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新世紀エヴァンゲリオンの二次創作物、小説「Ihr Identität」を掲載するサイトです。初めての方は「このサイトについて」をご参照下さい。小説をご覧になりたい方はカテゴリーからEpisode#を選んで下さい。この物語はフィクションであり登場する人名、地名、団体名等は特に断りが無い限り全て架空のものです。尚、本ホームページに使用した「新世紀エヴァンゲリオン」の画像は(株)ガイナックスのガイドラインに沿って掲載しています。配布や転載は禁止されています。
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第3部 In her shoes 女として…

(あらすじ)

零号機と初号機のパイロットを入れ替えた実験が始まったがシンジを乗せた零号機が突然暴走し実験は無期延期になる。一方、零号機と初号機の双方でシンクロしたレイの結果を踏まえてゲンドウはダミープラグ/ダミーシステムの完成をレイをベースにして急ぐ決意を固める。静かに悪夢は動き始めていた。


※ in her shoes / 「彼女の立場」という意味です。

(本文)


シンクロテストの当日。

チルドレンたちはいずれもプラグスーツに身を包みいつも起動試験を行う時に使うオペレーションルームに集合していた。オペレーションルームの窓からはエヴァが3体並んでいるのが見える。

オペレーションルームは基本的に技術部と作戦部のメンバーが出入りする。発令所とは異なりここはどちらかというと実験をするための場所というイメージをシンジは持っていた。

オペレーションルームの中ほどにブリーフィングエリアがある。いつも起動試験等各種の実験を行う場合はここで事前と事後の打ち合わせを行うことになっている。

席にはリツコ、ミサトを初めとして青葉、マヤの技術部の面々と作戦部はミサトの副官的存在の日向、そしてチルドレンという顔ぶれだった。

アスカは昨日よりはマシだったがやはりつまらなさそうな顔をしていた。

「今日の試験は予め聞いている通り、パイロットを入れ替えての起動試験を行うわ。まず初号機から開始して最後に零号機という手順ね。ここまではいいかしら?」

アスカ以外のメンバーがリツコの説明に思い思いに頷く。

「知っての通り、今までは実戦はおろか各種試験においてでさえもパイロットを入れ替えた事はない。エヴァとパイロットは専属制で運用してきたわ。もっともこの条件下でも機体の暴走事象が散見されているけど。そんな状況下、今回の試験では何が起こるか分からない。全員、気を抜かないで」

その場にいた全員に緊張の色が走っていた。リツコはちらっとアスカの方に目を向ける。どことなく手持ち無沙汰な雰囲気を醸し出している。

あなたは弐号機を使って実験がしたいんでしょうけどね・・・アスカ・・・でも、あなたが深く知れば知るほど機体のスワップはむしろあなたの方が嫌になる筈よ・・・弐号機のコア(魂)との語らいは自分だけのもの、必ずあなたはそう思う様になる・・・

リツコは口に手を当てて大きな欠伸をし始めたアスカを凝視し続ける。アスカはリツコの視線に気が付かず隣に座っているシンジをからかい始めていた。

アスカ…あなたは確かにマルドゥックのリストに後から追加されているわね…日付けからしてミサトが第二次選抜プログラムをスタートした後…まるで第三支部がミスを取り繕うかのようにね…あなたはあの加持君とどういう関係があるのかしら…そしてここ(本部)に何をしにきたのかしら…あなたの経歴を洗う必要があるわね…あの人がどう思うかしら…

初号機にレイが乗り込み起動試験がスタートする。リツコはマヤに促されてオペレーター達の元に歩き始めた。

いずれにしても残念ね…あなたとはいい関係になれると思っていたけど…

レイの様子をモニターと窓とでミサトとシンジとアスカは窺っている。そのアスカの横顔をチラッと見るとリツコは視線をマヤに戻した。

オペレーションルームの雰囲気は始めはピリピリしており、さながら使徒戦のそれにも似ていたが初号機のエヴァ起動シーケンスが順調に進んでいくにつれて少しずつ安堵感のようなものが広がっていく。

そしてシンクロ率計測可能な状態まで各種モニター値の安定性が確認されると測定がスタートした。シンクロ率測定は内部電源の起動限界に相当する5分間を1クールとして3回の測定を行うことが基本単位になっていた。

