ…責めるような目で見るくせに…何も言ってくれない…気に入らないなら行くなって言えばいいじゃない!だったら…アタシ…行かないわよ…

「分かってるわよ!」

シンジの視線から逃れるようにアスカは踵を返した。そして廊下に出た時にちらっと横目でシンジを盗み見る。まだシンジは無言のままでアスカを見送っていた。

何で今日に限ってそんな目で・・・そんな目で何でアタシを見るのよ!今までのデートの時は何も言ってもくれなかったし、アタシに一切関心がない素振りを取ってたじゃない・・・どうして、今日はそんな目でアタシを責めるのよ!

アスカはまだ出かけるにはかなり早いと思いつつもキッチンを後にするとミサトのマンションを飛び出していた。
 
アンタって…ホント、自分勝手なのよ!アタシがアンタの気持ちを汲んで行動しないといけないっていうの?イラつくのよ!アンタって!

空は気持ちとは裏腹に抜けるような青空が広がっていた。今日のアスカにはやけにセミの音が遠くに聞こえていた。




 
アスカは第三東京市リニア駅の南口に8時過ぎには着いてしまった。仕方が無くアスカは駅の近くのコンビニエンスストアに入ってファッション雑誌の立ち読みを始めた。

ゆっくり適当な時間まで家で過ごす心算だったがペンペンを不用意にかまってしまった為に図らずも早く家を出なければならない羽目に陥ってしまった。

しかもシンジに見送られて。出来ることなら見られたくは無かった。

はあ~何でこうなるんだろ…何よ…あの目…

立ち読みも手に付かず何となく店の外に目を走らせる。すると暫くするとアスカは南口に阿武隈の姿を発見した。

あっ!阿武隈じゃん!

阿武隈は同様に一時間近く早く待ち合わせ場所にやってきたのだ。アスカは立ち読みしていたファッション誌を元に戻すとコンビニを後にした。

ドイツ人は時間の約束にはかなりまじめで、この部分はまず間違いなく日本人以上に感覚がシビアだ。例え1分でも待つのも待たせるのも嫌う。人との約束で5分以上待たせることはドイツでは言語道断で、15分以上待たせた場合は人間関係を失うと考えてもいいくらいだ。

一方で約束の時間よりも早く到着する行為に誠意を見出す国民性があり、アスカはたちまち上機嫌になる。

「阿武隈!おはよう!」

後ろから話しかけられた阿武隈はビックリする。

「あ、アスカたん…グーテンモーゲン…」

「知り合い同士ならHalloでもいいし、省略して Moin でもいいのよ。それにしてもアンタ、早く来たのね?」

「い、家が近くですから・・・」

あ、そう。どの辺?」

「商店街の裏手です」

「へー…アンタいいトコに住んでるのね。それにしても・・・」

アスカはジロジロと今日のエスコート役のファッションをチェックし始める。阿武隈は黒いジーンズとよれよれのTシャツを着て首にタオルをかけていた。何を入れているのか知らないが青いナップサックも背負っている。

「アンタ…どっか山に行くみたいな格好してるわね・・・もしかして新アキバって山の中にあるの?もらったURLを見たら街のど真ん中って感じだったからアタシ、お気に入りのサンダル履いてきたのに・・・」

「い、いえ。山ではありませんが・・・」

「そうよね。だったらさあ、何かちょっと街中のデートって感じがしないわね…アンタの格好って・・・まあいいわ!日差しが強くなってきたから待合室に行きましょ?」

「は、はい・・・」

待合室で再びドイツ談議に花を咲かせた後、二人はリニアの改札を並んでくぐる。一路、第二東京市の新秋葉原を目指した。
 




 
第二東京市リニア駅から連絡路を通って二人は普通列車の山の手モノレールに乗り換える。モノレールで暫く行くと新秋葉原に着いた。

「すっごい人ね・・・ビックリだわ」

二人は駅から歩行者天国に歩いていく。日曜日にも拘らず結構、スーツを着たサラリーマンの姿も少なくないが、あちこちでコスプレイヤーを中心にしてパフォーマンスが繰り広げられている。

中にはプラグスーツの様な格好をした中年男性までいた。

「ちょっと・・・赤色のやつは遠慮してほしいんだけど・・・」

アスカの表情が引きつる。

阿武隈は人ごみにもまれて時々コミカルな動きを見せる。普通に避けるのではなくいちいちオーバーリアクションだった。アスカは時々立ち止まって阿武隈を待たなければならなかったが、不思議な動きをする阿武隈を見ると愉快そうに笑い出した。

「アンタっておもしろい動きすんのね。ふふふ」

阿武隈はアスカをガラス張りのビルの中に連れて行く。巨大な液晶パネルを使った看板には「GAMEDOM」の文字がきらびやかに表示されていた。

「こ、ここが本日の第一チェックポイントです・・・」

あ、そう。っていうか、ここってゲーセン?めちゃくちゃデカいじゃないの・・・」

一階のフロアにありとあらゆるゲーム機が所狭しと並んでいる。どうやら10階建てのビルの全てのフロアがこんな状態のようだった。ゲームのカテゴリーでフロアは分けられていて1階から2階は最新作のデモと各協賛企業の常設コーナーになっていた。3階以降が本格的なゲーマーの世界という感じらしい。