リツコは先ほどからマヤの隣につきっきりで吸い上がるデータを食い入るように見ている。

「これまでのところ各値の推移に異常は見られません」

「そのようね・・・」

「この調子だと今日は大丈夫そうですね、先輩」

「まだ全部終わってないわよ」

「は、はい・・・」

つっけんどんなリツコの声にマヤは一瞬で静かになる。

ある意味で次が本番なのよ、マヤ・・・

リツコが心の中で呟く。

射出操作デスクからカメラで初号機の様子をじっと見ていた日向が第3クールの測定に入ったところでミサトの隣にやってきた。

「どうやら無事終わりそうですね?」

「まだ油断できないけどこの分なら大丈夫そうね。それはそうとさあ日向君。例のブツの受け取り要員の選定作業の進捗はどうなってたっけ?」

「はい、先発隊候補者のリストアップは完了してますから次回の定例会議で部長どのから各部署に要請頂ければと思います」

「オッケー。ありがと!」

ミサトは再びモニターに視線を戻す。日向は暫くミサトの隣にいたが今度はマヤのデスクの方に向かう。一箇所にじっと出来ないタイプらしい。

「第3クール測定完了。機体回収シーケンスに入ります」

青葉の声でオペレーションルームの緊張は一気に和らいでいく。

アスカはシンジの隣で伸びをする。また欠伸をした。アスカは顔をシンジのプラグスーツの背中にいきなり押し付けて欠伸で出た涙を拭き始めた。

「ちょ、ちょっと!何するんだよ・・・」

「は~い、次はシンちゃんの番よ」

アスカが悪戯っぽく笑う。目は全然笑っていなかった。
 



 
シンジはエントリープラグに乗り込む前室に通じる通路の途中でレイと出会った。

レイはエアーシャワーでLCLを除去し終わったところだった。エヴァから出る時はいつも髪がばさばさになる。レイはそれを直す事もせず乱れた状態で歩いてくる。

「あ、綾波。お疲れ様」

シンジがレイに声をかけるとレイは立ち止まってじっとシンジの顔を無言で見詰めてくる。レイに見詰められてシンジはどぎまぎする。

「ど、どうしたの?綾波・・・」

「碇君・・・」

「な、何?」

「碇君・・・碇君と・・・さっき・・・一緒になったわ・・・」

「え!な、何を・・・」

ハンマーで殴られた様な衝撃をシンジは受けた。

レイの言葉の意味があまりに漠然としすぎていてよく掴みきれなかった。シンジは自分でも顔が真っ赤になっているが分かった。

「い、一緒って・・・」

レイはジッとシンジの顔を見ていたがそれ以上はなにも言わず再び歩き始める。シンジは呆然とレイの後姿を見送った。

「あ、綾波・・・一体何が言いたかったんだろう・・・」

シンジは前室に入ってエアーシャワーを浴びる。使徒迎撃の時の様な非常時にはスキップされるが試験の時は必ず前室を経由する決まりになっていた。

浴び終わるとタラップを渡って零号機のエントリープラグに向かう。やがてシンジの乗ったエントリープラグは零号機に挿入される。

シンジは次々に進む起動シーケンスを青葉たちとの交信でつぶさに確認しあう。

いつもと変わらない・・・いや・・・何か違う・・・

シンジは説明できない感覚的なレベルで初号機とは何かが違うような気がしていた。

やがて全ての起動シーケンスが完了する。

これから安定状態に入ったところで測定段階に切り替わる。しかし、いつもの初号機の時と違ってオペレーションルームからの指示に時間がかかっているような気がしていた。

何かあったのかな・・・

変な胸騒ぎを感じているとオペレーションルームからリツコが交信してきた。

「どう?シンジ君?状況は・・・」

「はい。特に問題ありません・・・」

そう答えた瞬間、

あれ・・・これって・・・

「何か・・・綾波の匂いがする・・・」

シンジは思わず独り言を呟いていた。シンジの独り言はオペレーションルームにスピーカーを通して流れる。誰もがその言葉を聞き流す中、アスカだけがキッとモニターの中のシンジを睨む。

「な!何が匂いよ・・・変態じゃないの!」

アスカはモニターを見ていたが思わず目を逸らす。ムカムカしてくる自分を感じていた。

何で…何でこんなに腹が立つのかしら・・・

アスカはまるでシンジがレイと抱き合っているところを目撃した様な気恥ずかしさを感じていた。そして窓から零号機の様子を直立不動で見ているレイの後姿を思いっきり睨みつけた。

いや!いや!いや!早く出てきなさいよ!アンタ達!エントリープラグの中で何やってんのよ!いやらしい!