「ここには世界中のゲーム機メーカーがプロトタイプも含めて最新機種を置いているんです・・・ですから、世界でここでしか出来ないゲームも一杯あります・・・アーケードゲームやシミュレーターもの、更には人間が実際に機械の中に入って操作するものまで色々です・・・」

「何か圧倒されるわね・・・」

阿武隈とアスカは3Fのミュージック系ゲームのフロアに向かう。そこではダンスゲーム、ギター、ドラム、太鼓、そしてマエストロという指揮者になってオーケストラを操作するものまで揃っていた。

「凄いわね・・・オーケストラまであるなんて」

「あれはまだプロトタイプですけど・・・結構人気ですから展開するかもしれません・・・」

ふとアスカが振り向くと阿武隈は既にゲーム機のドラムセットに座っている。

「阿武隈!アンタ、ドラムするの?」

「このゲーム・・・結構、嵌ってまして・・・」

とても運動が出来そうにない阿武隈からは想像が付かなかったがプリペードカードを入れてレベルを選びはじめている。初級、中級、上級、超級、鬼のレベルがあったが阿武隈は裏コマンドがあるのか、いきなり鬼の上の「神」を表示させてそれを選択する。

漢字の下に英語が表示されていた為、アスカも阿武隈がもっとも難しいレベルを選んだことを理解する。

「ちょっと・・・アンタ、いきなりGodって・・・難しいんじゃないの!」

阿武隈はアスカの問いかけに返事をせずにいきなりゲームをスタートさせる。

ゲームのドラムセットの中で激しく強化プラスティックのスティックを叩き始めた。しかも、画面の表示で叩く部分が指定されるが、神レベルは殆ど同時に全ての部分を叩き続けるような状態に近かかった。阿武隈の動きはかなり不恰好だったがしかし、それらを完璧にトレースしている。

ドラムゲームのイメージ ← こんな感じを頭に描いてここでは書いてます。。。

こちらは太鼓の達人  ← 元ネタですね。

「す・・・凄い・・・」

アスカは完全に度肝を抜かれて呆然と呟いた。

同じ事をしろと言われてもこれはなかなか出来るものじゃないわ・・・

ゲームが終了すると画面に「98% completed / Top Record」と表示されていた。もはや何処をどう間違ったのかさえ理解不能だった。

アスカがぼうっと画面を見ていたがふとドラムセットの中に目を向けるとそこに居るはずの阿武隈の姿が無かった。

「あれっ?阿武隈?何処に行ったの?」

アスカがゲーム機に近づくと阿武隈が仰向けに顔面蒼白で倒れていた。若干白目をむいている。

「ちょっと!アンタ!しっかりしなさいよ!」

アスカはその場にしゃがみこんで阿武隈を抱きかかえる。阿武隈が何事かを呟いている。

「な、何言ってんの?聞こえないわ!それより救急車よ!」

「さ、酸素を・・・」

「えっ?さ、酸素?」

阿武隈の右手が小刻みに震えながらドラムセットの下に置いてある酸素カートリッジを指差す。アスカは咄嗟にカートリッジを取り出すと阿武隈の口と鼻にアッタチメントを押し付けて酸素を送る。

ようやく阿武隈が息を吹き返した。

「ああよかった・・・もう!てっきり死ぬんじゃないかって本気で心配したわよ・・・」

「ふ~、助かりました・・・一瞬、天国のお母さんの姿が見えました・・・」

アスカは一瞬手の動きを止めて阿武隈の顔を見たがすぐにまた阿武隈の背中や腹の埃を払う。阿武隈はアスカに抱え起こされてようやく起き上がった。

「阿武隈、大丈夫?」

「は、はい・・・アスカたんのお陰です・・・」

「それにしてもアンタのドラム、いやゲームスピリッツには恐れ入ったわ・・・」

「い、いえ・・・それほどでも・・・」

「いや、大したものね。ホント感心するわ」

アスカは足元に無造作に置かれていたナップサックを拾い上げると阿武隈に手渡す。

「アタシたちも命賭けで使徒と戦ってるけどさあ。アンタも命がけでゲームしてるのね。アタシがいなかったら今日、アンタここで死んでたんじゃない?ハイスコアが出たから死んでも本望でしょうけどね、アンタは。凄いわ…そこまでゲームに命が賭けられるなんて!一種の才能ね」

「い、いや・・・さすがに命までは・・・」

最後の阿武隈の声はゲームセンターの喧騒にかき消されてアスカの耳に届かなかった。

今度は阿武隈とアスカは二人で「エルブス」を対戦して楽しんだ。阿武隈のエラプセの腕は綾波レイほどではないがかなりの腕前でアスカよりも頭一つ上をいっていた。

「アンタも強いわね・・・もはやアタシの同居人はアタシの敵じゃなくなってるから丁度いい練習相手だわ、アンタ。アタシはこの前の商店街のお祭りで宿敵ファーストに屈辱を味わわされたから秘密の特訓をしているの。いつか必ず吼え面をかかせてやるんだから!死ねー!ファースト!」

夏祭りの時は素直に負けを認めていたアスカだったが、それはあくまで一般大衆の目を気にしてのことで実は相当悔しかったのだ。未だに根に持っていた。

目下、レイに見立てられている阿武隈はアスカの隣でガクガク震えながら対戦を続けていた。
 
 



 
 Ep#03_(5) 完 / つづく
 

(改定履歴)
17th Mar, 2009 / 表現修正
27th Oct, 2009 / 改行及び表現修正
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