アスカの体は激しい炎に焼かれていた。そして思わずレイに飛び掛って行きたい衝動に駆られる。体が小刻みに震える。アスカの怒りが臨界点に達しようとしたその瞬間だった。

「い、異常パルスを確認!」

青葉が叫んだ。マヤも顔の色がどんどん失せていく。青葉のところにいた日向は慌てて自分の席に座る。三者三様にモニター数値とデータの波形から経験的に同じ事が頭に浮かんでいた。それはすなわち・・・

「ま、まさか・・・暴走する・・・」

リツコが呆然と呟く。

零号機が激しく動き始めた。エヴァを射出時に固定する固定具を引きちぎらんばかりの勢いだ。

「Evaからの干渉です!」

マヤの声が引きつっている。リツコが思わずメガネを外す。

「まさかこの状況であり得ないわ!」

零号機が固定具の一つを破壊した。それを見たミサトは即座に反応する。

「外部電源を切って!急いで!」

「了解!」

零号機の中でシンジは突然起こった事に対してパニック状態に陥っていた。恐怖におののいている自分がいた。

まただ・・・また始まった・・・誰か!誰か助けて!

シンジが幾ら止まれと願っても零号機は全く言う事を聴かない。

零号機は全ての固定具を破壊するとオペレーションルームに迫る。近づいてくるエヴァを見てその場にいた全員が本能的に退避を始めた。零号機が拳を振り上げた瞬間、

殺される・・・誰もがそう思った。激しい衝撃が何度も押し寄せてくる。オペレーションルームの装甲ガラスに一気にひびが入る。

「うわー!」

我先に技術部と作戦部の部員たちは出口に殺到する。アスカもミサトと共にオペレーションルームを退避する。

アスカが横目で窓の方を見るとこの状況でも微動だにしない人影を見た。

だ、誰よ?残ってるバカは!ファ…ファースト!!何考えてるの!アンタ死ぬ気?

レイは零号機が攻撃してくるその一部始終をまるで見守るかのようにその場に立っていた。

誰もが人生の中で最も長い5分を過ごしていた。やがて零号機はその場に立ち尽くした。

その後、マニュアル作業によるエントリープラグの回収によりシンジは無事に零号機から脱出する事が出来たが、精神状態が余りよくないのは見た目にも分かった。

直ちに市内のネルフ付属病院に搬送される事になった。

実験は零号機の暴走により無期延期とされることになった。破壊されたオペレーションルームに戻ってきた面々は片付けと復旧作業を開始していた。

破壊された残骸の向こうに見える零号機を見ながらリツコは独り言を呟いていた。

「…殺したかったのはこのわたしね…」
 




アスカはいつも通り葛城家の住人を起こしにかかる。

といっても3日前の暴走事件の影響でミサトはネルフにその日以来泊り込んで事後処理に当たっていたからシンジ一人だった。そのシンジも病院で検査と静養を兼ねて一日入院して昨日退院してきたばかりだった。

アスカはタンクトップとショートパンツという起きたままの姿でリビングを通ってシンジの部屋の前に行くとドアをノックする。

「Get up!シンジ。朝よ!開けるわよ!」

シンジの部屋に入るとシンジはベッドの上で頭から布団を被ったままになっていた。

アスカはその光景を見ると大袈裟に一つため息を付く。シンジが布団を頭から被っている時は決まっていじけている時だったからだ。こういう時に手荒な事をすると益々いじけて自分の殻に閉じ篭る。アスカには相当なストレスだったが出来るだけ優しく接してやる必要があった。

アスカは布団の塊を足の先でつつく。

「ほら!シンジ!朝よ、朝!」

布団の塊からは何の返事も無い…

ほんっとにイラつくわ!!しょうがないじゃないの!暴走はアンタのせいじゃないのに!仕方が無いわね・・・

アスカは布団の端を持って思いっきり引っ張る。不意を突かれたシンジは布団ごとベッドで仰向けになり、団子虫のように肘と腹と足があらわになった。

それでも頭だけはしつこく隠して布団から出てこようとしない。

普段ならこれで、やめろよ~、とか言って情けない顔して出てくるのに・・・今日は割と頑張るじゃん・・・

「シンジ!もう、アンタいい加減にしなさいよ!まだグジグジ悩んでるわけ?しょうがないじゃないの!アンタのせいじゃないんだから!」

そう言ってアスカは更にシンジの布団を更に引っ張る。シンジはもう頭以外は完全に体が布団から出ていたがしつこく頭を出そうとしない。無言のままアスカに抵抗する。

手が滑ってアスカが布団を離した瞬間、いきなりシンジは布団を巻き取ると今度は蓑虫の様になってアスカに背を向ける。

「なっ…ちょっと!しつこいわよ、アンタ!男の癖にいつまでも!ちょっと優しくしてたらいい気になって甘えるんだから!アンタがその気ならこっちにも考えがあるわよ!」

そういうとアスカはベッドの上に上がるとシンジを背中からくすぐり始めた。シンジが布団を被ったまま悶え始める。アスカは手を緩めない。くぐもった笑い声をシンジが上げる。

「や、止めて・・・アスカ・・・お、起きるから・・・もう・・・」

悪ふざけの虫が騒いだアスカはそれでも止めようとしない。

「アンタが早く起きないから悪いのよ!ばーか!天罰よ!」

「や、やめ・・・お願い・・・許して・・・すみませんでした…」

シンジが悶えてアスカの手から逃れようとする。

「へへ!逃がさないんだから!」

アスカがシンジの背後から体をずらして横に並んだ時だった。不意にシンジはアスカがいる方向から顔を出してきた。

「うわ!」

アスカはシンジのぶちかましをまともに受けてベッドの上に仰向けになった。ひっくり返りそうになった時、アスカは反射的にシンジの腕を掴んでいた。

「ちょ、ちょっと!引っ張らないでよ!」

シンジもそのままアスカの上に倒れこんだ。

「きゃあ」

アスカはシンジの体の下敷きになる。アスカの鎖骨の辺りにシンジの頭がある。アスカは全身を稲妻に打たれたようなショックを感じる。

ア、アタシ・・・シンジにベッドの上に押し倒されて抱かれてる!あ、アタシには加持さんがいるのに!

「ご、ごめん・・・」

シンジの声がアスカの耳の直ぐ隣で聞こえてきた。シンジの吐息が何度もアスカの耳にかかる。アスカは背筋に鳥肌が立っていくのを感じて無意識のうちに上体を仰け反らせた。

「あ・・・あん・・・」

アスカはシンジの耳元で艶かしい声を思わず上げる。シンジの体が硬直する。アスカの内股にさっきから何か堅いものが当たっている。

これって・・・ま、まさか!

そう思った瞬間、はっとアスカは我に返りシンジの体を思い切り跳ね飛ばした。

「いや!エッチ!」

アスカはそのまま顔を押えてシンジの部屋から飛び出して行く。

シンジは呆然と見ていた。





 
学校の制服に身を包んだ二人は無言のままリニア駅に向かっていた。朝の商店街は人影もまばらだった。並んで歩いている二人だったが全く会話もせずアスカの靴のかかとの音しか聞こえてこない。

怒ってるのかなあ…

気まずい雰囲気に居た堪れなくなって沈黙を破ったのはシンジだった。

「あ、あのさ・・・」

ジロッとアスカはシンジをかなり凶悪な目つきで睨む。少し口も尖っている。

「何よ・・・」

「け、今朝の事だけどさ・・・」

途端にアスカの顔が耳まで赤くなっていく。アスカはシンジを更に威嚇する様に睨みつける。

「アンタが・・・だいたいさあ!アンタがいつまでもグジグジするからいけないんでしょ!」

「ご、ごめん・・・」

「アンタはね…アンタは今日…アタシのテーソーを無理やり奪ったの…」

「てっ・・・貞操ぅ・・・?」

アスカの言葉に今度はシンジの顔が赤くなる。

「そうよ!」

「そ、そんな大した・・・」

シンジの発した言葉にアスカはピクッと反応してむんずとシンジの開襟シャツの胸倉を掴んできた。

「大した・・・大したですって?アタシはね!これまでずっと従順にテーソーを守ってきた清らかな体だったのよ!それをアンタが力ずくでアタシを汚したんじゃないの!責任とってよ!」

シンジはアスカの剣幕にたじたじになる。シンジたちの前を同じようにリニア駅に向かって歩いていた中年のサラリーマンが二人を振り返って見るのが遠めに見えた。

かなり人聞きの悪いことを大声で言うアスカを落ち着かせる手段をシンジは必死になって考えるが妙案はまるで浮かんでこない。

「せ、責任って言われても・・・その…ちょっと抱き締め合っただけというか・・・」

「何よそれ!アンタ!言い逃れするつもり?何て男かしら!サイテー!」

「だ、だって・・・抱擁というか…その…そうだ!ハグで責任って言わないよね・・・?多分…」

シンジが思わず発した言葉に胸倉を掴んでいたアスカの手が緩む。

「ハ・・・そうか、Hugか・・・」

そうか・・・Hugって思えば淫らな事にはならないのか・・・そう思えば加持さんも・・・

アスカは少し考えていたがそのうち納得したかのようにシンジから手を放す。表情もパッと明るくなっていく。

「そうね・・・そうよね。Hugよね!まあだからと言って今日のアンタの過ちがチャラになるわけじゃないけどね!」

「ぼ、僕の過ち・・・?何かちょっと違う気もするけど・・・」

「本当にアンタって男の癖に細かいわね!女の機嫌を悪くすると全て男のFaultになるって昔から決まってんじゃない!それから言っておくけど…今度、いきなりあんなマネしたら殺すわよ」

「こ、殺すって…」

アスカが再びジロッとシンジを睨む。しかし、さっきと違って威嚇するような色はなかった。

「アンタがパイロット仲間じゃなかったらアタシに触れた瞬間に間違いなくアンタを殺してたわよ。アタシに触っていい男はアタシが許可を与えた人に限るんだから…」

アスカはシンジから目を離すと少しうつむいた。

「今日は…今日は特別なんだから…アタシの優しさに感謝しなさいよね…」

シンジはアスカの横顔を思わず覗き込んだ。アスカは少し頬を赤くしている様に見えたが朝日が視界に入ってシンジからよく見えなかった。

シンジの視線に気が付いたアスカはハッとするといきなり駆け出した。

「な、何見てんのよ!スケベ!さっさと行くわよ!」

二人は商店街を抜けて南口ロータリーの雑踏に向かって行った。




リツコは司令長官室でゲンドウと向かい合っていた。
 
「やはり現在の指向性コアの場合はInteractiveな要素が多く、このままの状態で一般化を模索するのは極めて困難であるというのが現在までの結論です…」

「唯一の希望はレイだな・・・」

「レイ・・・」

ゲンドウの言葉にリツコは思わず顔を顰める。

「レイは零号機と初号機の2つの機体でシンクロすることが出来た。これは一定の成果と見るべきだろう。それに零号機との再シンクロも問題なかった」

「しかし、レイの出自とその他のコアとの状況を考えますと・・・」

「ダミープラグはいわば人が作り出した擬似的な精神。これを介してエヴァをコントロールするにはベースとなるものが極力中性的である必要がある。やはり現状においては次善の策としてレイということになるだろう。恐らく向こう側のダミープラグも同様の方向性で開発が進んでいると思っていい…」

「しかし・・・」

「量産化を急ぎ給え、博士。我々に残されている時間は幾許も無い」

「・・・はい」
 
 またあの部屋に行くのね…分かってはいても気が重い…わたしはあなたについて行くしかない…そんな人生を選んだのはわたし自身…わたしの人生も所詮は…

リツコの目は哀しい色を宿していた。


Art of Life 
 


Ep#04_(3) 完 / つづく 
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